第4話

 その夜、レオが告げたことは『わらべが全て知る』だった。


 六班はチェックポイントの湖に戻ってきていた。

 謎は深まってしまった。

 湖は朝日に照らされてキラキラと輝いている。

 この時間帯は早朝ランナーが多く、シンもいつの間にか消えていた。


「これ、本当に俺が?」

 レオは昨日のメモを見つめている。

 能力を発動時に見た記憶は現時点のレオには思い出せないらしい。

「だとしたら何故なぜ『童』なんだろう? 『子供』ではダメだったのだろうか?」


「わざと古風に言った、とか?」

 あくびをしながらミャーコはお地蔵様の隣に座り込んだ。「……」レオは口の中で呟くと目を閉じ思考に集中し始めた。


「おーい! 『龍』あった! さっき人力車の人に聞いたんだけど祭りで飛ばす提灯が昇り龍に見える時があるらしい!」

 興奮したマコトは一息で喋り終えるとバタンとミャーコの隣に倒れた。ミャーコは気だるげにマコトをあおいだ。


「ねえそもそも『龍の泉が輝く時』って完全な文とは言えなくない?」


「そう言われると確かに変ね。その時に何が起こるっていうの?」


「でもさ、レクリエーションのゴールとしては学園への扉を見つければいいんだから、扉が出現するんじゃない?」

 寝転んだまま眩しそうに空を見ながらマコトが扉を開く仕草をする。


「マコトの言う通りだとしたら、このレクリエーションに何か意味はあるんだろうか」


「レオは考えすぎじゃない? レクリエーションはもっと気軽にするものでしょ」


「本当にこれだけだろうか」

 レオはまた何か難しそうに考えている様子。




「またねシンくん」

「また走りましょうね」

「お散歩もいいですよ」

「そうですね、また会ったらお願いしますね」

 おばあさんグループに入っていたシンが帰ってくる。

 熟女に囲われてホクホク顔のシン。


「ずいぶんと美女に囲まれて嬉しそうね。情報を集めに行ったんじゃなかったっけ?」


「ミャーコよ。素晴らしい情報を得たぞ。なんと提灯を飛ばすとな」


「龍に見えるって言うのはマコトから聞いたわ」


「そうか……ではその発祥となった逸話はどうだ?」


 マコトとミャーコは首を振る。

 移住者が多いのかどんなに聞き込みをしても、それほど古い情報は得られなかった。


「そうか! まだ妖怪等が闊歩かっぽしていた時代、かつてここは龍神様の休憩所だったらしく、ある時邪悪な妖怪の群れに襲われて滅亡しかけたそうだ。その時たまたま訪れた龍神様が助けてくれたという。そして周りの山々に姿を変えて今も守ってくれているそうだ」

 シンはどうだと厚い胸筋を張って見せた。


「なるほど、それで提灯をその龍神様に見立てて飛ばす、と?」


「そうらしいな。その龍神様の勇姿をわすれないために」


「忘れられてるじゃない」

「人の入れ替わりまでは想定してなかったみたいだね」

 ミャーコとマコトは笑っていた。


「本当にそれだけだろうか」

 レオは朝日に光る山々を見渡す。

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