第6話

 晴天に恵まれ、湖は提灯の飾りで賑わっていた。提灯を飛ばすのは日が落ちてからになる。

 それまではあわただしくハッピを着た人々が動き回っている。


「六班全員いるな。今朝シンからの報告によるとあの一番大きな山に泉らしきものがあるらしい」


「レオ、それには語弊がある。あそこにあるのは泉なんて綺麗なものじゃない。あれは濁りきった沼だ。底なし沼の可能性もある」


「なにそれ、そんな汚そうな場所に何しに行くの」


「汚くないよ失礼な」


「いいじゃないここで提灯の龍見ようよ。そしたらゴールできるでしょ?」


「いや、それだけじゃない気がするんだ」


「皆、レオの特性上これは無視できない。一度一緒に確認に来てくれないか?」


 シンの真剣さにミャーコもマコトも否定はできなかった。

 未来視の能力を持つレオはその特性として正解と不正解の勘がとても優れている。軌道修正の力とも言われることがあるくらいだ。


「同意は得た。ただ今のミーティングをもって本日が最終日と定義する。よってこれから二十四時間の魔法の使用を許可する」


「「「はい」」」

 空気が瞬時に切り替わる。ピリリとした空気をまとい、皆それぞれ杖を腰に携える。


「では皆近くに集まってくれ。沼まで行くぞ」


 シンの周りに枯れ葉が回る。

 シンの魔法、テリトリー内の探知と瞬間移動。

 そっと意識の隙間を縫うように消えた。






 木々が生い茂る中、枯れ葉に隠されるようにしてそれはあった。

 丸くぽっかりと空いた穴には泥がたっぷりとたゆんでいた。透明度は低く底は見えない。

 光は当たらないが、不思議と嫌な匂いはなかった。


「丸い……」

 レオは静かに呟いた。


「森の匂いはいいね」

「町より新鮮な気がする」

 ミャーコとマコトは深呼吸した。

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