第75話 後始末をした後は?(事情説明ですね分かります)
「アユミ殿、賊を衛兵隊に引き渡してきました」
「あっ、お疲れ様です」
あの後意識を失ったダンジョン強盗達をふんじばった私達は、彼等を地上の衛兵隊に引き渡す事にした。
といっても子供の私達が何人もの大人を運ぶのは大変なので、フレイさんが地上まで戻って衛兵達を連れてきてくれたのだ。
「しかしよかったのですか?」
「何が?」
「ダンジョン強盗を討伐した手柄を私達に譲った事です」
やれやれ、またその話か。
そう、私は衛兵隊と顔を合わせたくなかったので、フレイさん達に全部任せて隠れてたんだよね。
「ああ、別に問題ないですよ。私としては衛兵隊とかに関わるのが面倒なんで」
さっきも同じ話をしたんだけど、フレイさんは他人の手柄を奪うような真似は出来ないの一点張りで話が進まなかったんだよね。
結局はエーネシウさんの、
「頭の固い人ですわね。わたくし達はアユミ様に命を救われているのですよ? であれば恩人であるアユミ様の命令に従うのが道理でしょう」
という一言で問題は解決したのだった。
いや命令じゃないけどね。
「やはりそう仰いますか」
仰います。
「なので私もアユミ様の事は言わず、通りがかった腕利きの冒険者が手助けしてくれたと説明しておきました」
「フレイさん達も倒したんだから、自分達の手柄にすればよかったのに」
「我らの手柄などアユミ殿の手助けがあればこそです。実力で倒せたとは言い難い以上、そんな空しい手柄を得ても後々自分の首を絞める事にしかなりません」
真面目だなぁ。
「それよりもアユミ殿、改めて助けて頂いた事感謝いたします」
「さっき何度も聞きましたよ」
フレイさんは相当義理堅いのか、さっきから事あるごとに助太刀したことにお礼を言ってくる。
エーネシウさんは「助けて頂き感謝いたしますわ」って言って終わったのにねぇ。
「でもホント、フレイさん達が襲われているのを見た時はびっくりしましたよ」
うん、知り合いが襲われた事にもびっくりだけど、この世界にダンジョン強盗なんてのが居る事にかなり驚いた。
まぁ普通に考えれば、ダンジョンとか無かった前世でも強盗や泥棒は当たり前のように居たんだから、監視カメラが無くて下層へ向かう主要通路以外は人気が少ないダンジョンなんてそれこそ強盗し放題だよね。
「ええ、迂闊でした。まさかこの土地のダンジョンも攻略された直後だったとは」
え? ここのダンジョンって攻略されたばっかなの?
って事は私達がリロシタンの町に言ってる間に攻略されたのか。
凄い偶然だな。というか、
「何で攻略された直後だと迂闊なんですか?」
「おや? アユミ殿は御存じではないのですか?」
私が訪ねると、フレイさんにえ? マジ? って感じでビックリされる。
「ダンジョンが攻略されると内部の構造が変化する事はアユミさんも御存じでしょう? その際には真っ先に下層への最短ルートが調査されて情報が共有されるのですが、新しいルートに慣れていないとうっかり以前のルートに似た通路で道を間違えてしまうんですの」
「ダンジョン強盗はそうしたダンジョンの再構築が起きた直後のルートミスを狙って活動が活性化するのです」
成程、犯罪者にも稼ぎやすい時期があるって事か。
昔の強盗が目撃者を減らす為に月の出てない夜を狙うみたいな感じなんだろうな。
「それでダンジョンの情報を調べてなかった二人はダンジョン強盗に襲われてしまったと」
「お恥ずかしながら」
まぁそれなら仕方ないよね。
「でも二人は何でここに? リロシタンの町に居たんじゃなかったんですか?」
二人はリロシタンのダンジョンで活動していた筈。なのに何でこの町にいるんだろう?
すると二人は何故か苦笑すると、その理由を教えてくれた。
「理由は二つあります。一つはリロシタンのダンジョンが暫く入る事が出来なくなったからです」
「それは攻略されたダンジョンが再構築してたからってことですか?」
でもダンジョンの再構築は数日で終わるから、冒険者達はその間、装備を修理したり、修行したり、休暇としてゆっくりノンビリするもんだってスレイオさんは言ってたんだけどな。
「補足しますと、暫くダンジョンの調査を行う為にランクの低い子供の冒険者の探索が禁止されたのですわ」
「探索が禁止? 何でまた?」
あれ? ダンジョンって人が入らなくなると魔物が大量発生してヤバい事になる筈。
なのに何で入れなくしちゃうの?
