第11話 宣戦布告
「———何で付いて来るんですかね?」
「……別に」
そう言いながらも俺と歩幅を合わせて歩く絵里奈ちゃんの姿に、俺は困ったように頬をかく。
その姿は大変可愛らしくて良いのだが……如何せんこれから行く所がアレなので今回限りは付いて来てほしくない。
そう、今俺はあの郷原勤の呼び出された件で落ち合い場所まで向かっている途中なのだ。
「ほんと止めといた方が良いって。何されるか分かったもんじゃないんだからさ」
俺は付いて来る絵里奈ちゃんに忠告というかお願いをする。
正直浅村程度なら絵里奈ちゃんが居ても全然余裕で護りながら戦えるんだけど……流石に郷原勤は無理。
てか一対一でも普通に勝てませんわ。
なので俺的には絵里奈ちゃんを連れて行きたくないわけなのだが……。
「嫌。絶対行く。元はと言えば私のせいでこうなったんだし、私が行かないといけないでしょ」
「いや……」
「無理、何を言われても行くから」
残念ながら絵里奈ちゃんは既に覚悟の決めているようで、まだまだ関係値の少ない俺が幾ら言った所で多分聞いてくれないだろう。
元々つるんでいた奴らの後始末まで全部自分一人で請け負うような子なんだから、責任感が人一倍強くても不思議じゃない。
ただ、説得が不可能となれば———。
「俺が死ぬ気で護るしか無いよな……!!」
もしもの時は他の力だって使ってやる。
俺はそう決意し、絵里奈ちゃんと共に目的地へと向かった。
「———おー、さっき振りだな、快斗! ところで隣の女は?」
目的地……周りからは見えづらい橋の下にやって来た俺を歓迎するように郷原が手を挙げるが……横にいる絵里奈ちゃんを見て不思議そうに言った。
こうなることは読めていたので、俺は予め考えていたことを話そうとすると———。
「ねぇアンタ、護ってくれただけで関係ない暁月を呼んで何をする気?」
「っ、佐倉さん!?」
まさかの絵里奈ちゃんが俺を護るように前に出て、キッと郷原を睨む。
その手はキツく握られており、足は少し震えて内股になっている。
誰から見ても物凄い恐怖を抑え込んで立っているのが分かった。
しかしそんな恐怖を抑え込んだ強気で睨む絵里奈ちゃんに、郷原は面白そうに尋ねた。
「ほう……関係ないとはどういうことだ?」
「今言った通りだし。ただ暁月は玖月っていう屑男から屑女の私を護ろうとしてくれただけ。元はと言えば全く関係ないから」
「…………ふーん、そうか。ならこの件について手は出さん。当事者達で勝手にやれ」
郷原は、絵里奈ちゃんの言葉を聞いた後、つまらなそうに近くのコンクリートに腰掛けた。
俺はその言葉を聞いた瞬間に安堵のため息が漏れそうになる。
よかったぁぁ……郷原が根はいい奴そうでよかったぁ……。
マジでこれはアツい。
てか郷原を睨めるウチの女神カッコよ過ぎるんですけど。
更に惚れたわ。
そんなことを考えていると、郷原の奥で他の奴らと屯していた浅村がやっと俺に気付いた様で……。
「勤どうした……あ、暁月!! ノコノコと現れやがって……ぶっ殺してやる!!」
そう言って怒りに顔を真っ赤にさせ殴りかかろうとしてくる浅村を……郷原が一喝して止めさせる。
「———止めろ玖月ッ!!」
「なっ……勤!? 何で止めんだよ……! ってか、何で座ってんだよ! 早く暁月をボコせよ!!」
「……お前、俺に嘘吐きやがったな?」
郷原の非難の視線と言葉に、浅村が怯む。
「う、嘘って何だよ……」
「お前、自分の女にちょっかい出す男を懲らしめたいっつったよな? それで、お前が言う自分の女とやらは快斗を養護してるようだが……これは一体どういうことだ? 言ったよな、俺は筋の通らない事は大嫌いだって」
「ち、違う……アイツは……そ、そう! 絵里奈は脅されてんだよ! だから早く暁月を潰せ!!」
そう言って喚く浅村だったが、郷原は動こうとせず、諦めたように目を閉じた。
俺はこの話を側から見ながら……呆れてもモノが言えなかった。
横にいる絵里奈ちゃんも、嫌悪感丸出しで浅村を汚らわしい塵を見るような視線を向けている。
それだけで終わらず、絵里奈ちゃんが浅村に対して口を開いた。
「ホント最低。相変わらず変わらないね、そのクソみたいな性格。私のことはいいとしても……何も関係ない暁月を侮辱するわけ?」
「う、うるせぇ!! お前みたいな裏で同級生を陰湿に虐める屑女は黙って俺の言いなりになってればよかったん———」
「———黙れ」
俺は浅村の言葉を遮るように口を開いた。
その時自分でもびっくりするほど低い声が出たが……今はそんなのどうでもいい。
もう、我慢できなかった。
俺を貶したいなら幾らでも貶せば良い。
変な噂を流されても一向に構わない。
ただ、絵里奈ちゃんを悪く言う奴は———
「よし、浅村、俺と喧嘩しようぜ。負けたら二度と佐倉さんに近付かないって条件でな。勿論……断らないよな?」
———誰であろうと、許しはしない。
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