第4話 状況の把握
ギルド職員、名前はコウキという人に本棚が数棚ある部屋に案内されて、この辺が良いだろうと何冊か本を選んでもらった。
そういやコウキも俺の家族同様、身長が低めだな。トールが大きめなのかもしれない。
部屋には小さい机と椅子があり、この机と椅子を使って良いと言われたので、まずは読み書きの本から開いてみる。
しかしこの机うっすら埃が溜まっているぞ、全然利用されてないなこの部屋。
しかし、どれも紙の質があまり良くない。
装丁もいい加減で、人力の紙漉きで作ったようなごわごわした紙を糸で綴じている。
ただ、1冊だけ立派な装丁に、品質の良い紙を作っているものがある。
パラパラと本をめくって中身を流し見する。
元のトール君の知識や与えられた加護とやらでさらさら読めることを期待したが全くそんなことは無かった。
まずは読み書きからだと、読み書きを習う用の入門書のような本をじっくり読んでみると
文字の種類の紹介や動物・果物などの挿絵に文字が書かれているみたいだ。
おお、この世界にも犬や猫などはいるんだな。こっちの果物はりんごか?
ざっくり読んだ感じ、アルファベットとは全然違うが、文字を組み合わせてローマ字のような文法を使っているのが分かった。
これなら文字さえ覚えれば日常に必要な文書ぐらいは読み書き出来るようになりそうだ。
しかし町の名前がオナージュという横文字なのに、文法がローマ字に近いとかありえるのかとも思ったが、言語学者でも無いし、今の俺には都合が良いので、そういうもんだと納得しておこう。
数字も、これまた全然違う形状だが0~9までの数字があり、10進法で計算するのが主流なようだ。分数・小数点の概念も既にある。
こっちも数字さえ覚えてしまえば何とでもなるな。
とりあえず、この本を辞書代わりに使いながら別の本も見てみよう。
次に、地図のようなものが載った本を開いてみた。
ただ、地図と言っても大きな大陸の地図しかなく、この世界の地理を把握するにはあまり役に立たなさそうだ。
まあ、あまりに細かい地図はそれだけで軍事的価値が出るからあったとしても載せられないのだろう。
少しずつ読み進めると、ここはイラシオと呼ばれる大陸のようで、その大陸の北西にプリヴァ王国という王国があり、それが俺が今いる所のようだ。
大陸の中央には巨大な国土を持っている、ゾーゲン皇国という大国があり、この文献によればプリヴァ王国の精強な軍が、皇国を退け続けていると記載されている。
この辺は大本営発表な臭いがぷんぷんする。
宗教についても記載があり、大陸全土で教徒が多いのは「天神教」なる宗教の様だ。
この本を見る限りでは、そこまで過激な宗教観ではないようだが、実際はどうだろうか。
プリヴァ王国内の地理について場所はおおまなか位置しかわからないが、大きい町の紹介もされている。
王都オーリヤ・プリヴァ、2番目に大きくゾーゲン皇国に比較的近い町カンブレスなどなど。
今後の事を考えると、この辺の町に行くのが良さそうか。
生活に必要な、硬貨や単位の記載もある。
王国の紹介のような本らしい。
通貨は、この王国において金貨・銀貨・銅貨・鉄貨の4種類が流通しており、それぞれ10枚で一つランク上の貨幣と同等という事になっているようだ。
つまり1鉄貨が100円だとすると、1金貨は10万円という事になる。
また、王国では時間の単位に刻という単位が使われていて、24刻で1日のようなので
1刻が1時間に該当する様だ。とするとこの星の大きさや、恒星の配置が太陽系の地球とほぼ同じという事になる。
まあ人間とほぼ同じ生物や、動物がいる事から察するにそうなんだろう。
長さの単位はメートという単位で、かなり昔に当時のゾーゲン皇国皇帝がメートという名の皇国の子供が手を広げた際の長さを基準にしたらしい。
子どもの年齢にもよるが、名称も似てるし1メートルに近い長さだろうか。
そのメートが定められた後、1/10メート立方の箱に入った水の重さを1キーグという重さの単位と皇帝が定めた。
この皇帝は色々な長さ・重さ以外にも、今日に使用されている色々な基準を作った人らしく、死後に計量帝と呼ばれるようになったらしい。
それが王国にも入ってきて基準単位となっている。
重さや長さの単位が、地球のSI単位系と似ているが
もしかしてこの世界は、地球と普遍的無意識では繋がっていたりするんだろうか?
その他、紹介された本を読み進めていって、最後に残ったのが立派な装丁の本だ。
中身を読むと、どうもこれだけは王国ではなく皇国で発行された本のようだ。
皇国も王国と同じ文体のようなので、この大陸全土で同じ文字・文法が使われているのだろう。
本の装丁レベルを比較するに、おそらくプリヴァ王国よりはゾーゲン皇国の方が圧倒的に文明・技術レベルが上の可能性が高いはず。
より文化的な生活を送るなら、将来はゾーゲン皇国に移った方が良さそうだ。
簡単に追い出されたし、少なくとも俺の戸籍はおそらく無いんだろう。
移住は簡単に出来るのだろうか?文明や知識レベルが低い民などゾーゲン皇国側からしたら要らないと思うが。
ともかく、改めて皇国製らしき本の表紙を見てみる、そこにはこう記されていた。
加護の全て
と。
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