第5話 加護

加護の全て、と記載された本を開いて読み進める。


『加護とは、この世に生まれた時点で授与される特別な能力の事である。

後天的に得られる事はなく、また天与される能力は何をしても成長する事はない。

極めて僅かではあるが、戦闘や商売などに極めて有用な能力を持つ者もいる。』


『加護を判別する方法が無いため、加護を持っていたのに気づかずその生涯を終えた者もおそらく多数いる。

ただ、基本的には本能的に加護の有無が分かるようである。』


どうも加護とは地球で言うところのギフテッドとは異なり、創作モノの小説や漫画などによくある特殊な能力のようだ。

俺が貰ったらしい加護も多分そうなんだろう。


さらに読み進める。


『加護を持っている者について正確な数は把握できないが、おおよそ50人に一人ぐらいが顕現しているとされる。

よくある加護が、火・水・風・土を操作したり生み出す事のできる、同じ体格なのに人より力が強かったりするというものである。』


『ただし50人に一人ぐらいの加護は、指先に小さな火を付けることが出来る、一度にコップ一杯の水を出せる程度であり、日常生活で少し便利程度の物になる。』


『加護の発動に必要なものは、基本的には当人の意識のみで、寝ている最中などに誤って発動する事は無い。

加護発動の力の素は今を持ってなお不明で、一定量使うと急に異常な疲れが出る事だけが分かっている。

疲れは通常の運動などによる疲れと違い、加護を使わないでいると1刻ほどで回復する。

疲れている最中は、身体能力が大幅に落ち、無理をしても加護を使うことは出来ない』


1刻が王国の1刻と同じなら、加護のクールタイムが1時間ぐらいあるということか。

加護の発動に必要なRPGで言うところのマジックパワーだかマジックポイント的なものが無くなると、衰弱するようなイメージだろうか?


『加護の回復には時間だけでなく、流通している加護回復薬を使う事でも回復できる。

回復効果は級や出来栄えによって変化するため、一概にどれぐらい回復するかは明言できない。』


『50人に一人は生活が便利になる程度の加護だが、その中からさらに100人に一人のレベルで戦闘などの実使用に使えるレベルの加護を持った者がいる。

火であれば1/2メート程度の大きさの火の玉を生み出した上で飛ばせるような者の事だ。

このクラスの能力を持った者は、戦闘などで数十人単位の働きを一人でするため

色々な形で活躍・成功する事がほとんどである。』


『さらに、そのクラスの人間の100人に一人のレベルで天災クラスの火水風土を扱えたり、特異な加護を持った者がいる。』


『この本を執筆した時点で分かっている加護を以降に記していく。まずは比較的該当者が多い加護の2種類である。』


『火・水・風・土の加護

一番顕現する人間の数が多い加護で、それぞれの属性に起因する現象を起こすることが出来る。

この中では特に水の加護は程度が低かろうとも、無から水を生み出す事が出来、その水は飲用としても使えるため非常に重宝される。

この中でも高い能力を持つ者は、国の軍隊や探索者、害獣狩人として活躍する事が多い。』


『体力の加護

同じ体格なのに、個体差では考えられない程度で力が強かったり、足が早かったり、投擲が上手かったりする加護。

何もしていないのに、筋肉が異常に発達する者もいる。戦闘のみならず、農業などでも重宝される加護。』


筋肉が異常に発達するのは、加護ではなくて漫画なんかで見かけるミオスタチン関連筋肉肥大のような気がするが…。

まあいいか、さらに読み進める。


『以降は、該当者が極端に少ない稀な加護になる』


『荷運びの加護

記録されているだけで、過去に3人しかいない加護である。

理屈が良く分からないが、手に触れた荷物をこの世界ではない所へ、自由に出し入れすることが出来る加護。

出し入れできる量は人によって差があったらしいが、詳しくは不明である。

3人のうち1人は、商人として大成功をおさめ、今のボクス商会の初代会頭であると言われている。』


『老若の加護

この加護は、加護の内で数少ない、自分の意思で自由に発動が出来ないものになる。過去の該当者は確認できるだけで20人。

人によって加護の内容が異なり、未だに全貌が分からない不思議な加護になる。

具体的な例として、生まれて1刻もしないうちに年を取り老衰で死ぬ、成年後は見た目は若いまま生き続けて通常の人と同じ寿命で死ぬ等である。』


『調整者の加護

過去の該当者は記録にあるだけで1人、それも狂人か判別できないと記録されており、本当にあるのかどうか分からない加護である。

該当者が言うには、この世界にはありとあらゆる物質ごとに調整者と呼ばれる特殊で尊き者が存在しており

その調整者と意思疎通を取ることが出来、さらには調整者から特殊な能力を付与された者らしい。

この者も、突然何もない場所に木を生やす事が出来たという。

晩年は木に向かって精霊様と呟きながらあらぬところを見続けるようになったとの事である。』


『鑑定の加護

過去の該当者は記録にあるだけで5人。

物の質や真贋を見抜ける加護である、5人のうち1人に至っては人間の犯罪経験すら見抜くことが出来たとの記録がある。』


『天運の加護

この加護については、現在に至っても真偽のほどが定かではない。

天神教では天におわす神々から愛された者が受ける加護で、類稀なる幸運を授けられるとの事である。

ただ、確かめようがないため、この加護の存在を疑っている者がほとんどである』


他にも色々な加護があるようだ…



ふーっ、言語の本を見ながら少しずつ読み進めるのは疲れるな。

幸い、この体は若いのもあってまだまだ読み進められそうではあるが。


そして、次のページを見て目を見張った。


『薬師の加護』

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