第96話 レベルがあがっていました(ところでこの数字はなに?)

「結構レベル上がって来たなぁ」


二つのダンジョンをクリアし、色々な人達と冒険をしてきた事で、私のレベルはかなり上がっていた。

既にレベルは20代に入り、色々な呪文やスキルを取得している。

初めてこの世界に転生した頃に比べれば、比較にならない程強くなっていた。


アユミ Lv28


妖精人族


HP 254/254

MP 5052/5052

???? 2/10 


体力32

魔力228

筋力29

敏捷力32

器用さ33

知力24

直感26

隠蔽13

回復力14

幸運4


「能力値も大分上がったねぇ」


 こちらも最初に比べたらかなり上がってる。

 というかMPの数値だけ異常なんですけど。

 あとよくみたら魔力も桁が違う。

 これも妖精に進化したからなのか……

 でも他のステータスは人間の時と大差ないね。


「あれ?」


 と、そこで私は見覚えのない項目が増えてる事に気付いた。


 レベルやHP、MPの下に???? 2/10という表記が記載されていたのだ。


「なんだろこれ?」


 数値が分かれているから、スキルみたいに使用回数があるもの?

 でも何か発動させた覚えもないから多分違うよね。

 一体何だろコレ?


「あっ、そうだ。こういう時は女神様のログを見れば」


 私はメッセージのログ機能を使ってこの謎の数値に関して調べる。


「うーん、書いてあるのはいつものこまめに読めくらいかぁ。あとはダンジョンクリアおめでとう関係、仲間を増やして一杯ダンジョンをクリアしましょうとかその辺だね」


 最近はあんまりダンジョン探索に役立つ内容はない感じだなぁ。


『さて、貴方も大分強くなってきましたし、そろそろ強い魔法やスキルを取得する頃でしょう』


 お? なんか新しいアドバイスかな?


『ダンジョンは階層が深くなればなるほど難易度が増します。たとえば敵の防御力や生命力など。今は問題ないようですが、いずれ今の貴方の攻撃手段では、相手に傷を与える事も出来なくなるでしょう。そうなる前により強力な攻撃手段や武具を手に入れる事を考えましょう』


成る程、確かに防御力100の魔物に攻撃力5の鉄の剣で挑んでもダメージ通らないだろうしね。

鉄の壁に木の枝で攻撃しても意味がないのと同じだ。


「ふむ、となると今後の目的はレベル上げよりも攻撃力の増強かぁ」


武器と言われて思い出すのは先日キリヤさん達ペネトレイターズとの冒険で見つけた魔剣ブレイムソードだけど、あれは剣自体はそこそこ良い物程度との事だった。

あの武器のキモはスキルと同じように魔法が発動出来ると言う部分なので、便利ではあるけど女神様の言う強い敵に通じる装備かと言われるとなんか違う気がする。


まぁ武器に関してはお爺ちゃん達に相談かな。

スキルに関してもそっちに相談すれば教えて貰えるでしょ。


「問題は魔法なんだよね」


 ルドラアースって魔法に関しては結構扱いが慎重みたいで、学校で先生が監督しながら授業で覚えるみたいだし、図書館にある呪文のコピーもあまり威力の強い魔法は取り扱っていなかった。

 アートさんの話だと、大学とか専門機関で学ぶ必要があるらしいんだよね。

 もしくは探索者として経験と実績を積んで、お金を払って習得試験に合格する必要があるんだって。


「でも私この世界の戸籍内から、学校通えないし、探索者にもなれないんだよなぁ」


 となると後は以前やったように、レア素材と覚えた呪文メモとの交換なんだけど、学校やお金を払って学ぶことが可能な中級魔法までならともかく、資格の必要な上級魔法を教えて貰うのは難しいだろうなぁ。