「ダンジョン上層部に強力な魔物が出た事が原因です。アレの原因が何だったのかを調べ、上層部がこれまで通り子供が入っても大丈夫か確認する必要があるからと」
ああ、だから子供限定で入るのを禁止されたのか。
そーいやそれについては同じダンジョンをクリアしすぎてダンジョン全体の難易度が変わったのが原因じゃないかってリドターンさんが言ってたっけ。
「じゃあその間子供達はどうなるんですか?」
いくら危険だからと言っても、ダンジョン探索が禁止されてる間はお金も魔物食材も手に入らない。
それじゃあ子供達が飢え死にしちゃうから本末転倒だよ。
「ご安心を。ダンジョンに入れなくても地上で薬草採取や魔物退治をすればよいだけです」
へー、こっちの世界はダンジョンの外にも魔物が居るんだ。
そこら辺ダンジョンの外には魔物が居ないルドラアースとは違うんだね。
あっ、もしかしてこの世界の文明があんまり発展してない理由って、それが原因なのかな?
「ただわたくし達は修行とダンジョン攻略が目的ですから、ダンジョンに潜れない時間が無駄になってしまいます。そこで近場のダンジョンの探索をする事にしたのです」
ああ、それでこの町に来たんだ。
「でも二人が組んで行動してたなんてビックリですね」
正直、会えば喧嘩してたこの二人なら、お前の居るダンジョンになんて行けるか!! とか言って別々のダンジョンに向かってもおかしくなかったのに。
「あー、それはですね……」
と、フレイさんが口ごもる。
「今更何を尻込みしているんですの。本人が目の前に居るのですからさっさと言っておしまいなさいな、その為にあの町を出たんですのよ」
私が目の前にいるから? そりゃまたどういう事?
「そ、そうだな。まさか最初の町で再開できるとは思ってもいなかったが、これも神々の思し召し。この幸運を逃すなと言う事か」
神様の思し召し? はて? 一体何の話?
「アユミ殿」
と、フレイさんが何やら覚悟を決めた表情で私の前に出る。
「あ、はい。何ですか?」
むむむ、フレイさんのこの様子、ただ事ではない予感。
「私を、貴方の……」
私の?
「家臣にしてください!!」
ほう、家臣になりたいか。
なるほど家臣になりたいかぁ……
「って、家臣!? 何で!?」
家臣になりたいって一体どういう事!?
「家臣ってなんですかーっ!?」
ちょっ!? いきなり何言い出してんのこの人!?
「はっ、アユミ殿には幾度となく命を救われました。ならばそのご恩をお返しせねばなりません」
「それが何で家臣になるんですか!?」
「それは勿論、我がジーナモン家の忠誠をアユミ殿に捧げる為です」
そんな重いもん捧げるなぁー!!
「いやいやいや、そんなもの捧げられても困りますって。そもそも私は貴族じゃないんですから!」
「いいえ、アユミ殿の高貴な佇まい、ただその場にいらっしゃるだけで周囲を圧倒するそのカリスマ性。それは貴きお方以外にありますまい」
「無いから! そんなの無いから!」
「え? あるよ」
「リューリ!?」
私が必死で否定してたら、まさかのリューリからある発言が飛んできた。
(だって姫様、カリスマ系のスキルとか貴族系のスキルとか持ってるじゃん。ああいうのって、普通は貴族とか人の上に立つ仕事をする人間でないと取得が難しいスキルだって爺ちゃん達が言ってたよ)
つまりそれで誤解されたって事!?
「そうですわね。そもそもただの平民にアユミ様がお召しになられているような高級なドレスを用意するなどどれだけお金があっても不可能ですから」
更に服も原因でしたかーっ!
これはお婆ちゃん達が原因なんですぅーっ!
ああそうか! 初めて会ったときに跪かれたのはそれが原因か!
「で、でもホントに私は……あっ、そうだ!」
そこで私は起死回生の一手を思い出す。
「私は人間じゃなく妖精ですから、忠誠とか捧げられても人間の貴族社会になんの影響力もないから意味ないですよ!!」
「「「はぁ?」」」
全員から何ってんだこいつって顔されたんですけどぉ……
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