第47話 今年の二人は…

正月休みも終わりを告げ、皆体重増加を気にしつつ出社。

お得意先や関連会社への新年の挨拶、会社の新年会も無事に済み、気付けば日常の生活時間へつつがなく戻っていった今日この頃…

それは突然だが必然的にやってきた。


断っておくが妊娠では無い。

ただアレだけ激しくほぼ毎晩濃厚にこなしていればできない方がおかしいのだが…

まぁ〜こればかりは授かりものである以上もう少し待とう。

※華恋さんハンカチ噛みながら枠外で泣くでない!


だったらそのやってきたのが何か?

それは…

「新入社員の研修ですか?」

お昼休みが終了すると直ぐ、本部長の部屋に呼ばれた太郎は、そこで今回の新人研修の件を依頼された。

男女合わせて総勢六名…

実際の採用は三十名程らしいが、今回も座学研修の後各部署ごとに振り分けて現場研修となっている。

「今年のモーターショーは第一営業部が名乗りを挙げましたので、そちらがメインで担当する事になりましたから、営業の現場研修の方は第二営業部に任せたいと思いまして」

と言う鬼無里本部長の微笑みが必要以上に輝いていた。

《何かあるな》と感じた太郎は、ちょっとカマをかけてみようと思い付き…

「という事は、こちらにも春から新人が配属される予定なんですね」

「まぁ〜あくまでも予定という事で」

「……何かありますね?」

「それは課長の想像に任せますよ♪只〜面接した私が言うのもなんですが、今年は面白い新人が揃っているかな(笑)」

どうやら正解らしい(汗)

絶対に何かあるのだろう…

何故ならここで鬼無里本部長の言う《面白い》は、裏を返せば《=社長好みのキャラ》と言う事だからだ。

そういう訳で今回の件、おそらく猫丸社長も一枚噛んでるのは確かな様だ。


「…了解しました、こちらでお引き受けいたします…が、研修メニューはこちらで用意させて頂きますから」

「勿論その辺は課長に任せるよ♪じゃヨロシク〜」

それが解りつつその要請を受け入れた太郎。

鬼無里本部長の後ろ姿を見送りながら…

『さてと…どんなキャラが来るんだろう?』

な〜んて事を心の中で考えていたのだった。


一方その頃…

華恋達が務めるブティックHANAKOでは…

「経営管理の勉強?✕4」

店長室から出てきた冴子は、華恋達をカウンターまで呼ぶと可愛いらしいイラストが描いてあるパンフレットを人数分目の前に広げた。


【経営管理通信講座】

そのパンフレットにはそう大きく書かれていた。

「そうよ♪そろそろ始めてもいいんじゃない?」

「でもな〜今更勉強もな〜」

「あら茅野、やって損は無いし特に貴女の場合むしろご家族にも喜ばれるんじゃないかしら?」

そう、ご存知の通り茅野の実家は中華料理店を営んでいる。

だから今後何かあった時には実家の手助けにもなるだろう。

「通信教育がメインなのですね」

真っ先にパンフレットを手に取り中身を確認する凛夜は、結構この講座に興味がある様だ。

彼女も色々と思う事があるのかもしれない。

「そう♪四月開講で空いた時間で取り組めるし、解らない所はオンラインでの受講も可能だから取り組み易いわよ」

「費用はおいくら位ですの?」

「あ〜その辺は会社が持つから気にしないで♡特別講習とかあってもこっちに請求書回してくれれば良いから♪」

麻音のその質問にあっけらかんとそう応える冴子。

どうやら従業員のスキルアップの名目で経費として落とすらしい。

確かに今後どんな形にしろ、独立とか支店を増やし経営等を任せる時には、店長自体こういった知識は必要となるし、あって損は無い。

華恋を含め親御さんから預かっている凛夜達の為にもとの経営者としての配慮だろう。

冴子はそう考えこの通信講座を勧めたのだった。


「太っ腹だし〜♪」

「華恋…貴女何処見て言ってんのよ!」

場が和むそのやり取りにアルバイト社員も含め思わず吹き出してしまった(笑)

ちなみに確かにこの数日で増えているのだ…

そう…

アレとアレが…(笑)


「そうですね…将来的にもこれから先必要となる勉強だし、通信教育ならファッション関係の勉強と平行して出来る上に、自分のペースで取り組めるなら気が楽かな♪」

凛夜の言葉に華恋達全員が頷き賛同した。

「決まりね♡じゃ〜こっちで四名分申し込んどくわね」

冴子はそう言うとそそくさと店長室まで戻っていた。

その後ろ姿を見送りながら黙って頭を下げる華恋ら四人。


かくして太郎は新入社員の教育を…

華恋達はファッションの勉強の他に本格的に経営の勉強を…

今年も色々ありそうなそんな太郎と華恋であった。



…続く…







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