第50話 研修開始
寒暖の差が激しい今月…
猫丸産業では今日からいよいよ新入社員の実務研修が始まった。
以前話があった様に、今年は太郎率いる第二営業部がその指導にあたるのだが、総勢六名のその新人の中に…
「
なんだかやたら元気な新人がいた。
それに背が高い。
太郎と比べても15cm以上高いだろう。
下手したら20cmあるかもしれない。
しかも服の上から見ても体格が良いのが解る。
そんな彼女の自己紹介の際…
「マカ大卒!?俺と一緒じゃん♫」
「そういえばそうだな諸星、では彼女の指導員は自分にしてもらおうかな」
真っ先に反応したのは諸星だった。
同じ大学卒という事でだろう。
だからなのか?
太郎から彼女の指導を任され嬉しそうにしていた。
ちなみに諸星の趣味はボルダリングとパチンコである(笑)
筋トレ趣味の彼女とは身体を動かすという部分で、その辺気が合うかもしれない。
「先輩!よろしくお願いします♪」
「諸星〜変な事は教えるなよ〜(笑)」
そんな二人に笑いながら釘を刺す早田。
だが第二営業部のムードメーカーである諸星の性格を知っているからこその、そんなセリフなのだろう。
「え〜早田主任〜人聞きが悪いっすよ〜(汗)」
それが解っているから諸星も大笑いしながら頭を掻いていた。
という事で残り五名は、早田が二名、剛と東が各一名ずつ、営業の事務方希望の女性を北都が受け持つ事になった。
ちなみにオフレコで太郎の耳に入った情報では、鬼無里本部長曰く、この中の二名が第二営業部に配属されるらしい。
つまり彼のお眼鏡にかなったのが、この六名という事なのであるが、残りの新入社員は、総務部や経理部、マーケティング事業部やオンライン事業部、海外事業部や不動産関連事業部等、第二営業部以外で実務研修に入ったらしい。
ちなみに第一営業部とコンサルタント事業部は、今回実務研修指導業務は無いらしい。
おそらくこの二つの部署は、引き抜きや転職者が配属される事が多いからそのせいだろう。
それと、これは太郎の思惑なのだが…
いずれ近いうちに第二営業部は自分の後任に早田をと太郎は思っていた。
だから自分が何らかの理由でいなくなっても大丈夫な様に今から人材を育成したいと常々考えていたのだ。
よしんばそれが叶わなくて、早田が別の形で出世してこの第二営業部から離れても回せる様にしなければとも考えていた。
それだけ彼には実力があるからだ。
もちろん《逆に自分が別の部署に回されるかも…》という懸念もある。
「さぁ〜皆!今日も一日気合入れようか♪」
「ハイ!!✕10」
太郎の号令で始まる今日の第二営業部。
気合一発早速各々仕事に赴く早田達社員一同…
ちなみに太郎は指導に当たる皆の負担を少しでも減らそうと、彼らの仕事を自分に回した。
そしてこの書類の山を黙々とこなすのであった。
そしてその日の夜…
「タッくん今日も美味しい〜し♡」
既におかわり状態の華恋。
満面の笑顔とはこの事を言うのかもしれない。
実際仕事が忙しいにも関わらず帰ってきたら嬉々として料理を作る太郎には、この笑顔が疲れを癒やす元気の源となっていた。
しかも料理を作る事でストレス発散にもなっている。
そんな太郎だが、華恋と出会う前は料理の《りの字》もしなかった。
何故なら自分一人の為に作る料理なんて味気ないと痛感していたからだ。
だから今は色んな意味で幸せだったりする。
「ほら、クリームシチュー好きって言ってたからロールキャベツと合わせてみたけどさ、口にあって良かったよ」
「何時もありがとうだし♡」
そんな華恋も自分が苦手な事を率先してやってくれる太郎に心底感謝していた。
「そう言えば〜今日から新人研修だったでしょ?」
「うん、そうだけど…」
「どうだったん?」
「ん〜どうって言われてもな…あ!一人いた」
「ん?」
「諸星と同じ大学の卒業生なんだけどさ、あだ名がなんと《タッちゃん》なんだ♪」
何気にされた華恋からの質問に、考え無しにそんな答えをする太郎…
するとやっぱり…
「…《ちゃん》って言う事は…女の子?」
華恋に対する配慮が足らない太郎(汗)
当然むくれ始める華恋嬢(笑)
「え?うん…そうだけど…どうして?」
「ちょっとジェラシー…」
そりゃそうだろう…
部下とは言え他所の…
しかも自分と共通点なんかがある女の事をここで話題にするなんて…
いい加減女心がまるで解っていない太郎。
かくして今夜は華恋が機嫌を治すまでかなり頑張った太郎なのであった♡
…続く…
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