第18話 お買い物デート(?)
「———あ、もしもし、店長?」
『快斗君、少し用事があるんだけど……良いかな?』
俺が学校に再び通い始めて早二週間が経過した。
あの三人がいなくなってから、絵里奈ちゃんは前のように孤立することはあまり無くなっていた。
教室内で男女共に話すようになり、クラスの雰囲気も良くなってきている様に思える。
まぁ絵里奈ちゃんラブの俺からすれば、男子と話されるのはイマイチいい気はしないが。
そして現在放課後なのだが……珍しく店長から電話が掛かって来た。
一瞬クビの報告かと身構えたのだが……。
「———買い物?」
『うん。さっき卵が切れてしまってね。私が買い忘れていたんだけど……今もお店は開いてるし、店長の私が留守にするわけにもいかないんだよね』
電話越しにも関わらず、申し訳なさが伝わってくる。
「別にいいっすよ」
『! 本当かい!? あ、いやそのつもりで電話したんだけどね』
「卵何パックですか?」
『じゃあ……五パック頼むよ』
「うす。他に何か買ってくる物ないですか? あるならついでに買って来ますよ」
俺はそう提案してみる。
もはや何か一つ買うなら何個買っても大して変わらない。
寧ろ卵を五パックだけ買って帰る方が恥ずかしい気がする。
『そうだね…………じゃあ———』
「えっと……卵五パックは買ったし……」
「あと、ケチャップと牛乳とチーズとケーキ用スポンジと食器用洗剤、洗濯用の洗剤」
「おー、ありがとう」
「……別にいいから」
俺は今、絵里奈ちゃんと一緒にスーパーに来ていた。
あの後沢山の任務を受けていると……偶々絵里奈ちゃんが俺と店長の話を聞いていたらしく、「足りないけど、恩返しの一環」と言ってついて来てくれたのだ。
「それにしても……てんちょー、どんだけ快斗に頼んでるわけ?」
「俺がついでに買って来ますよ、遠慮しないで下さいって言ったからなぁ」
「それにしても多すぎでしょ」
どうやら絵里奈ちゃんは店長が俺を雑用みたいに使ったのにご立腹の様だ。
俺的には給料に少し上乗せするって言われているし特に何とも思っていないのだが。
「ほんと大丈夫だって。それに店長のお陰で絵里奈さんと一緒に居れるわけだし」
ほんと、そう考えると店長には感謝の気持ちしかない。
自慢じゃないが、俺だと絶対に絵里奈ちゃんを誘うことなど出来ないからな。
俺はケチャップの売っている所へ移動しながら、静かな絵里奈ちゃんの方を向く。
すると———驚いた様子で瞠目して俺を見ている絵里奈ちゃんが居た。
「えっと……絵里奈さん? どうかした?」
「えっ、あ、何でもない……」
絵里奈ちゃんは何かを隠す様に俺から目を逸らした。
俺は彼女の不思議な様子に目を離さないでいると、絵里奈ちゃんが俺の腕をその細く綺麗な手で掴む。
「早く行こ! あんまり遅れたらてんちょー困るかも」
「あ、ああ……」
俺は絵里奈ちゃんに連れられて様々な物をカゴに入れていく。
このスーパーを毎日使っているのか、絵里奈ちゃんの足取りに迷いがない。
「絵里奈さんって、このスーパーよく来るんだな」
「……何で?」
訝しげに俺に視線を向ける。
俺は慌てて言った。
「いやだって必要な物の場所全部覚えてる様に見えたから……」
「……っ、それは……」
絵里奈ちゃんが何やら苦虫を噛み潰したかの様な表情をする。
何かマズい質問をしたか? と俺が内心バクバクしていると……恥ずかしそうに言った。
「……毎日ご飯は私が作ってるの。だから場所をある程度覚えてるだけ! 別に普通でしょう!?」
「…………す、すげぇ……!!」
「……へっ?」
虚を突かれたような顔で俺をみる絵里奈ちゃんだが、どうやら彼女は自分の凄さを分かっていないらしい。
「いや、高校生の時点で自分でご飯作れるとか凄すぎじゃん! 俺も食ってみたい!」
「…………す、好きにすれば!?」
羞恥に耐えかねた絵里奈ちゃんが言う。
そんな風に言い合いながら、俺達はバイト先へと向かった。
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