第46話 リモートワーク
目が覚めた。
体を起こしたら
よかった、昨日より顔色が良くなってるみたい。
熱はどうかな。
手をおでこに当ててみたけど、よくわからない。
じゃあ、おでこをおでこに当てて……
ダメ、体が熱い。近くで顔を見るとゆうべのことを思い出しちゃう。
じゃあ、目を閉じて……
もっとダメ。もっと体が熱い。
……どうやら熱は下がってるみたいだけど、颯君が起きたら体温計で測ってもらおう。
颯君が起きてくる前に、洗濯ものを干して、朝食の準備をしよう。
風乾燥付き洗濯機って本当に助かる。
洗濯ものはこれでいい。
朝食のメニューはどうしよう……たぶん、もうおかゆじゃなくていいと思うけど、ごはんは少し柔らかめにしよう。
ん-、甘いものが好きって言ってた……そうだ、味噌汁の具にサツマイモを使おう。
タンパク質は、おかあさんに教わった鶏ハムが作り置きしてある。うん、柔らかくて脂肪が少ないからうってつけね。
あとは、目玉焼きで底上げしよう。
よし、あとは海藻ミックスサラダとゆうべに引き続き香の物がわりの紅しょうを添えて。
…………
『おはよう』
”ございます”が付かなくなった。いい傾向だよ。
「おはよう、気分はどう?」
『おかげさまでかなり良くなった。あ、ベッドありがとう』
「どういたしまして。もうすぐ朝ご飯できるから、体温測って待ってて」
『はい』
よし、鶏ハムと海藻ミックスサラダは完成。
味噌汁は、長ネギを投入して火を止めて蒸らせば完成。
目玉焼きのほうは蒸らしに入ってる。
『やった。36度3分。平熱です』
「よかった。もうちょっとでできるから」
よし、完成。
「私、おかず運ぶから、ごはん付けてくれる」
「うん。おいしそうだ」
「颯君は目玉焼きには何をかけるの?」
『胡椒が好きなんですけど、なければしょうゆで』
「胡椒あるよ。サラダ用のドレッシングはサウザンとゴマと玉ねぎがあるから好きなの使って」
『「いただきます」』
『おいしいです』
「本当に? これそんなに凝ったメニューじゃないよ」
『いや、やっと普通のご飯が食べられるようになって感激です』
「そう、よろこんでもらえてうれしい」
…………
「今日、どうする? 私今日休みじゃなくてリモートなの。こうなるとは思ってなかったから」
『風邪ひいた俺がいうのもなんですけど、これは予想できないですよ』
「リモートワークなんだけど、ゆうべパソコン移動させたから、こっちの部屋でやるよ。会議があってしゃべるけど、一応社外秘もあるから」
『社外秘があるのは、どこの会社も一緒ですよ。ん-、お仕事してる間、あっちの部屋で音楽聞いてることにしていいですか。もちろんイヤホンで』
「うん。そうしてもらえるとうれしい」
「出版社の人だと、読破してるかもしれないけど、マンガと小説はそれなりにあるから、自由に読んで」
『お仕事以外での読書量は平均よりは多いんとは思うけど、そんなに本の虫っていうわけじゃないから、たぶん未読だと思うよ』
「じゃ、良かった……って何が良かったのかわからないけど」
『ハハハ、転がり込んでるのは俺の方ですから、贅沢は言えないですよ』
「転がり込んでるとか、贅沢なんて思わないで、颯君の役に立てたらうれしいから」
『ありがとう』
…………
「じゃあ、お仕事にかかるね」
『はい、引き続き寝室使わせてもらいます』
「夕方よりは早く終わるから、それから町にでましょ」
『うん』
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
よし、会議で出たコメントを設計に反映しなきゃ。
多くはないから、そんなにかからないだろう。
【
あれ、
【
!
背景合成を入れてるから、わからないはずだけど?
【Yoshie】マ、
【Aykaç】そんな焦らなくても
【Ηλιάδης】音の響き方が違うんだもん、わかるよ
……潜水艦のソナー員は、足音で靴の種類がわかるというけど、こいつらそういう才能があるのか?
【Yoshie】き、今日は気分を変えようかな~って
【Aykaç】ふ~ん
【ΗλιάδηςAykaç】いるんだね、いつもの部屋には
!
【Aykaç】だから、声が聞こえたりしたらまずいからと、Yoshieが別の部屋に移動したと
【Ηλιάδης】どうなの?
【Yoshie】昨日帰る予定だったんだけど、風邪をひいちゃったから急遽泊めたんだよ
【Yoshie】その、緊急避難というか……
【Ηλιάδης】ん-と、まじめな話、設計プロセスって社外秘結構扱うけど……
【Yoshie】イヤホンで音楽を聴いてるよ……それに私の彼氏を信頼してもらわないと困るけど!
【Aykaç】わ、わかった……それで、ときめいた?
【Ηλιάδης】Lale、そんな愚問しちゃだめよ。彼氏と二人っきりなんだもんときめかないはずないじゃない
【Aykaç】Yoshie、本当のところどうなの?
それって“ときめいた”としか答えられないんだから、聞く意味ないじゃない。
【Yoshie】えーえー、ときめきました
【Ηλιάδης】おー、ときめきポイントは?
【Yoshie】なにそれ?
【Aykaç】ヒゲの剃り跡とか、胸板とか
【Yoshie】寝……内緒だよ
【Ηλιάδης】寝……寝言? 寝顔? よもや寝汗のにおい?
君のような勘のいいギリシャ人は嫌いだよ。
【Yoshie】内緒は内緒!
【Aykaç】で、NextStageへは?
【Yoshie】何を考えてるかなんとなくわかるけど、風邪ひいてて熱があったんだからね
【Aykaç】そっかー、お預けかー
【Ηλιάδης】まあ残念だったね
【Aykaç】んー、ひょっとしてもう熱も下がってるんじゃない?
君のような勘のいいトルコ人は嫌いだよ。
【Yoshie】仕事に掛かるから。これで終わり
【Ηλιάδης】フフフ、頑張ってねー
【Aykaç】じゃーねー
「颯君。午前中終わった」
『はい、お昼にしましょうか』
「俺、オムライス作りますよ」
『本当、じゃごちそうになるわ』
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
ご訪問ありがとうございます。
颯君、風邪治ったみたいでよかったです。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます