第21話 皇国での今後
部屋や廊下には、オイルランプ?灯油ランプ?のようなものが設置されていて、
やや薄暗いながら夜でも一応邸宅内を歩けるレベルには明るい。
夜の食事は、ユリーとその父親と一緒に取るのかと思ったら、客間に食事が運ばれてきて一人で取った。
薄いワインに柔らかいパンと野菜が色々入ったスープのような物、鶏肉を焼いたような物だが、どれも王国と比べるとかなり良い物だった。貴族だからなのか、こちらの食文化がかなり優れているのか。
食器類も上等で、この世界にもあるスプーンやフォークは銀で出来ているようだ。
お湯と拭き布に寝巻のような物も渡され、体を拭いて着替えて一段落着いた。
さて、皇国には来ることが出来た、ここからどうしようか。
元々考えていた通り、どこかに腰を落ち着けてゆるゆる生活を送るのを最終目的とする、それは変わっていない。
ここヘルヒ・ノルトラエには下水道があるようだが、皇国全土にあるとは限らない。文化的生活のためには、やはり最低でも下水道はあるところにしたい。
ここでもまずは情報収集からだ。皇国内部の事はほとんど分からない。
こちらの国にも総合ギルドはあるようなので、そこで情報収集をして住む土地を決めたい。
ヘルヒ・ノルトラエはかなり大きい町だし、それなりの情報は集まっているだろう。
住む場所を決めたとして、そこに住むにも土地・建物を借りるか買うかで先立つものが要るのは間違いない。
これについてはやはり薬師の仕事で金を稼いでいきたい、加護の力で楽々に調合して稼げるからな。
皇国に入ってこの屋敷に来るまで馬車の中でユリーと話をしたが、こちらの国でも王国ほどでは無いにせよ、薬の需要は高い。
王国と同じやり方で稼ぐことが出来るだろう。
うん、やる事は決まったな。
・ヘルヒ・ノルトラエに留まりつつ皇国内で定住すべき土地の情報を探す。
・同時に、薬師の納品依頼を受けて持ち金を増やす。需要などもここで探っておきたい。
・定住すべき土地が見つかったら、移動する。
・その土地でしばらく過ごしてみて、問題なければ定住する。買えるなら、土地・建物を買ってしまう。
この流れだ、明日起きたら早速総合ギルドに向かうことにしよう。
今日はお休みなさいだ。
ちなみに客間の寝具は、この世界に来てから一番上等な物でふかふかだった、コイルスプリングを使ってるのかな?
定住したら最低でもこれぐらいのレベルの寝具は欲しい。
翌朝、出立の準備をしていると客間にユリーが訪ねてきた。
「おはよう、トール君。よく眠れたかい?」
「おはようございます、ユリーさん。食事も美味しいし、寝具も非常に良い物で快適に過ごせましたよ、ありがとうございました。」
「それは良かった、それでトール君。今後どうするか決まっているのか?」
「まずはこの町の総合ギルドに向かおうと思ってます、しばらくはこの町に留まり薬師の仕事で稼ごうかと。」
「なるほど、そうか。王国と違って皇国では仕事ごとに級制度があったりとだいぶ勝手が違うが、その辺りはギルドで教えて貰えるだろう。
何より、まずは国民登録をしないといけない。移住後一定期間以内に国民登録しない場合、最悪指名手配されることがあるからな。詳しくは、総合ギルドの皇国民総合受付で聞くと良い。」
「助言ありがとうございます。」
「それで、総合ギルドの場所だが…」
ユリーは邸宅の入口まで見送りに来てくれた。
「では、トール君。また会うこともあるだろう、またな。」
「移住推薦を始めとして、何かとお世話になりました。」
一礼してから邸宅を離れ、教えて貰った総合ギルドに向かって歩きながら考える。
ユリーはおそらくだが俺が薬師としてかなり高いレベルにある事、それに加えなにがしかの希少な加護を持っていると、薄々感づいていると思う。
でなければ王国のような皇国より明確に劣る国にいるガキを移住推薦をする意味がないからだ。
貸しを作っておいて、然るべき時に協力させるなどを目当てにしているのかもしれない、推薦制度上は悪ささえされなければ推薦した所で懐は痛まないからな。
人間性の辺りはボルソンがどうとかで判別してるのかも。
この町に住んでいると、その手の厄介事に巻き込まれる可能性が考えられる。
まあ、推薦してもらった恩はあるから多少の協力をするのはやぶさかではないが。
気軽に使える自動車のような高速移動手段はまだこの世界には無いっぽいから、
遠目の町に定住すれば少なくとも頻繁に面倒ごとに巻き込まれることはなくなるだろう。
この辺も定住する土地の検討に加味しないと。
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