005

「……旦那様への対価は二つ。略奪と贈呈です。対象者の能力を奪ったり、第三者に与えたり出来ます。精神体スピリチュアルボディ…もっと言えばアートマ体への干渉ですね」


 指を二本掲げて説明してくれるが……


「な、なんだその……アートマ体っての?」


「……我々は肉体を持っています。物質体マテリアルボディは聞いた事があるでしょう?」


 頷く。とは言っても天界で聞いただけだが。しかも半分以上聞き流し状態だし。


「……その他に精神体スピリチュアルボディと言うのも持っています。文字通り精神の身体ですが、我々、と言うよりもこの世で生きている生物は八層のエネルギー体で構成されています。肉体があり、それを囲う気、オーラと呼ばれるエーテル体、物質と精神を行き来出来るアストラル体、精神そのもののメンタル体、無意識ですが、考える時に使っている思考体…コーザル体ですね。魂のブッティ体、その元になるアートマ体、そして宇宙の身体、モナド体」


 丁寧に指を折って説明してくれるが、前にもちらっと聞いたがちんぷんかんぷんだ。


 だが、モナドさんは知っているぞ。


「モナドさんって唯一神の事だよな?創造主とか?」


「……そうです、よくご存じですね。モナド体を持っているのは創造主ただ一人と言われています。そして私達死神はブッティ体を殺す事が可能です。そもそも、役割がですから」


 そうなのか。死神はそこまでの力がって何!?


「お前死神なの!?」


「……言っていませんでしたっけ?」


 小首を傾げながらの問いだった。可愛いけども!!


「え!?じゃあここはどこだ!?」


「……冥界最下層、0区ぜろくの住居です。もっとも、私しかいませんけど」


 冥界!?え?じゃあ俺って死んじゃったの!?こいつに引っ張られたとか!?


「……旦那様は生きていますよ。殺す訳がないでしょう。寿命の半分を使ってまで欲した伴侶を」


 ちょっとムッとしての反論だった。つか伴侶って。いやいや、それよりも!!


「何で考えていた事が解る!?」


「……読心マインド・リードと言う術です。なぜか私が望むと使えるようですね」


 読心マインド・リード!?セレスと同じ術か!!純貴族のスタンダードスキルだった筈!!じゃあやっぱりこいつは純貴族か!!


「……少し逸れましたが続けます。術はどうやって起動するかご存じですか?」


「え?なんか呪文とか?」


「……呪文と言うよりも数式に近いですね。コーザル体で計算し、それを霊力……エーテル体で起動させ、アストラル体で肉体まで移動させるのです」


 ふむふむ頷くがちんぷんかんぷんだった。なんとなーくぼやーっと解ったような気はするけども。


「……では、術はどこから作られるのでしょう?」


「え?えっと、アストラル体?」


「……違います。魂の元アートマボディ、です。数々の術は魂の元から編み出されたのです。何故なら、そこは全ての情報が飛び交う地。よって奪うのも贈るのもアートマボディから行うのです」


 よく解らんが頷いた。俺って成績あんま良くなかったんだよな。こんな感じで理解したような気になっていたんだもん。当然か。

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