第2話 チュートリアル=戦闘って割と無茶ぶりでは?(普通死ぬ)
そして私の意識は戻る。
「そうだ、ここはダンジョンなんだ」
再び周囲を見回し、危険が無いか確認する。
よかった、何も動く者は無い。よく考えたらここはダンジョンなんだから、魔物が居て襲われてもおかしくなかったんだよね。
すっかり忘れてたよ。
「ええと、武器武器……」
視線を自分の体に移し、武器になるものは無いかと確認する。
「あっ、あった」
私の腰には、ベルトに固定された剣が装備されていた。
鞘から抜いてみると、剣は時代劇で見る様な刀ほど長くはなく、包丁やナイフよりは長い。
多分これが短剣や小剣って奴なのかな?
「でも私の体には丁度いいかも」
あんまり大きくても使いこなせないしね。
他には左手に盾、胴体に革製? の鎧、腕は小手、脚にも臑当が付いていた。
「おお、ちゃんと冒険者って感じだ!」
ちょっとコスプレ感がするけど、意外とサマになってる気がする。
「でもなんで下の服はワンピースなの? 戦いづらくない?」
うん何故か鎧の下はワンピースだったんだ。
ええと、気を取りなおして、他には……あ、リュックサックを背負ってる。
中身を確認すると、ペットボトルに入った水とビニールパックに入ったパンとコンビニおにぎりが入っていた。
「……遠足かな?」
他に何か入ってないかと確認するも、それ以上の荷物は入っていなかった。
「と、とりあえずすぐに飢え死にする事はないっぽいよね!」
おっかしーなー、漫画とかゲームだとポーションとか回復アイテムくらいあってもよくない?
「あっ、もしかしてこの食べ物と水に回復効果があるとか!?」
リュックの中をもう一度確認すると、水には『ヤマフジの天然水』『ツナマヨおにぎり』『いちごジャムパン』と書かれていた。
これといって変わった説明文はなし、成分表をみても普通に水とか米とか小麦粉だ。
「うん、普通の食べ物だ!!」
なんか駄目な気がしてきた!!
「と、とりあえず安全な場所を探そう! ゲームとかだとモンスターの出ない安全地帯がある筈! それか地上に出る階段!!」
よし、まずは安全の確保! 生き残るには臆病なくらいがいいってどこかの漫画の凄腕兵士が言ってた気がする!
「ギャウ?」
すると通路の向こうにいた緑色の人間っぽいのと目があった。
ええと、緑色だからゴブリン……かな?
ただ、大きさ的におかしい。
見た目はぱっつんぱっつんの人型のぬいぐるみみたいな姿なんだけど、私の視線と同じ高さに相手の目線がある。
まるでお高い巨大ぬいぐるみ、いや着ぐるみのような姿だ。
でもこんな所に着ぐるみが居る筈がない。
もし居るとしたら、緑の恐竜か赤いモップのあいつ等くらいのものだろう。
「ギャウゥゥゥ!!」
それが突然剣を振り上げて突撃してきた。
「うわぁぁぁぁぁっ!!」
相手の雄叫びに我に返った私は、突然の突撃を間一髪回避する。
「ひぇぇぇっ!」
相手の迫力に気圧された私は、思わず逃げ出した。しかし……
「ギャウゥゥゥゥゥ!!」
うわぁぁぁぁ追いかけて来たぁぁぁぁぁ!!
そ、そうだ武器! 武器!
私は小剣を鞘から抜くと、後ろを見ずに後方にブンブンと剣を振る。
「ギャウ!?」
すると何か手ごたえの様なものと共にゴブリンの悲鳴が聞こえて来た。
「当たった!?」
振り返ると、ゴブリンの腕から青色の血が流れていた。
「って血ぃーっ!?」
だよね! 攻撃が当たったらそりゃケガするよね!!
「ごごごごめんなさい! 大丈夫!?」
私は慌ててゴブリンに近寄る。
「ぎゃぉぉぉぉっ!!」
けれど、ゴブリンは怒りの雄叫びをあげて私に剣を振りかぶって来た。
「ひっ!?」
間一髪避ける事が出来た。
ううん、私の攻撃が当たっていたから、ゴブリンの攻撃が逸れたんだ。
でも、ゴブリンの振るった剣の風がすぐ間近で感じられた。
ヒュッっていう鋭い音が聞こえた。
足元には、ゴブリンの剣で砕かれて破片になった床石の欠片が散らばっている。
「っ!?」
もし今のが当たっていたら……私はただじゃすまなかっただろう。
「っ……!!」
咄嗟に剣を構えてゴブリンを威嚇する。
ヤバイ、見た目はぬいぐるみみたいだけど、間違いなくこっちを殺しに来てる!
戦わないと、私が殺される!!
