第10話 お昼休憩
———場所と時間が変わって昼休憩の空き教室。
普段なら教室で昼飯を友達と食べている俺だが、今日は何と絵里奈ちゃんと一緒にご飯を食べていた。
四時間目が終わった後、「ちょっといいよね?」と若干拒否権が無いような口調でお誘いをされたのだが、勿論俺の辞書に絵里奈ちゃんからの誘いを断るなんて載っていないので速攻オッケーした。
勿論お誘いを受けて物凄く嬉しかった。
「———で、何で嘘付いたの?」
朝の俺の嘘についての詰問なのだが。
目の前では、絵里奈ちゃんが弁当を机に置きながらも全く手を付けず、俺を睨んでいる。
対する俺は、気まずさと何と言い訳しようかと頭を回しながらご飯を食べていた。
「いや、この状況でご飯食べれるアンタのメンタルどうなってんのよ」
「え? 勿論これから佐倉さんにどう言い訳しようかな……って物凄い頭を使ってるからお腹が空くだけだけど」
「それを言った時点でもう言い訳はできないから」
あ、確かに。
言い訳を考えていたなんて本人に言ったら言い訳もクソもないわな。
失敗失敗、と思いながらご飯を飲み込んで弁当を置くと……仕方ないので本当の理由を言うことにした。
少し恥ずかしいが……まぁ別に俺の恋心がバレる程の理由でも無いので別にいいか。
「佐倉さんに心配かけたくなかったんだよね」
「……はぁ?」
———意味が分からない。
まるで彼女の表情はそう言っているようだった。
何故そんな表情をするのか俺には分からないが……。
「だって佐倉さん、めちゃくちゃ優しいじゃん」
「……っ、そんなこと……」
俺の言葉に、絵里奈ちゃんは苦々しく顔を歪めた。
そして一瞬泣きそうな顔になりながらも、直ぐに絞り出す様に自虐っぽく鼻で笑う。
「はっ、虐めをしたから孤立してる私に優しい? アンタ、頭おかしいんじゃない?」
「そうかもね。でも……」
俺は絵里奈ちゃんの目を見て言った。
「———俺は佐倉さんが優しいって知ってるから」
じゃないとあんなに必死に俺を介抱してくれるはず無いだろ。
それに、ホントに優しくなかったらあんなに店長とか他の従業員に優しくもされてないって。
俺の言葉に、絵里奈ちゃんは驚いた様に目を見開く。
しかし直ぐに目を俺から逸らして耳まで顔を真っ赤にして、絞り出すように声を発した。
「〜〜っ!! な、何なのよアンタ……!」
「ただの一般高校生です」
「絶対一般高校生じゃない……!!」
失敬な。
俺なんて何処にでも居る高校生だろ。
ただ、好きになった人が少し特殊だから頑張ってるだけで。
抗議するような目を向ける俺を絵里奈ちゃんはしばらく睨んでいたが、諦めたようにため息を吐いた。
そんな刺々しい姿も大変美しいのだが……コレは流石に言ったら引かれそうだ。
「……ホント意味分かんない」
「安心して。俺は分かりやすいから直ぐ分かるようになるから。これで佐倉さんも暁月快斗マスターだね!」
「ぷっ、何それ。ふふっ……あははっ、アンタやっぱり変」
「なっ!? だから俺は一般高校生だと……!!」
「ふふっ、だからそんなの通用しないって」
吹き出すようにケラケラと笑う絵里奈ちゃんには、先程まで纏っていた張り詰めたような雰囲気は霧散していた。
俺も絵里奈ちゃんの考えていることはまだまだ分からないことの方が多いが……少なくとも、いつも教室で無表情のまま食べているときよりは楽しんでくれているのではないかと勝手に想像する。
俺は未だ可笑しそうにしながら弁当を開ける絵里奈ちゃんを見ながら。
……笑ってもらえたなら、どんなに変でも良いかもな。
そう、小さく口角を上げた。
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