010

 そしてミラクルな事に。


「ネギがあるぞ!」


 ネギを掲げて喜びをアピった。この世界に来てからネギなんか見た事が無かったし!


「……三本で10コッパなので」


「そんなに安いのか!?」


 10円くらいでネギ三本買えるとは!!もやしよりもお得じゃんか!!


「……あまり人気がないお野菜なので」


「これがあれば俺のラーメンは無敵なんだぞ!!」


 喜び勇んでネギを切る。三本一気に刻んだので大量になっちゃったけど。


「う~ん……ちょっと張り切り過ぎたな。これは濃口のラーメンで攻めるか」


 京都ラーメンで濃厚醤油のネギ山盛りってのがある。それを真似しよう。


 醤油ダレを焦がす。と言ってもやりすぎ注意だ。やり過ぎれば苦くなっちゃうから。


「……香ばしい香りです…」


 鼻をひくひくさせて。お前マジ可愛いな!?小動物みたいだぞ!!


 ともあれ、麺を伸ばして切ってだ。


「分量ミスった。三人分くらいの量になっちゃったよ」


 まあ、大盛りにすればいいか。何なら一玉寝かせて次の日にでも……


「あれ?何か料理しているの?珍し」


 誰か入って来た?入口方向に目を向ける。


 黒いボンテージ風のレオタード?網タイツにヒールの高いパンプスだし?


 だが、バカでかい鎌を持っている。そこが一番印象的だ。


「うん?なにこいつ?」


 その鎌で俺を差す。あぶねえだろ!!


「お前こそなんだ?」


 鎌を避けて訊ねると、切れ長の瞳が鋭さを増した。


「見ての通り、死神よ」


 軽いウェーブが掛かった紫の長い髪をふぁっさーと手で払い除けて。まあまあ美人さんだ。スタイルは間違いなくルシフに勝っている。おっぱいも大きいし。


「……さっき言った友達です」


 ルシフがついっと手を伸ばして紹介した。こいつが世話を焼いてくれたって言う友達か。


「で、こいつ何?」


 またまた鎌で俺を差した。鬱陶しそうに払い除け、名乗った。


「俺は相沢 凱斗って言うんだ。こいつに喚び出されて来たんだよ」


「喚び出された?どういう事?」


「……ミューラーが彼氏作れと言った」


「まあ、言ったよ?こんな最下層に一人ポツンといるよりは、彼氏作って二人で楽しく過ごした方がいいんじゃないって」


「……だから喚んだ。他の死神は最下層なんかに来たくないだろうし、何より私なんか相手にしないだろうし。だから望み通りの伴侶が得られる召喚術を使った」


 ルシフの告白に真っ青になって目を剥く。


「……異界召喚術!?寿命の半分を使って理想通りの奴隷を得ると言う!?」


 こっくり頷く。そして頬を赤らめて、両手でその頬を挟んだ。


「……こんな理想通りの人、初めて。使って良かった……」


 なんか身を捩りながら言ったらルシフに掴みかかった死神。超焦ったような感じで。

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