「で、でも……」
見た目がぬいぐるみみたいでも、相手はちゃんと血が流れる生き物だ。
それを倒すって事は、相手を殺すってこと……
「で、出来るの?」
私に生き物を殺せるのか……そりゃ虫とかを殺した事はあるよ。でもそれは小さな蚊とか、殺虫剤を使ったりとかで、もっと大きな生き物を殺した事なんてない。
「ギャググググッ」
ゴブリンの唸り声に我に返る。
危なかった。戦いの最中に考え事するとか死ぬ気か私。
ゴブリンが私の剣に警戒してなかったら今頃殺されてたよ。
「ふーっ、ふーっ」
落ち着け、とにかく戦うんだ。
殺すかどうかは後で考えればいい。
とにかく今は相手を殺さない程度にダメージを与えて反撃できない様にしよう。
「……っ、よし」
殺さない様に戦う、そう決めた事で少しは気が楽になってきた。
うん、戦うからって必ず殺さなくてもいいんだもんね。
私はゴブリンの動きに警戒しつつ、間合いをはかる。
私の剣はゴブリンの剣よりも短い。
でもゴブリンは腕を怪我しているから、チャンスはある。
攻撃を空振りさせて、その隙にゴブリンを攻撃。出来るなら足を攻撃して私を追えなくしたい。
よし、攻撃するのは足!
「よーし! いくぞー!」
「ギャウ!?」
私が気合を入れた事で、ゴブリンが警戒の声をあげる。
まずは相手に空振りさせる為に剣を振って攻撃を誘う!
当てるんじゃなくてすぐに避けれるように動く!!
「ギャオオ!!」
私が攻撃をすると、ゴブリンはその攻撃が当てる気の無い誘いである事にも気付かず、脚を踏み出して剣を振るってくる。
「っ!」
私はそれを避けると、ゴブリンの足に攻撃した。
「くらえー!」
狙うのは無理なく短剣が届く位置。
つまり太ももだ!
「ギャウウッ!!」
私の剣がゴブリンの太ももに見事命中し、ブシューッと勢いよく青い血が噴き出す。
「キャァァァァッ!」
生理的嫌悪感から血を被りたくなくて慌てて後ろに飛ぶ。
あわわ、本気で攻撃するとあんなに沢山血が出るんだ……
思わずゴブリンを心配してしまったけれど、なんとか踏みとどまる。
またうっかり近づいて今度こそ攻撃を喰らったら笑い話にもならない。
私は気合を込めてその場に留まると、ゴブリンの様子を見る。
動けなくなったのか、それともまだ私を追いかけられる程度の攻撃なのか。
「グ、ギャギャギャァー!!」
「まだ駄目なのーっ!?」
あれだけの血を噴き出したというのに、ゴブリンは私に襲い掛かって来た。
けれど幸いにも足の怪我はしっかりダメージを与えていたらしく、ゴブリンの攻撃はふらついたものとなり、私は確実に回避する事が出来た。
「だったらもう一撃!!」
私は再びゴブリンの太ももに攻撃を加える。
同じ場所に、今度はもっとしっかりと攻撃だ!!
「ギャオォォォォッ!!」
ゴブリンが悲鳴をあげると共に、私は後ろに下がる。
今度こそまともに動けなくなった筈!
「グォォォ……バタッ」
突然、ゴブリンが倒れたと思うと、ピクリとも動かなくなった。
「え?」
あ、あれ? 急にどうしたの? 何で倒れちゃったの?
私は恐る恐る小剣の先でゴブリンをつつく。
けれどゴブリンからは一切の反応が無かった。
まるで死んでしまったかのように。
「……っていうか、もしかして、本当に……死んだ?」
そう思った瞬間、体中の血が氷点下まで下がったような感覚に陥る。
え? 嘘、ホントに死んだ?
「わ、私が……こ、殺し……」
『レベルアップしました。▼』
その時だった。突然目の前に文字が浮かび上がったのだ。
「……え?」
突然の事に、思考が停止する。
レベルが上がった?
何それ、ゲーム?
そして文章の最後に、点滅するマーク。
「ええと、これを押せって事?」
※※※※
Lv1→2
体力3→4
魔力3
筋力3→4
敏捷力3
器用さ3→4
知力3
直感3→4
隠蔽3
回復力3
幸運3
▼
矢印に触れると、こんな文章が表示された。
え? なになに? ホントにゲームみたいな感じなんですけど!?
さっぱり状況が分からないままに、私は再び点滅しているマークに触れる。
『おめでとう! 魔物を倒してレベルアップましたよ! 無事勝てて何よりです▼』
そしたら今度は妙にフレンドリーな文章が現れる。
え? ホント何が起こってるの?
とにかく少しでも情報が欲しくて、私は矢印に触れる。
『話の続きになりますが、貴方は大神達の争いに巻き込まれた事で、粉々に砕けた魂に大神▼』
「女神様の言ってた話の続きって、もしかしてこれ!?」
つまり女神様からのメール!?
私は続きを読む為に矢印に触れる。
けれど、私が触れた瞬間に文章はふっと消えてしまった。
「え!? 何で!?」
ちょっ、どういう事!? まだ話の続きでしょ!?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます