第71話 今明かされる新機能(新型ハードの性能って凄いよね)
リドターンさん達がダンジョンをクリアしてしまった事で、ダンジョンの再構築が始まってしまい、ダンジョン探索が出来なくなってしまった。
こうなるとダンジョンでこっそり寝泊まりする事も出来なくなるので、さてどうしたものかと頭を抱える所だったんだけど、幸いにもそちらは何とかなった。
ダンジョンが攻略された事で再構築から逃げて来た探索者達が居たからだ。
「おいおい、誰だよこんな時にダンジョンクリアしちまった奴はよぉー!」
「素材採取の納期が明日なのにー!」
そう、探索者協会で素材採取の依頼を受けた探索者達が納期前にダンジョンに潜れなくなって悲鳴を上げていたのである。
「おっ、ラッキー。すいませーん、素材いりませんかー」
で、困っている彼等に素材を売り払う事で、私達は当初の予定である金銭確保に成功したのであった。
「という訳でダンジョンクリアにカンパーイ!」
「乾杯!」
ホテルの一室で私達は乾杯の音頭を上げる。
お爺さん達はお酒だけど、私だけ炭酸飲料だ。
「ぷはーっ! 見たこともない酒だったが中々にいける!」
「ええ、これは良い酒ですね。ドワーフの職人の作った高級酒には劣りますが、この出来の酒が誰にでも手に入るというのは素晴らしい事ですよ」
「坊主が酒について語るのはどうなんだ?」
「神に捧げる供物でもあるのですから、我等信徒がご相伴に預かっても神は細かい事言いませんよ」
「「「この生臭坊主」」」
異世界でも生臭坊主って言うんだなぁ。
ちなみに私達は今、市内のホテルに宿泊している。
戸籍の問題があった私だけれど、リドターンさん達保護者が居る事で、家族でダンジョン探索に来た体でホテルに宿泊を試みたのだ。
で、こっちの言葉が分からないリドターンさん達の代わりに、私がチェックイン用紙を描くことにしたのである。
具体的には文字を覚えたばっかりの孫がお爺ちゃんの代わりに書きたがる体で。
お陰でフロントの人達に凄く微笑ましい物を見る目で見られたのは一生の不覚である。
途中免許証か何か住所を証明出来るものを見せてくれと言われてかなり焦ったんだけど、そこはスレイオさんが機転を利かせてくれて、ダンジョンの再構築が始まった際に落としてしまったという事にして、後日国に再発行して貰って改めて見せる事で解決となった。
どうやらこの世界、ダンジョンがある事で証明書の類をダンジョン内で紛失しちゃう事が少なからずあるみたいで、ホテルも多少の融通は利くようになっているのだとか。
うーんありがたい。これなら私も普通にホテルに泊まれたんじゃ……あ、はい。子供は無理ですね。
ちなみに背中から浮いていた羽は頑張って畳んでギリ服の模様に見えるようにして誤魔化した。マジで凄く頑張った。
てな訳で、無事ホテルに泊まる事が出来た私達は、近所のコンビニで買ったご飯で乾杯をしていたのである。
「うーん、屋根のあるホテル最高ー!」
エアコンや風呂、そして何よりトイレがあるからホントありがたいよ。
「うと……うと……」
ああ、何かご飯食べたら眠くなってきた。
「おっと、眠いのならベッドで寝なさい。椅子で眠ると疲れが取れないぞ」
「はーい」
リドターンさんに言われて、私は装備を外すとベッドに倒れ込む。
あー、ふかふかのベッド良いなぁ。隠し部屋にもベッドを持ち込みたいなぁ。
今度良いヤツ買おう。
「あーそうだ、寝る前にログを確認しておかないと」
行きにログのチェックが出来てなかったので、ステータスを呼び出してログを表示する。
するといつも通りログの前半は女神様からのすぐにログは見ろのお説教。
はいはい、この辺はスルーして他には……ええと、神棚にお供え物をしろ。出来ればお肉とお菓子か。
私は神棚を取り出すと、適当にお肉の入ったパックとコンビニスイーツを並べる。
「アユミさん、これは一体?」
「神棚です。女神様からお供えしろって指示があったんで」
「は? 女神様から!?」
はいノルマたっせーい。
ログの続きは……
『知恵の女神です。無事存在進化に成功したようですね。まずはお祝いを。おめでとうございます』
あれ? 出来る女上司風女神様だ。珍しい。
また女神様がなんかやらかしたのかな?
『貴方が進化した事で、ステータスUIの機能を更新しました』
おお!? 何かパワーアップするの!?
『これまでは大神達に傍受される事を警戒して、メッセージを暗号化する必要があり文字数に制限がありました。しかし進化した事で魂の強度が上がりワンランク上のシステムに耐えられるようになったことで大神達のセキュリティをある程度潜り抜ける事が出来るUIを使用できる様になりました』
ふむふむ、私が進化した事でより高性能なステータスを使えるようになったって事か。
『具体的にはメッセージの文字数制限がなくなった事、そしてチャット機能が解放された事です』
文字数制限は分かるけど、チャット機能?
『チャット機能はパーティメンバーとメッセージによる遠隔会話ができる機能です。新たに追加されたチャット欄にパーティの仲間を登録し、相手もこれに同意した場合に使える様になります。ただしお互いが異世界に居る時には使えないので注意してください』
おお、メール機能って訳だね! これは仲間とはぐれた時とかに便利かも!
『最後に。貴方は進化する事で様々な力が使えるようになります。それは戦闘能力だけでなく、ステータスUIなども同様で、これまで人間の魂では耐えられなかった機能が逐次解放されますので、冒険が便利になるでしょう』
おおー、強くなるにつれてどんどん便利になるんだね。
『さらにダンジョンのフロアギミックも解放されます』
「ダンジョンのフロアギミック?」
『これは一度到達した階層の階段まで自由に行き来ができる機能です』
「おおーっ!」
これは凄い機能だよ! 毎回一層から降り直さなくて済むもん!
「急に大声を上げてどうした?」
と、流石に私が大騒ぎしているのを不思議に思ったスレイオさんが酒盛りを中断して私に話しかけてくる。
「えっとですね! ダンジョンのフロアを自由に移動できるようになりました!
「ほう、そうなのか…………なに?」
私の言葉を聞いたスレイオさんが、は? と眉を顰める。
「どういう事だそりゃ?」
するとスレイオさんの様子に何事だと皆が混ざって来たので、私はステータスに解放された機能の事を説明する。
するとお酒でほろ酔いになっていたお爺さん達の表情から一瞬で酔いが飛ぶ。
「ストット、毒消しの魔法を」
「お任せを。『酔い覚まし』!」
ストットさんがスキルを発動させると、お爺さん達からお酒の匂いが消える。
っていうかそんなスキルあったの!? 凄いなスキル。
「ふむ、一度到達したダンジョンの階段に自由に到達できるスキルか。それはとんでもないスキルだな」
いや、別にスキルって訳じゃないんですけどね。
「そのスキルは攻略したダンジョンにも使えるのかの? それとも再構築後は使えぬのか?」
「えっと、ちょっと待ってください」
キュルトさんの問いを確認する為、私はログを再び開く。
『移動機能は各ダンジョンによって個別に記録される為、一つのダンジョンで深く潜っても他のダンジョンには反映されません。そして一度攻略したダンジョンでも、到達済みの階層まで降りる事が出来ます』
私は確認した内容をお爺さん達に応えると、お爺さん達から動揺の声があがる。
「なんと、再構築したダンジョンにも対応するのか!」
「これは凄い機能だな。これなら高難易度ダンジョンにも安心して挑めるぞ!」
そして気が付けば、祝勝会は高難易度ダンジョン探索会議へと移り変わっていた……のだけれど。
「うと……うと……」
お爺さん達の話が丁度いい感じの子守歌になって、私の眠気はマックスに到達しようとしていた。
うん、だって今日はダンジョンをクリアしたりダンジョンをクリアしたりして疲れたからね。
眠くなるのは仕方ないんだ。
しかも知らない高難易度ダンジョンの話とか、夜更かしした次の日の授業で先生の講義を聞くのと同じくらい安眠効果があるから……
おやすみぃ……ぐぅ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます