〜恋濃〜太郎(タロウ)さんと華恋(ハナコ)さんはアッチ向いて恋♡

第48話 春の七草と次の日曜日…

それはある月曜の朝…

「これが七草粥なん？」

「ん？華恋さんは初めてなんだ」

お互い出勤前のひと時。

何時もの様に朝食の準備を済ませた太郎。

今日は焼き鮭とお漬物、それとお粥を用意した。

香ばしい魚の香りと、ほのかに香る出汁と卵のハーモニーを奏でるお粥。

そんな朝食の香りに誘われてジャストタイミングで現れた華恋は、食卓に並ぶ初めての七草粥を好奇心満々な目をして覗いていた。

「うん、ウワサには聞いた事あるけど…食べるのは初めてだし」

「そうなんだ♪七草はね早春にいち早く芽吹くから、邪気を払うっていわれててね、元々は今年１年間の無病息災を祈る為に食べるのが始まりらしいよ」

それに朝粥は身体にも良い。

特に寒い日は温かいおかゆを朝に取ることで血行が促進されるし、皮膚の色を明るくし肌の状態を健康に保つ効果も期待できるらしい。

「流石タッくん物知り〜♪」

何気に年の功とは言わない所に愛を感じる(笑)

「今朝はこれを出汁と卵で閉じたお粥ご飯でいい？」

「勿論ハイなだし♡」

満面の笑顔でそう答える華恋は直ぐにテーブル席に着くと、太郎はテーブルの中央に置いた土鍋からお粥をよそい、彼女に差し出すのだった。

その日の午後…

「ねぇねぇ華恋〜最近何気に肌艶良くない？」

午前中のブティックHANAKO…

この時間帯のピークも過ぎ、交代で昼食を終えた華恋・凛夜・茅野・麻音の四人は各自店内の掃除や商品の陳列・整理整頓、入荷した商品のレイアウト等を手分けしてこなしていた。

今日は夕方からアルバイトが出勤する為、その前に済ましておきたかったのだ。

そんな作業の最中、ふと凛夜が華恋に向かってそう尋ねてきた。

「そう？あ〜言われてみれば…確かに最近コスメのノリが良いし♪」

確かにそうらしい。

本人自体あまり気にしてはいなかったが、言われてみれば思い当たる節があったみたいだ。

そんな華恋…

見た目の派手さもさることながら、醸し出す雰囲気？と言うかオーラに男女を問わず人を引き付ける何かが溢れていた。

それに最近接客の際の表情も含めプライベートな会話でも、なんだか雰囲気が柔らかくなっている。

そのせいかお客様の受けもすこぶる良いのだ。

「それって〜あっちの方が充実してるからかな(笑)」

「違うし！イヤ…違わないかも♡」

茅野の変なツッコミに赤くなりながら否定とも肯定とも付かない返答をする華恋。

まぁ〜詳細はあえて詳しく記さないが、太郎は頑張って彼女を満足させているようである(笑)

ちなみにウワサでは色々と新しいプレイにも二人で果敢にチャレンジしているらしい(汗)

「あら〜ご馳走様♪」

麻音のそんな返しに更に赤くなる華恋。

その時ふと何かを思い立った。

「多分…マジで食生活が良くなったからかも」

「？✕3」

確かにそうかも知れないが、他の皆は？しか出なかった。

その理由は…

「夜のポテチ減ったし、ジャンクもあんまし食べなくなったん」

「え、何それ…もしかしてコンビニのお菓子の爆買いも？何時も病院にアフターピルを処方してもらうついでに寄ってたじゃん」

「うん♡今はピルじゃなくて通販でゴムまとめ買いしてるけど、あんまり使ってないし〜♪」

それには理由があった。

実は太郎が調べたのだ。

一緒に暮らし始めて解ったのだが、時々コンディションを崩す華恋。

特にピルを服用した後である。

症状としては軽い吐き気や腹部の痛み…

それに頭痛や食欲不振だ。

当初その薬が原因じゃないかと指摘した太郎は、医者からそんな症状も出る時があると注意されたと彼女から聞かされ、試しに服用を辞めたのだった。

結果、予想通りコンディションも改善され今に至るのである。

まぁ〜籍は入れているから子供が出来ても構わないのだが、これも二人で色々と話し合っている様だ。

それだけではない。

「確かに旦那さんの手料理美味いもんな〜」

茅野の言う通り、それも理由の一つだろう。

食生活が劇的に改善されている。

「でしょう〜♪それに近くの商店街にある《丸ちゃん(惣菜屋さん)》のお惣菜が神がかりに美味しいからそっちばかり食べてるん♡」

それは太郎と華恋お気に入りの惣菜屋さんの一つである。

二代目に当たる今のオーナーが揚げ油をオリジナルブレンドに変えてから更に美味しくなったのだ。

「あ〜あのメンチカツ♡確かに美味しいわね♪」

麻音もその意見には同意らしい。

この間あの商店街にある《紐釦屋はいからさん》に華恋に誘われて皆で行った時、帰りに買って夕食で食べたのだが、一緒に食べた家族からも大絶賛だったのだった。

凛夜も茅野も同じである。

特に茅野の母親は今では常連さんだ(笑)

するとそこで突然、思い出した様に華恋が話題を変えてきた。

「そういえば話は変わるけど《アヴァンギャルド・コレクション》は見に行く？」

「勿論♫《WAKANA》のブランドも出るから行くわよ」

それは次の日曜日に開催されるファッション・ショーの事である。

何でも今回はあの冴子が初参加するらしく、しかも新作を発表すると言う事で業界内でも話題になっていた。

「茅野と麻音は？』

「行くよ」

「私も♫」

凛夜の問いかけにそう答える二人。

すると…

「じゃ〜タッくんが車出すから皆で一緒に行こう♡」

「え、旦那さん行くの？」

「勉強だって♡こっちの業界の事殆ど知らないからってママにチケット頼んでたし」

そう言う事だ…

今でも冴子の言葉を真摯に受け止め、この業界の事を知ろうとしているらしい。

勿論全員分である♪

「成程…じゃ〜一緒に行こうか」

「賛成✕3」

かくして当日は皆揃ってアバンギャルド・コレクションを見に行く事になったのだった。

…続く…