第51話 新しい隣人♪

寒の戻りが目まぐるしいこの季節…

「タッくん引っ越しがあってるし」

日曜の朝…

珍しく華恋が朝から服を着ている…

じゃなくて!

珍しく華恋が休日だったからか、明日がゴミの回収日とあって二人仲良く指定置き場へゴミを捨てに行った時の事である。

エレベーターから降りると、丁度引越便のトラックがエントランスの前に止まり、荷物を降ろす準備をし始めていた。

「みたいだね…でも確か空室は自分達が以前住んでた部屋だけの筈だから…」

「じゃ〜あの部屋に引っ越しじゃん♪」

「そうだと思うよ」

二人はそんな事を話しなから、その時はトラックの前を何気に通り過ぎて行ったのだが…


「あ、課長!おはようございま〜す♪」

ゴミを捨てに行った帰り、二人で手を繋いで戻っていると、向こうから太郎が見知った顔が手を振りながら叫んでいた。

「え!おおとりさん…じゃ〜引っ越ししてるのって…君?」

そう…

あの諸星の後輩で新入社員の彼女だ。

こんな肌寒い日なのに黒のタンクトップにブルーのショーパン、ねじり鉢巻きが妙に似合っている(汗)

流石体育大卒というか諸星の後輩というか、結構彼とキャラが被っているな〜と感じてしまう太郎。

空手と柔道の有段者という事は置いといて、これでお調子者でパチンコ好きなら血縁者としか思えない(笑)


「ハイ♪鬼無里本部長の御紹介でこちらを格安で借りれましたから♡」

鳳は寒さを感じていないのか、薄っすらと汗までかきながら二人の元へ駆け寄ると、深々と頭を下げ挨拶をしてきた。

その姿はまるでアスリートである。

走る度に大胸筋(どう見てもおっπには見えない)が筋肉でしっかりと揺れずに留まっているし、太腿や肩から二の腕にかけての筋肉がこれでもかと主張している。

汗で張り付いているタンクトップも、見事に割れている腹筋を型どっていた。


「…会社の人?」

すると…

なんだろう?

珍しく華恋が人前で警戒する様に太郎の隣にピタッとくっつくと、太郎にそう尋ねてきた。

「ハイ、華恋さん紹介しますね、彼女は今年入った新人の鳳竜美さんです」

何かを察したのか?

当たり障りの無い紹介をする太郎。

しかし…

「あ、課長の娘さんですか?鳳です!よろしくお願いします♪」

「…違うし…奥さんだもん…」

『ヤバい!』

そう!

鳳のその勘違いは今一番しちゃいけない勘違いだ!

口には出さないが、華恋は奥さんに見られないのを何気に気にしていた。

だからなのか、最近少し背伸びした様な服のコーディネートが多くなっている。

おそらくそれはこれが原因なのだろう…


「と言う事で彼女は妻の華恋、よろしく」

慌ててフォローに入る太郎。

「えーー!!勘違いしてスミマセン!!あんまり若くて美人さんだから誤解してました!!」

「美人さん?タッくんそうなん?」

その鳳のセリフにキョトンとして聞き直す華恋。

「自覚…無いんだね(汗)」

「言われた事無いし」

『嘘だろう…』

どうやらそうらしい…

多少童顔ではあるものの、誰がどう見たって華恋は美人だと思うが、学生の頃は一度もそんな感じで同性からも異性からも評価してもらった事が無かった。

どちらかと言うとあまり良いイメージで見られた事が無い。

それでも《我が道を行く》的な感じで自分のこだわりを貫いてきたのだろう。

だからなのか?

鳳からそう言われて顔を真っ赤にしていた。

ちなみに後から華恋が言っていたのだが…

《綺麗》と《美人》は違うらしい。


だから…

「鳳さ〜ん、家具の配置の指示お願いしま〜す」

「あ、スミマセ〜ン直ぐ行きま〜す!じゃ〜バタバタしますがここで失礼します」

「一人で引っ越し?」

「いえ、兄と妹が手伝ってくれてますから♪それじゃ失礼します」

引っ越し業者から催促されその場から立ち去る鳳の後ろ姿を見送りながら…

「すっごい元気でマッチョな人だし…」

「だって体育大卒だからね」

それは関係無いと思うが…

「…ねぇねぇ〜彼女がタッちゃん?」

「そ、そうだけど…」

「何気に良い人〜♡」

「へ?」

「美人さんだって♡あ〜タッちゃんとは仲良くなれるかも〜♫」

この反応である(笑)

余程嬉しかったのだろう。

その後も終始上機嫌だった華恋は、その調子のまま夜の営みも激しさを増し、ついに未知の世界の扉迄開くのであった(笑)

※どんな扉なのかはご想像にお任せします♡


『…華恋さん…チョロいよ(汗)』

太郎よ…

最中にそれを彼女には言わない様に…



…続く…


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