第12話 総合ギルドへ

小鳥亭は1泊3銅貨(約3000円)と、オナージュの町の宿に比べると3倍の価格だが

部屋はそこそこ奇麗で6畳ぐらいの広さ、食事込みという事なので町の規模からしたらこんなもんだと思う。


5連泊すると言ったら、14銅貨5鉄貨と少しまけてくれた。

とりあえず、ここを拠点にして


・金を稼ぐ

・護身術を学ぶ

・皇国に移住するにはどうすれば良いか情報を得る。


を目的にしばらく滞在することにしよう。

まずはこの町の総合ギルドへ向かうことにした。


石造りで3階建ての中々立派な建物だ、オナージュの町の数倍の大きさはある。

中に入ると、武器防具を装備してる人や、ガテン系の人、商人風の人、大きな荷物を抱えた人などなど

色んな人でかなり賑わっている。


辺りを見渡して納品受付窓口に座っている、長髪で若い女性に声をかける。

結構美人だな、顔採用だろうか。


「すみません、こちらの町のギルドを初めて利用するのですが、何か資格証のようなものは必要ですか?」


「納品だけなら何も要りませんよ、どういう物を納品するか予定はあります?」


「調薬の心得があるので薬を納品したいのですが、どういう薬が納品対象になってますか?」


「薬はどれも常に受け付けていますよ、質の高い加護回復薬と傷病回復薬は特に需要が高いです。

薬ごとにこの小さい容器いっぱいで、鑑定した後に規定のお金をお支払いすることになっています。」


「(おちょこぐらいの容器か。これならカワラヤナギから抽出した鎮痛薬で足りるし、試しに納品してみるか)」


「ヤナギから抽出・調合した鎮痛剤なら、今持ってます。これはどうでしょうか?」


「拝見します…。見た感じ、質がかなり良さそうですね。こちらの容器いっぱいに入れて貰えますか?」

「それでは少量取って鑑定いたします、少々お待ちください。」


この女性は鑑定の加護を持った人では当然ないらしく、ごく僅かだけ容器から取って奥の部屋に持って行った。

検出試薬みたいなのが一応あるんだろう。


近くに椅子があるので座ってしばらく待っていると、声をかけられた。


「こちらの鎮痛剤を鑑定させていただきましたが、極めて質が高いですね、ここまで質が高い物は初めて見ました!

これならこちらの容器いっぱいで、銀貨2枚ではいかがでしょうか?」


これで銀貨2枚にもなるのか!?

大体2万円だぞ、材料を取りに行く必要はあるが、調合の道具や手間がほぼゼロでこれは美味いな!


「分かりましたそれでお願いします、今後もこちらに薬を持ってくれば買い取ってもらえますか?」


「ええ、これだけの質の薬なら大歓迎です!!お若いのに、ここまでの腕をお持ちとは驚きです!」


「ありがとうございます。ところで、伺いたいのですが、こちらで取り扱う薬などが載った本はありますでしょうか?

あと護身術を学びたいのですが、こちらのギルドで講習はやっていませんか?」


「それなら3階の図書室に置いてある、薬学の本『プリヴァ生薬大全』をごらんください、載っている薬ならすべて買い取り対象です。

護身については剣と槍の講習を有料ではありますが、やっておりますよ。」


目的としていた金と護身術の二つは、この総合ギルドで達成できそうだ。



3階の図書室で『プリヴァ生薬大全』を見る。ふーん、一通りの薬が対象みたいだな、どれも頭に思い浮かべると材料や調合方法は加護で分かる物だ。


その中で、日本に無さそうな薬は2種類だ。


そのうちの1つ、加護回復薬は『加護の全て』という本にも載っていたな、加護を使い過ぎた時のクールダウン時間を短くする薬だ。

質が高ければ高いほど、加護のクールダウン時間が短くなるらしく、最も質が高いクラスになると1時間のクールタイムが数秒になるとか。

ただ、そのクラスになると土地の高い王都で、家が数件買えるような金額になるようだ。


頭に思い浮かべると、大地草と呼ばれる見た目はシソのような周りがギザギザした形の葉を持つ植物が原材料になるようだ。

質の良い物と思い浮かべると、抽出温度や手順がかなりシビアな方法が思い浮かんだので、質の良し悪しは調合手段で決まるようだ。


もう一つは傷病回復薬だ、これは外傷に使う傷薬だ。

ただし、日本の物と違うのはグレードが上がると大けがでも短時間で治す事が出来るという点だ、ゲームのポーションみたいな感じだろう。


最高クラスの物になると瀕死の重傷でも振りかければ数秒で炎症は静まり、傷が塞がり治ってしまうらしい、ただ血や皮膚を薬が生み出す事は出来ないから体力次第では、使ってもそのまま死んでしまうようだ。


こちらは、イリクサ草というヨモギの葉に似た植物から抽出するらしく

加護回復薬と同じでこちらも、抽出方法でグレードを上げられるみたいだな。


俺が持ってる『薬師の加護』を使えば、これらの最高クラスの薬を簡単に作る事が出来るのは凄いし、それを納品すれば大金持ちに一気になれるが目立ってその後面倒な事になるのは間違いないから止めといたほうが良さそう。

自分用に1本持っておくぐらいか。


この『プリヴァ生薬大全』、買えるなら今後の事を考えて買っておきたい。

後で、本屋を覗いてみるか。


さて、その前に槍の講習をやってるところに行ってみよう。



総合ギルドの入り口のドアとは別の場所に外に出る場所があり、そこから出ると

演習場のような場所に出た。


近くにいる、職員の服を着ているガタイが良いスキンヘッドの男性に声をかける。


「こちらで武器の講習をやっていると聞いたのですが?」


「ああ、基礎的な身体鍛錬と剣や槍の使い方講習をやってるぞ。

朝から昼、または昼から夕方までの講習1回で5鉄貨だ。」


「なるほど分かりました、今後お世話になろうと思っていますのでよろしくお願いします。」


「おう!強くなろうとする奴は大歓迎だぜ!」



これで、目的の二つに関しては見通しが立った。


とりあえずしばらくの間は、町の周辺で薬の材料を取って、加護で調薬してから納品して金を稼ぎ

講習に出来るだけ参加して、一通りの護身を学ぶか。


総合ギルドからの帰りに本屋に寄ってみたが、『プリヴァ生薬大全』は金貨1枚(約10万円)だった、かなり高いがその内買おう。

あと、今日の鎮痛剤の稼ぎで、大きな四角いリュックサック状の鞄を買った。


というのも、現場で全部調薬したら俺の加護がバレるかもしれないからだ。

現場でも目につかない所では材料から直接調薬しつつも、リュックサックで原材料となる植物類を宿に持って帰るようにして、宿で調合してるんだよ感をアピールしといたほうが良い。

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