 仮に教えて貰うにしても、かなりレアな素材でないと、探索者達も受けてくれないんじゃないかな。


「前にダンジョンで出会った学者のマーグさんなら教えてくれるかもだけど」


 でもあの人今どこにいるか分かんないからなぁ。


「うーん、どうしたものか」


 魔法に関しては一旦保留かなぁ。

 最悪スキルで高レベルの魔法に相当する攻撃手段を手に入れればいいだろうし。


「よし、その方向で考えよう!」


 ピロン


 と、その時、私のDホンにメールが入った。


「誰だろ?」


 ポケットからDホンを取り出して画面を見ると、そこにはタカムラさんの名前が表示されていた。


「あっ、タカムラさんだ」


『今日予定空いてるかしら? ちょっとお話したい事があるんだけど』


 ふむ、お話ねぇ。

 いつもなら錬金術の勉強の話とか、お茶しないといった内容なんだけど、どうも真面目な話っぽい。


『良いですよ』


 私は了承のメールを送る。


『ありがとう。それじゃあいつもの図書館の横の公園で合いましょう』


 さてさて、一体どんな用事なのやら。


 ◆


「まってたわアユミちゃん」


「こんにちは皆さん」


 図書館横の公園に行くと、お婆ちゃん達が勢ぞろいしていた。

 このお婆ちゃん達っていつも一緒にいるよね。仲良しさんだ。


「それで話って何ですか?」


 公園に備え付けのベンチに座りながら、私はタカムラさんに用件を尋ねる。


「あのね、アユミちゃんは錬金術でもっと高度なお薬を作る気ってある?」


「それはまぁ、作れるなら作りたいですね」


 うん、もっと性能の良い薬が作れるなら、ぜひ作りたい。


「そう、それじゃあ試験を受けましょうか」


 ……はい?


「え? 何でですか?」


 私が事情を尋ねると、タカムラさんはニコニコと笑みを浮かべながら突然の申し出をしてきた理由を話してくれる。


「錬金術で作ったお薬って人の体に入るものじゃない。だから個人が自分で使う分には資格とか要らないんだけど、それでも上級のお薬とかを作る分には自分用でも資格がいるのよ」


 成程、つまり魔法と同じってことだね。

 しかも薬は人の命にかかわるものばかりだから、猶更下手な人間が作ったものを売り買いなんてさせられないと。


「今まで教えたポーションは資格のない人でも作る事が許可されていたものだったけれど、今後より高度なポーション作りをしてもらう事を考えると、やっぱり資格を取得した方が良いと思うのよ。それに今のアユミちゃんには仲間がいるんでしょう? その人達に使うなら猶更ね」


 ふーむ、タカムラさんの言いたい事は理解できた。

 シンプルに弟子である私へ善意100%で提案してくれたと。ただなぁ……


「えっと、そちらに言いたい事は分かったんですけど、それはそれでこちらも事情が……」


「ええ、分かってるわ。妖精さんなのよね」


「えっと、まぁ、はい……」


 戸籍が無い=妖精さんというイコールに凄く戸惑いを感じるものの、実際種族が妖精人になっている以上、全くのウソじゃない。

 というかここで否定するとガチで戸籍のない住所不定の不審者になってしまうので、どっちにしろ否定できない。うーん、ジレンマ。


「その問題なら気にしなくていいよ。アンタが妖精なのはもう世界中の人が知ってるんだからね」


「世界中……」


 世界中の人から妖精と思われているって言葉が、なんかすごく不思議ちゃん扱いされている気分になってもニョる……


「だからその辺りはこちらで良い感じに許可を取るわ。


「ええ!? そんなことできるんですか!?」


「これでもポーション作りに関してはそこそこ実績があるのよ。その私が教えていると言えば、試験を受ける資格はあると判断して貰えるわ」


 おおー、マジか。っていうかいくら私が妖精だからって、そんな簡単に国の資格取得に影響及ぼす事なんて出来るの?


「もしかしてタカムラさんって有名人?」


「違うわよぉ。ちょっと昔色々作ってただけよ。昔は今ほど技術が成熟してなかったから、誰も彼も新しい物を作ろうとして色々やってたらぐうぜんその中の一つがヒットしちゃっただけよ」


 その時点で凄いのでは?


「でも今はもうだめね。しっかりとした大学や機関で学んだ人が有名な会社の研究室で素人調合なんて比べ物にならないくらい高度な品を作る時代だもの。私なんてロートルよロートル」


 などともう自分なんて時代遅れだと謙遜するタカムラさん。

 確かにそうなのかもしれない。でも、私はそれだけじゃないと思う。


「あの、タカムラさんみたいな人が色んなポーションを開発してくれたから、今の探索者達が安全に冒険出来る土台が作られたんだと思います。実際私もタカムラさんから教わったポーションに何度も命を救われたんですから。だから全然ロートルなんかじゃないですよ。現役バリバリの頼れる師匠ですよ」


 そうだ、タカムラさんがロートルなんてとんでもない。

 現代でも思いっきり通用する凄い錬金術師だよ。

 タカムラさんが教えてくれなかったら、私は三層で魔物に襲われた時に死んでいたんだから。

 そしてその後のボス部屋でも……


「~っ! 嬉しい事を言ってくれるわね!」


 そんな私の言葉が嬉しかったのか、タカムラさんにギューッと抱きしめられて頭をグリグリされる。


「うわわわわっ」


「それじゃあ先方にもそう伝えておくわね!」


「え? いやちょっと待ってください! そもそも私試験なんて言われても何も分かりませんよ!?」


 というかマジでこの世界の専門知識なんてないんだよ私!


「大丈夫! 来週の試験の日までにみっちり教えてあげるから!」


「来週!?」


 近すぎーっ!! 期末テストの日程じゃないんだよ!?

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