第17話 終わり

「———で、まずアンタら名前は?」


 俺は半目で三人を見ながら問い掛ける。

 三人はこの動画があるせいか逃げようともせず、まるで親の敵の如き形相で睨んできた。


「誰がアンタみたいなクソ男に教えるかっての」

「マジそれな~~。イケメンになって出直してきなよ~~」

「あっそ。なら俺はこの動画をアンタらのクラスで流して教えてもらうからいいや」


 てか、その方が早いんじゃね?

 もうこいつ等の相手も面倒だし。


 俺は動画を収めたカメラと録音したスマホを持って外に出ようとするが……三人が速攻で扉の前に立ち塞がった。


「それ教室で流すとかマジで頭イカれてんの!?」

「それは流石に許せないかなぁ~~」

「てか、アンタだって胸触ったんだし見せたらアンタも責められるんじゃね?」


 三者それぞれピーチクパーチク喚いているが……正直面倒だし鬱陶しい。

 さっさと訊きたいことだけだけ訊いて脅しておさらばするか。


「じゃあ流されたくなかったら、俺の質問に答えて貰うぞ」

「は? 誰がそんなもの———」

「じゃあ俺はこの動画流すだけだから」

「……っ!」

「だから、簡単に言えばアンタらに選択肢はないわけ、お分かり? 足りない頭でしっかり考えてみろ」


 俺は押されて胸にダイブした。

 ただ、この三人は俺を押すだけに飽き足らず、更にはその後に色々と自らの悪事を暴露してくれたので、何方がヤバいかなど火の目を見るより明らかだろう。

 まぁ若干名からは胸に飛び込むとかズルいとか言われるかもしれないが。


 俺の絶対的自信の態度に、三人は苦虫を噛み潰したかのような表情を浮かべる。

 ただ何も言わなくなったことから、俺の話を聞いてくれるみたいだ。


「……お前らさっき、『あの提案』とか言ってたけど……その詳細を教えて貰おうか。田中、浜井、江口」

「「「っ!?」」」


 俺が三人の上の名前を呼びながら言うと、三人が驚愕に目を見開いた。

 まるで『さっき知らないって言ってたのに……』とでも言っているようだ、

 その姿が何とも滑稽で笑いが漏れる。


「クククッ、ほんと馬鹿だなお前ら。こんな計画までしといて俺がお前らの名前を知らないわけないじゃん」


 茶髪で一人称が『アタシ』のギャルが田中。

 金髪で一人称が『ウチ』のギャルが浜井。

 黒髪で一人称が『あーし』のギャルが江口。


 勿論三人とも探偵さんが軽くだが捜査してくれている。

 それに絵里奈ちゃんを虐めていた奴の名前を忘れるわけがない。

 下の名前は覚える価値などないので一切覚えていないが。


 俺は一気に大人しくなった三人に笑顔で問い掛ける。


「……で、あの提案ってのは何なんだ? 教えないとか言ったら……分かってるよな?」

「あーしらは黒枝小百合って奴に頼まれた」

「ちょっ!? 何言ってんのよ!」

「まー良いじゃん。どうせここで言わないとあーしら詰んでんだし」


 ふむ、この反応からして嘘ではない可能性の方が高い、か……。

 ただ、この三人に頼める奴が何で絵里奈ちゃんには虐められたように仕向けた?


 俺の記憶上、絵里奈ちゃんが黒枝の彼氏と話している所は見たことない。

 なら、何故絵里奈ちゃんなのか……これは本人に聞かないと分からなそうだ。


 俺は取り敢えず黒枝について考えるのをやめて目の前の三人を見る。

 

「……最後に聞かせろ。絵里奈さんのことはどう思っていたんだ?」


 俺の言葉に、三人は一瞬見合わせると、吐き捨てるように言った。


「———嫌いに決まってんじゃない。アイツ顔が良いだけで周りからちやほやされてさ」

「それなぁ~~あ、でも毎回奢って貰ってたしお財布としては優秀だったよねぇ~~」

「それに男達呼んだら露骨にぎこちなくなっててオモロかったわ。わざと男の隣に座らして無視するのとか楽しかったよ———」

「———もう良い。それ以上は話すな」

「あ、じゃあもう教室で流さないよね~~?」

「……そうだな、流さない」


 あまりにも聞くに耐えない言葉の数々に顔を歪めて遮る。

 ただ、これのお陰で確信した。



「———馬鹿共脱落者



 俺はそれだけ言うと、空き教室から出た。




 その数日後———学校の三人の女子生徒が退学となったと噂が広まった。


 何でも、同じ学年の男女複数人を脅し、さらにそれを証明するような動画が校長室に置いてあったからだと言う。



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