第23話 皇国総合業務請負所(2)

職員の女性が続けて説明をする。


「当国の貴族は3種類です。中央貴族、辺境貴族、業務貴族の3種類です。それぞれを説明します。」


「中央貴族とは、皇国直接管理区域の統治や、国全体の内政に深く携わる者が該当します。この貴族は純粋な国仕えで、治める土地は持っておりません。」


つまり、省庁の大臣や上級官僚に近い存在という事だな。


「辺境貴族とは、地方の州を自治する貴族の事です。皇国から一定の大きさがある州の管理を任命され、その州の政すべてを取り仕切っています。

税率や州令などは皇国から制限が定められていますので、ある程度の裁量は持っているものの、無茶苦茶な運営は出来なくなっています。

基本的に現在は州の名前が、統治している貴族の家族名と同じになっています。

当州であれば第四級爵位を持つノルトラエ様が治められている、ノルトラエ州となります。」


辺境貴族は、州知事や県知事に近い存在になるか。


「最後の業務貴族です。こちらは、中央貴族や辺境貴族に仕える特定の業務を担う貴族になります。具体的には、軍務・医療・計量・税務等が該当します。寄子貴族とも呼ばれています。」


「トールさんを移住推薦されたユライシャイア・ボトロック様はボトロック家のご令嬢ですが、ボトロック家はノルトラエ家の業務貴族となっております。ボトロック家はノルトラエ州の軍務の一部を担っています。」


業務貴族は、上級役人に近い立場かな?


「貴族には爵位という物があり、爵位の違いで給与であるとか、特権であるとかが異なっております。その具体的な内容は秘匿されております。

爵位は一級から九級まで定められています。」


「四級以下の貴族は、一定期間ごとに皇国からの認定を受けなければ貴族として存続できない仕組みになっているらしいですが、これもまたその内容は秘匿されております。


「一級は皇帝陛下のみ、二級は大臣職にある中央貴族、三級は皇帝を退いた者と現皇帝の近親者になります。」


大臣の方が、皇帝の近親者より権限が強い。つまり院政をしいたり、皇帝の配偶者が幅を利かせることが出来ないという事か。


「四級が上級中央貴族、主要州を治める大辺境貴族、歴代皇帝の近親者の一部です。」


この辺は侯爵や辺境伯に該当する感じだろうか?


「五級が下級中央貴族、辺境貴族になります。六級が辺境貴族の元で、州内にある町などを治める業務貴族です。」


「七級と八級は、中央貴族や辺境貴族に仕える業務貴族になります。」


確か、ボトロック家は七級だったか?イメージ的には男爵ぐらいの地位になるんだろう。


「最後に九級ですが、こちらは国に顕著な貢献をした兵士や民が選定されています、特権はほとんど無く名誉爵に近い存在です。」


「級の話が出ましたのでついでに説明いたします。ゾーゲン皇国では貴族の身にあらず、あらゆる物や尺度を級で表すことが常です。

例えば、総合ギルドにおける業務請負者の一つである害獣狩人も一級から七級まで級があり、級によって受けられる依頼や総合ギルドの仲介手数料や税金などが変わってきます。

それに加えて三級からは総合ギルドから直接指名依頼が入る事があり、これは断ることが出来ません。」


実力があるから難易度が高い依頼を強制的にやらされるわけか、その代わり仲介手数料や税金が一気に安くなるんだろう。


「私は薬師をやる予定なのですが、薬師も同様でしょうか?」


「薬師ですか?薬師も一級から七級まで級があります。害獣狩人と同様に三級以上からは直接指名依頼があります。

級ごとに納められる薬が決まっていますので、級を上げないと例えば加護回復薬のようなものは納品自体を受け付けて貰えません。

級は総合ギルドが実施する試験に合格することで上げることが出来ますよ。

具体的な納品物などは、薬品納品窓口でお尋ねください。」


「話がそれましたね、次はゾーゲン皇国の国土についてです。ご存じかもしれませんが、イラシオ大陸の約9割がゾーゲン皇国の国土になります。国土面積は約500万平方キメートです。

残り1割として北西にプリヴァ王国、南西に小国群があります。これらの国境には国境壁があり強大な州が隣接している状態です。

トールさんは王国から来られたのでお分かりと思いますが、ここノルトラエ州はプリヴァ王国に隣接する州になっています。」


「(おおよそ500万平方キロメートル?ヨーロッパが約1000万平方キロぐらいだったはずだから、

イラシオ大陸は大陸と言うほど広くないのかもしれない。)」


「王国や小国群とは、それぞれと平和条約は結んでいないので一応は対立している事になってはいますが、戦争はここ100年起こっていません。」


「ゾーゲン皇国の人口ですが、おおよそ1億人とされています。ただし、正確な数値は国しか把握しておりません。」


「お金の種類は出国審査所で既に聞いていると思います、使用されている文字数字、長さや重さ、時間などについては王国と同じです。

これらの単位は遠い過去に皇国側で定められたものが王国や小国群に伝わって、イラシオ大陸全土で使用されている状態です。」


「続いて国や州からの税金ですが、トールさんはしばらくは宿暮らしで総合ギルドの仕事を受けて生活するご予定ですか?」


「はい、その予定です。」


「であれば、総合ギルドの仕事は仲介手数料と税金が抜かれた金額が支払われますので特に気になさる必要はありません。

トールさんは薬師という事ですので、もし将来店を持って商売をする場合は、売り上げに応じた税金を毎月総合ギルドに納める必要がありますので、

その際はご相談ください。

どこかに定住するとき、特に家や土地を買って所持される場合は戸籍登録と共に、こちらも住む場所などによって金額は変わりますが税金の支払いが必要になります。」


ふーん、この国は一応土地や家を買うという概念があるわけか。


その他にも、ゾーゲン皇国に関する色々を教えて貰えた。


一番有用だったのは、どういう州があるかと、各州の情報はこの総合ギルドの図書室に詳しい資料があるという点だ。

定住するところを探すのには困る事はなさそうだ。


北西と南西に、一応和平を結んでない国があるという事なので、東の方の国が住むには安定しているのかな、何となく思った。



「皇国については以上です、次はここ皇国総合業務請負所、皆さんは通称で総合ギルドと呼ばれる組織について説明いたします。」

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