第16話 証拠を掴むチャンス②
———昼休憩になった。
彼奴等馬鹿なので大丈夫だと思うが、念のため計画を知っているとバレないように普段通り動きながら待つ。
すると……例の馬鹿三人組がニヤニヤと気持ちの悪い笑みを浮かべてやって来た。
そしてその中の一番身長の高い金髪ギャル(絵里奈ちゃんとは月と蟻くらいのブス)が話し掛けてくる。
「ねぇ~~暁月く~~ん、ちょっといい~~?」
お前らに費やす時間はねぇからとっとと失せろ塵。
そんな心の声が漏れそうになるのを抑え、何も知らない風を装い首を傾げる。
「俺……ですか? 別に大丈夫ですけど……」
「あ、じゃあちょっと付いて来て欲しいとこがあんだけど~~、付いて来てくれるしょ?」
三人のギャルが俺を囲む。
口調からして断れない状況を作っているのだろう。
俺は絶対に断らないので、そんな事をしても全くの無駄なのだが。
「えっと……分かりました……」
「おおー! じゃあ来て!」
「はい……」
俺はギャル三人に引かれて教室を出る。
その際———絵里奈ちゃんが顔を強張らせながらも俺の方を心配そうに見つめていた。
「えっと……それで空き教室に来て何するんですか……?」
場所は変わって空き教室。
俺は、未だ三人の意図を理解できていない役を演じながら言った。
すると、三人は醜い笑みを浮かべると……。
「「はい、どーん!!」」
「!?!?」
まさかの俺を二人ががりで押してきた。
流石に手を出されるとは思っていなかった俺は、少し驚く。
そしてバランスを崩した俺は……塵の胸へと顔を埋めた。
きっっっもっっっ!!
やばい、この香水マジで匂いキツすぎるんだが!?
てか、女子のおっぱいに顔埋めてんのに嫌悪感と不快感しか無いんだけど。
それにマジでキモ過ぎて吐きそう……うっぷ……。
俺は今直ぐ顔を石鹸で洗いたい欲に駆られながら急いで離れる。
そして後ろを振り向くと……。
「はい、証拠写真ゲットー!」
「キャハハハ!! うわぁ、女子の胸に自ら飛び込むとかキモすぎ何だけど!!」
「どう? ちゃんと取れた?」
「もち! ばっちし取れたし!」
そう言って笑う馬鹿二人が目に入った。
俺は、まだ演技をしながら叫んだ。
「な、何するんだよ!? 写真取ったのか!?」
「だってあーしの胸に飛び込んできたんだし当たり前っしょ? これ拡散しよー」
「キャハハハハ!! マジでキモいんだけど! お前の人生終わったわね! まあアタシらはアンタの人生とか興味ないけど!」
「マジそれねぇ~~お前も終わりだねぇ、暁月く~~ん?」
三人は『キャハハハハ!!』と馬鹿みたいに笑う。
対する俺も思わず笑いが零れそうになるが……まだ我慢。
そう少し、もう少し確実な確証が欲しい。
「な、何でこんなことするんだよ!? 俺はお前達と関わりないじゃないか!」
ちょっと演技臭いが……まぁ上手く嵌めれたと勘違いして調子に乗っている馬鹿共には気付かれないだろ。
そんな俺の考え通り、三人は気付かない。
三人の内の一人の茶髪のギャルが俺に近付いてきて、至近距離でニヤニヤ笑みを浮かべる。
「関わりはあるわよ? だってアタシ達、絵里奈のダチだもん」
「まぁウチらがダチだったのって少し前の話だけどねぇ~~」
「だってアイツウザいし。あの提案があった時はマジで興奮したよね」
「まぁアタシ等全員あのブスは嫌いだから、アイツと関わろうとする奴は全員こうやって脅して逆らえなくしてるってわけ。ま、アイツと関わろうとした自分を憎みな」
そう言って俺に先程の、胸に飛び込んだところだけをピンポイントで取られていた。
俺は顔を俯かせる。
もう……我慢できない。
「あ、どーしたん? 他の奴らみたいに泣き———」
「———ぶふぅぅぅ!! アッハハハハハハハハ!! ヒィィィーーお腹痛てーー!! アハハハハ馬鹿だよこいつ等全員!! 自分達が嵌められてるとも知らずに……ブフッ、ダサいったらありゃしねぇ! プークスクス!!」
俺は、あまりの滑稽さに遂に吹き出した。
三人は突然の俺の変わりように不気味がっている。
「な、何コイツ……」
「さぁ~~?」
「うわ、キモすぎ……」
「あー、笑った笑った。いや、キモいのはお前らな? 実は……」
俺はまずポケットに入れていたスマホの画面を見せる。
同時に三人は信じられないと言った様子で思いっ切り目を見開いた。
「な、何で……ろ、録音……?」
「あ、それだけじゃないぞ?」
俺は近くに設置していた録画カメラを回収する。
そこにはしっかりと一部始終が映っていた。
「「「……ッ……!!」」」
もはや唖然として声も出ていない大馬鹿三人の性格ブス女達。
俺は、そんな塵屑共に笑顔で言った。
「これで形勢逆転……だな? あ、今後の学校生活お疲れ様でした」
さてさて……これから色々と訊いていくとしますか。
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