第8話

 ミャーコは少女の前に出る。


「もしかしてあなた、この泉について何か知っているんじゃない?」


 少女はミャーコのピコピコと動くネコ耳としっぽに驚いたのか「ヒッ!」と頭を抱え丸くなった。小刻みに震えているように見える。


「なるほど」

 ショックを受けて倒れこむミャーコの代わりに、レオは少女の前に膝をつく。

 強面こわもてのレオの前に少女は身を固める。どうしても初見ではレオの威圧感に圧倒されてしまう。


「やめて来ないで」

 固く目をつむり少女は震えている。

 レオはつとめて優しく話しかける。

「何も危害は与えません。ただ一つだけ教えてください。あなたは『龍』をご存知ですよね?」


「龍神様のこと?」

 ようやく少女は顔を上げた。

 顔が引き吊ったのを見てレオの代わりにマコトが前に出る。

「その龍神様とこの泉って関係あるのかな?」


「ここには龍神様の卵があるから、うちらが見守っているの。昔は麓の村の人たちも来ていたのに最近は全く来ないで、うちらの事も見えなくなってて」


「あなたの仲間はどこにいるの?」


「……いないよ」


「どういうこと?」


「うちらは卵を見守る為に生まれた。きっと卵がもうダメなんだろうね」


「……卵」レオが呟く「もしかして麓の提灯を飛ばす祭りも関係ありますか?」


「あれは卵がかえって空に戻れるように飛ばしているんだ」

 レオは思い出す。

 確か、龍属は生まれて初めて見た昇るものについていく習性がある。

 逆にそれがなければ空を飛ぶことも叶わず、空で暮らす龍は仲間に会えないことになる。


 ……と、いうことは

「まだ、希望は捨てちゃいけませんよ」

 少女はキョトンとした顔でレオを見つめた。

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