002

「亜美「いやあああああああああああああああああああああああ!!!!!」」


 駆け寄ろうとしたところ、絶叫されて屈まれた。なんで!?


「凱斗は火事で死んだのよ!!未練はあるんだろうけど、彷徨わないで成仏してえええええええええええええええええ!!!」


 俺って焼け死んだ事になってんの!?改めて自分の境遇に驚く。


「どうした亜美!!」


 やべえ、蕎麦屋の親父、通称亜美の父ちゃんが騒ぎを聞きつけて出てきた!!


 俺は咄嗟にバックレた。超ダッシュしたのだ。


 走って走って走って。たれが邪魔だが走って。


 漸く息をついたのは、どこかの路地裏だった。


 壁に手を掛けて息を整える。


「はー!はー!マジで踏んだり蹴ったりだ!」


 どうする?やっぱ天界に戻るか?しかしどうやって?マーキングを施す予定の場所は燃えて無くなっちゃったし。


「ちくしょう、分解、構築じゃ死んだ事実(じゃないけど)はどうにも出来ん……」


 能力が記憶操作だったら……しかし、欲した理由が指を切ったからだし……


「……あの…」


 分解、構築は便利な能力だから手放したくないしなぁ……


「……あの…」


 誰かの能力でないのか?記憶操作。あったら奪ったり……あ、いや、かっぱらうのは可哀想か。戻す……つっても敵だったら返したくねーしな、誰かにプレゼント出来たり、とか?


「……略奪と贈呈?」


「あ、それだな。奪ったりあげたりってなんだお前!?」


 いつの間にか後ろに誰かいた!!超驚いた!!


 もっと驚いたのが、薄汚れた布切れ一枚羽織った、前髪が隠れる程手入れしていない、長い黒髪の女だったって事だ。セレスと同じ年頃っぽいのも驚きの一つだ。


「誰だマジで!?今時そんな恰好!!」


「……お金が無いから?」


 小首を傾げての返答だった。傾げられても!!お金ないから服買えないってのは解ったけども!!


「……でも良かった…こう言うのは大抵お金だと聞いたから」


 安堵した様子の女。いやいや、これってな?


「……このパターン知っているんだけど……って!?」


 いつの間にか超接近してきた女。顔が超近いのでよく見えた。


 長い睫毛、厚い涙袋。よく見るとかなりの美人さん。つか、おっぱい当たってるけど!!布の服薄いから感触バリバリなんだけど!!


 セレスよりでかいぞおっぱい!!セレスより細身なのに!!つか近い!!


「ちょ!!これって!!マジか!?」


「……じっとしてて」


 女はそのまま俺の唇に自分の唇を重ね――


 そして、やっぱり記憶がそこで無くなった――

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