014

 外に出たら、あら不思議。


「真っ暗じゃねーか!!」


 周りなんか見えない程の暗闇。部屋から漏れ出る明かりによって、辛うじてちょーっと見えるかな?くらいだ。


「当たり前でしょ。ここは0区。冥界最下層なのよ。光なんか届かない程の地下なんだから」


「そもそも、最下層ってなんだよ?」


「アンタ何も知らないのね?まあいいわ。このハイデマリー・ミューラー様が直々に教えてあげるわ」


 多分得意気にふふんとか言っているんだろうが、生憎と暗くて何にも見えん。


「……冥界は旦那様の知識で述べるのならば、地上からすり鉢状になって地下に通じる大きな穴、のような世界です」


「アンタが説明しちゃうの!?」


 びっくりしているが、そもそも説明責任はルシフにあるんだ。俺を喚んだのはあいつなんだから。


「最下層ってのはその通りで一番下の階って事か?」


「……そうです。地上にあるのが1区。そこが一番広い区です。死人が最初に訪れて裁判を行う場でもあります。旦那様の知識から引用すれば、ロシアくらいはあるでしょうか」


 広大過ぎるな!!ロシアくらいの広さだったら!!


「……下に向かうにつれ、当たり前ですが狭くなっていきます。2区、3区と狭くなって降りて行きます。最終が99区。因みに住居可能な区は79区までです。99区までは牢獄と言うか、一時収容所になります。裁判待ちの死人や判決が難しい死人が、一時そこに収容されます」


「99区の次が0区、って事か」


「……そうです。0区は使用されなくて数百年経っているらしいのですが、こうやって私が住み始めました」


「お前今ドヤ顔しただろ」


「……なんで解ったんですか?真っ暗で何も見えない筈なのに…?」


 声の質で何となく解ったんだよ。俺はお前の奴隷だしな、このくらいは。


「何で0区は使われなくなったんだ?あると言う事は以前は使っていたんだろ?」


「……0区は冥界で一番古い区画でした。元始の冥界は地獄と入り混じった世界でした。裁判所と刑務所が同じ場所にある状態だったんです」


 混沌としているな。まさにカオス!!


「……その通りで、整理をするために100区画に層を分けたんです。裁判所は冥界に、刑務所は地獄にと分けられましたが、その分離の狭間が当然ある。そこが0区です」


 要するに、この下はすぐに地獄と言う事か。だが、家賃が安い(ルシフはただで住んでいるようだが)のなら、そのくらいは許容内なんじゃねーの?


 その旨を伝えると、いやいやと。


「……地獄に万が一落ちる事があれば、確実に死にます。脱出不可能ですので。刑期を終えたブッティ体が分解し、情報だけのアートマ体になって初めて脱出できるので」


「な、なんで脱出不可能?」


「……重力が凄いと言うか。まず這い上がれない程の重力地帯が地獄なので。そして、地獄の超重力に引っ張られて地盤沈下が起こるかもしれないのが0区なのです」


 そうなったらまず出て来れないんだろうなぁ……つか、いつ地盤沈下が起こって崩落するか解らん所に住んでいるのか…これは確かに他の奴等は来たくないだろうなぁ……

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