第22話 皇国総合業務請負所(1)
皇国にも総合ギルドはあるが、こちらは正確には『皇国総合業務請負所』という名前の組織だ。
通称名はこちらでも総合ギルドらしい。
ユリーから聞いたが、こちらは移住民の国民登録つまり移住の管理局や役所のような機能も担っているらしい。
まさに総合業務請負所なのだ。詳しくは移住手続きの際に教えて貰えるとの事だ。
教えて貰った場所に来ると、かなり大きな建物が見えた。
小さい体育館ぐらいの大きさで、石造りに白い壁で覆われた立派な建物だ。
『皇国総合業務請負所 ノルトラエ州本部』と記載された看板があがっている。
扉を開けて中に入ると、かなり大勢の人間で溢れかえっていた。カンブレスの町とは比較にならない。
天井には注意書きや受付場所への案内などが所狭しと掲げられている。
「まずは、皇国民総合受付だったな。」
ユリーに教えられた受付窓口を探す、奥まったところに受付があるのが見つかった。
受付は4つあり、その内1つは今空いているみたいだ、あそこで聞いてみよう。
「すみません、私は王国から移住した者でして、最初にここに行けと言われたのですが?」
「王国からの移住者とは珍しいですね、では、入国審査所で渡された宣誓供述書の提示をお願いいたします。」
おっ、茶色いロングヘアの若いお姉さんが担当か。髪と言えば、ここに来るまで町を歩いてみたが俺と同じ黒髪の人がほとんどいないかった。黒髪を持っているのはほぼ王国人なのかもしれない。
「これですかね、よろしくお願いします。」
「はい、承りました。皇国では全国民が国民登録することが義務付けられており、さらに定住する場合は住所と紐づけた戸籍が必要になります。
また、国民としての管理のため家名も必要となりますので家名をお持ちでなければ、ご自身でお考え下さい。ノルトラエ州にご定住の予定ですか?」
「定住地についてはまだ考え中で、しばらくは宿暮らしして様子を見ようと思っています。」
「かしこまりました。定住する場合は、先ほど言いました通り、戸籍登録が必要となりますので再度当受付でお申し出ください。」
「移住者の国民登録手続きは2~3刻(2~3時間)ほどかかります、その間に移住者向けに皇国についての講習会を受けることを推奨しております。
えーっと…、トール様はいかがなさいますか?」
「受けさせてください。」
「承知しました、国民登録手続きについては3刻ほど経ってからこちらの受付にお越しください。その際はこの木札を提示ください。
時計についてはあちらにある時計を参照ください。」
同時に数字で8と書かれた木札を渡される。この辺は日本の役所みたいだな。
あちらと提示された方向に、大きな時計がある。時計は日本のアナログ式と同じ形だな、秒針は無いが。ぜんまい式かな?
「講習会は2階の、第2講習室で行いますので、このまま向かってしばらくお待ちください。場所はここです。」
講習会の場所を教えて貰い、2階の階段を上って提示された部屋まで行く。
『第2講習室』と書かれているのを確認して中に入ると、6セットぐらいの机と椅子のセットと、教壇がある部屋だった。
とりあえず、一番前の席に座る。
しばらく待っていると、先ほど受付をしてくれた若い女性が資料を持って入ってきた。
「お待たせいたしました、それでは皇国についての講習会を実施いたします。」
「まずゾーゲン皇国とは、というところから始めます。ゾーゲン皇国は、初代ロンベルク公が建国し、
建立以来一度の例外も無く、皇帝の男女問わず実子が必ず後を継ぐ事に事になっております。」
「皇帝は実子の中から性格面と文武において最も優秀な人物を選び出します。具体的には、各種試験を行い試験結果を基として、その時の皇帝・主要大臣・主要辺境貴族の合議によって選定されるとされています。
その際万一を考え、皇帝以外にも、次皇帝、次々皇帝、次々々皇帝の3人が選定されます。
なので皇帝が男であれば夫人が数十人、子供は100人を超える事が常となっております。
皇帝が女であれば、次皇帝と次々皇帝と次々々皇帝の子供からも選定されます。」
「この辺りは、我々には直接関係がありませんし、関係することも無いと思います。」
ふーむ、この国にいわゆる選挙制度は無いという事だな。
町の賑わいや奇麗さなどを見るに、十分民主的で発展し続けている国に見える。北〇鮮のようなヤバイ国では少なくとも無い。
という事は皇帝は血統主義なものの、皇帝や大臣が無茶苦茶な勅令を出したりは出来ない社会システムになっていて
説明とは別に国として破綻しない強固なシステムが確立されているのだろう。
「次は、我々にも少し関係がある貴族の話です。」
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