011

「アンタあれ使ったの!?ダメって言われたでしょ!!なんで使った!?」


 グイングインと揺さぶるが、こいつ……こいつとはゆっくり話をしてみたい。だが今は……


 俺は死神の肩を掴んだ。振り返り、すんごい形相で睨まれた。


「なんだ!!今は忙しいから後にしろ!!」


「それは駄目だ。何故なら飯ができたからな。温かいうちに食べないと味が落ちる」


「食事なんていつでも「……いただきます」ルシフ!?」


 するりと死神から逃れてテーブルに着く。それをアワアワして見送っていた。


「ルシフが私よりもご飯を優先するなんて……」


「……旦那様が私の為に作ってくれたご飯だから」


「アンタ元々食事にあまり興味が無かったでしょ!!それなのに!?」


 こっくりと頷く。


「……旦那様が温かいうちがいいと言ったから」


「……………なんでこいつにそこまで……」


 オーバーアクション宜しく、仰け反って天を仰いだ。まあ、見えるのは天井、つうか岩肌だが。


「ほら、丁度分量を間違えて三人分になっちゃったんだ。お前も食え」


 そう言ってテーブルにラーメンを置いた。


「……何、この黒いスープ?」


「焦がし醤油ラーメンだ」


「……ネギ入ってる…あのやっすくて美味しくもない食材を使うなんて、お里が知れているわね」


 文句を言いながらも着席。食う、と言う事だろう。


 ルシフ達はフォークだが、俺はやっぱり箸がいいな。なんかないか?


「ルシフ、あの棒は何だ?」


「……松明の代わりです」


「あの細いの一本貰っていいか?」


 こっくり頷いたので戴いた。ナイフが見当たらないから包丁でいい感じに木を削る。


「何してんのよアンタ?」


「箸を作ってんだよ」


 丁度できたので見せてやった。なんだこれ?と首を捻っていた。


「まあいいから食え。ルシフ」


「……いただきます」


 手を合わせてフォークで麺を巻く。そして口に入れる。


 元々大きな目だったが、更に大きくなった。見開いたって奴だな。


「!?うまっ!!何このパスタ!?うまっ!!」


 死神にも好評だった。二人で夢中でもぎゅもぎゅやっているし。


 俺は箸で麺を取る。


「いいかルシフ、俺の国じゃ、ラーメンはこうやって食うんだ」


 そして一気に啜る。ルシフと死神は耳を塞いだ。


「何で大きな音を立てるのよ!?」


 相槌宜しくコクコクと頷きまくるルシフ。


「お前等、今食べているのって熱いだろ?こうやって啜ると少し冷めるんだ。アツアツのラーメンはこうやって食うのがマナーなんだよ」


 尚もずるずる啜る。ルシフ、真似しようとしたが、フォークではうまくできないだろ。


「箸の使い方は後で教えてやるから、今は食え」


「……旦那様がそう言うのなら期待して待っています」


 にっこり笑って食事に戻った。マジ可愛いなこいつ!!つか、この感情も少しおかしいな。可愛いのは可愛いんだが、なんでこうも頻繁にそう思うんだろう?


 まあ……種は何となく解るが…そうだったらルシフに悪いよなぁ……

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