003

 …………て…


 う~ん……この感触、知っているぞ、膝枕だなコレ。つか、膝を枕にしたら硬いから痛いよな。よってこれは太もも枕だ。


 …………てください…


 太もも枕は素晴らしいものだ。死ぬ時は太もも枕の上で死にたいと願う程、素晴らしものだ。


 ………起きてください…


 揺り動かされる身体。もうちょっと太もも枕を堪能したい。よって身を捩って抵抗した。結果顔面が太ももに挟まれた。これはいいものだ。

 

「……少し気が早いですが、いいですよ旦那様。旦那様が望むのであれば、この身体、思うが儘貪ってください……」


 旦那様だからな、太もも枕程度はなんて事は無いと言う事だ。


「今なんて言った!?」


 飛び起きた。がばっと。結果、太もも枕の本体と目が合った。


 さっきの前髪娘だ。布の服を装備していた、サンダルのみの生足の太もも枕はやっぱりこいつか!


「お前何だ!?」


「……思考が反映されていないのですか…?」


 小首を傾げての疑問。そういやこいつ、セレスと同じ術を使ったんだよな?


「寿命の半分を使っての異界召喚術……お前、純貴族だな?」


「……なんでそう思うのですか?」


 何でって、二回目だからだ。いや、そんな事よりもだな。


「お前、名前は?」


「……ルシフ、です。一杯可愛がってくださいね?」


 前髪に隠れた素顔なれど、ニコーと笑って。可愛い。いやいや、じゃねえよ!


「可愛がるってなんだ!?」


「……え?やはり反映されていないようですね…あなたは私の愛玩奴隷になったんですよ、旦那様」


 ポッと頬を赤く染めて。つか、愛玩奴隷!?戦闘奴隷の次はそれ!?


「お前の愛玩奴隷だと!?俺が!?」


「……そうですよ?寿命の半分を使う召喚術は、理想通りの奴隷が得られるらしいので、使いました」


 ニコーっと。可愛い。


「いやいや、お前の理想ってなんだ?」


「……優しくて頼もしくてカッコよくて強くて……何より、私とずっと一緒にいてくれる奴隷を欲したんです」


 お前もセレスと似たような事言うんだな……純貴族ってみんなそうなのか?あ、まだこいつが純貴族かどうか答え聞いて無いや。


「だから、お前って純貴族なんだろ?」


「……その純貴族と言うのはよく解りません。ですが、絶対に姓は名乗ってはいけないと誰かに昔、言われたようなので言えません。ですがあなたは旦那様、よってその誰かも許してくれるでしょう」


 なんだ?なんかの縛りがあるのか?だが、教えてくれると言うのなら敢えて口は開かない。


「……私の名はルシフ・プルトエル。生涯よろしくお願いしますね旦那様」


 自分の胸に手を当てて、やっぱり可愛く笑ってそう言った。このみすぼらしい格好と伸び過ぎの髪が無ければ、もっと可愛くなるのになぁ……

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