第9話 出立の準備

新しい朝が来た、希望の朝かどうかは分からない。


部屋を出て、食事をとって、宿を出る。

ちなみに食事は夕食とあまり変わらなかった。


昨日考えた通り、総合ギルドに向かうと、今日もコウキがいたので相談してみる。


「コウキさん、昨日一晩考えたんですが、ここに居着いても大して仕事も無いと思うのでカンブレスに行こうと思うんです。ここからだとどう行けば良いか教えて貰えませんか?」


「カンブレスか、悪い選択肢じゃないと思うが結構遠いぜ。

ここから東に、そうだな10万メートぐらいはある。歩いていくにも結構コトだ。」


10万メートって事は、10万メートルつまり約100kmか。しかしメートの上の単位は無いのか?


たしか日をまたいで人が連続して歩く場合は、1日よくて20~30kmと聞いたことがある。それもちゃんと舗装された道での話だ。


とすると野宿か途中の町に泊まるにしても5日ぐらいはかかると見た方が良いか。

そんな経験無いからこれはキツいぞ。


「と言いたいところだが、トールお前ツイてるぞ。

ちょうどカンブレスとの定期馬車便の帰りが、明日の朝に出ることになってる。

今日中に準備すりゃ、楽にカンブレスに行けるぜ。もちろん金は必要だがな。」


「馬車便を利用したことが無いんですが、寝具と食事や水を準備しておけばいいんですかね?」


「ああ、そうだ。あくまで送るだけで、基本的には食事や寝具などの準備は自分でしておかなきゃいかん。

とりあえず馬車乗り場に御者が準備してるはずだから、予約をしといたらどうだ?

定員を超えると乗れないぞ。」


「なるほど、分かりました。ありがとうございます。」



挨拶もそこそこに、教えられた馬車乗り場に向かうと

キャスケットのような帽子をかぶっている髭を生やした中年男性が、馬車と馬の世話をしている。


馬車と言っても、とりあえずホロだけ張った、木製の粗末な車だ。

馬も競馬で走るような馬ではなくて結構足が太くて大きい、ばん馬のような種だろうか?


「すみません、明日ここからカンブレスに向かう定期便が出ると聞いたのですが、こちらでしょうか?」


「ん?ああそうだ、まだ定員までは空きがあるぜ。カンブレスまで片道で銅貨10枚だ。

途中にある危険地帯を迂回しながら進む予定で、一泊野宿の予定だから準備はしといてくれよな。

そんな危ない行程でも無いし、護衛もいるから安心だぜ!」


「あと、こんなことは滅多にないんだが野宿の際にスープが出るから期待しとけよ。

料理人が練習がてら作るらしくてな、味の評価を聞きたいそうだ。」


「分かりました、こちら銅貨10枚です。明日の朝こちらに来ればいいですか?」


銅貨を払うと、模様が書かれた木札のようなものを、渡される。


「これが乗合札だ、必ず持ってきてくれよな。行程にはかなり余裕があるから、日が昇って十分明るくなってからここを出る感じだ。

全員揃ってから出るが、遅れないようにはしてくれ。」


泊まりが一晩ならそんなに大層な準備をする必要はないな。

寝具代わりにもなる外套、パンがあれば良いか。


準備をするために雑貨屋へ向かう。

村の何でも屋って感じの店で、硬いパンも売っていたので3個買っておいた。

ナイフは既に持っているから、あと必要になりそうなのは外套、食器類、水を入れる革袋、着火剤、拭き布あたりか。


そんな寒い季節でもないが、寝具代わりにも使えそうでポケットが多い外套が欲しいな。

品ぞろえも良くないので、そんな良い物はなかったが、外にも内にもポケットが何個かある外套を購入した。


しかし、手持ちの金が少し心もとなくなってきた…。

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