012

「アンタの食べ方はアレだけど、ほんと美味しい。食材がカスなのに、こんなに美味しくなるのって不思議」


 褒められているのかディスられているのか解らんが、うまそうに食ってくれているからまあいいや。


「……ご馳走様」


 ルシフ、スープまで完食。濃口なのに。身体がちょっと心配だ。そういやセレスもスープまで全部飲んでいたな。


「いや、美味しかった」


 こっちはご馳走様もなく。ムッとしたが、これは文化の違いなんだろうと無理やり納得する事にした。


「ねえ、ご飯作れる恋人が欲しかったの?」


「……ずっと一緒にいてくれる人が欲しかった」


「それが、これ?」


 親指を俺に向けて。


「あのな、俺が気に入らないのは仕方がないにしても、俺も喚ばれたんだぞ。本意じゃないんだ冥界にいるのは」


「そこはね。アンタには気の毒だと思うけど、ルシフの命が……」


 眉間にしわを寄せて溜息までついた。やっぱりこいつ、ルシフが純貴族だって知っているんだ。


 異界召喚術は霊力が膨大じゃないと叶わない。可能にするのが純貴族の霊力量だ。そして、使ったら寿命が半分になる事を知っている。間違いないだろ、こいつはルシフを知っている!


「……ところで、ミューラーは何しに来たの?」


「…あ、そうだそうだ!17区の獄長ジャッジメント・マスター剣闘士グラディエーターの試合を組みたいって話なんだけど。多分大量の死者の件で兵士を増やしたいが為の選考試合だとは思うんだけど、どう?」


「……ファイトマネーは?」


「1シルバ」


「……いいよ、行こう、今?」


「うん。エントリーだけは早めに済ませておきたいでしょ?」


 こっくり頷いて奥に引っ込んだ。


「……お前、何考えてる?」


「はあ?何って、聞いていたでしょ?試合の話を持って来たんだけど」


「寿命の半分を失ったと聞いた時は怒っていたが、危険な試合は寧ろ勧めるのか?」


「あの子は殺せないよ。アンタには理解できないだろうけどね」


 馬鹿にしたような目を向けながら言われた。知ってんだよ。こちとら二回目なんだぞ。


「兵士の選別試験とか言っていたな?」


「ああ、昨日天界で大量の死人が出てさ。なんかあるかもって事で、17区の獄長ジャッジメント・マスターが不安に思って兵士の数を増やしたいみたい。表向きは試合が観たいって事にしているけど、あれ小心者だからバレバレなんだよね」


 ケラケラとやはり馬鹿にしたように笑いながら。


「うん?天界で大量の死者?」


「そ。10万とか15万とか聞いたわね。大袈裟なところでは30万越えとかさ。おかげで死神は大忙し。まあ天使なんかにまともな裁判はしないだろうから、ほぼ全員地獄行きなんだけど」


 ……それ俺とセレスがぶち殺した奴等だよなぁ……思わぬ余波があったなぁ……つか、冥界でも天使って嫌われてんのな。まともな裁判にならないとかさ。

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