第21話 覚悟の行方

翌日、気まず〜い朝を迎える太郎と華恋…

確かに一番盛り上がる筈の蜜月な夜を、各々が各々の場所(太郎はソファー、華恋はドレッサー)で寝過ごしていればそうなるだろう(笑)

だからなのか…

「お、おはよう…(照)」

「オ、オハヨウ タックン…(照)」

ほぼ同時に起きた二人は、洗面所で顔を合わせた途端別の意味で顔を真っ赤にしていた。

まぁ〜この二人らしいと言えばらしいのだが…


その後…

そんな気恥ずかしさのまま簡単な朝食を済ませると、太郎は実家へ…

華恋は冴子へと電話かけ、事の経緯とプロポーズの件を報告した。


…すると…


【太郎side】


「あ、オカン?」

「なんね太郎、こんな朝っぱらから電話してきて」

「いや、ちょっとね今度結婚する事にしたからその報告…」

「ちょい待ちなんせ!アンタ…それウソだったらスマキにして田んぼのあぜ道に転がすからね」

「何それ、何処ぞのヤンキーかいオカンは(汗)」

「ハハハハ♪それよりも太郎…相手はれいの同棲相手だろ?歳は幾つなんだい?」

「うん、それと…歳は19歳になるん」

「………アンタ…一応信用はしとるけど…犯罪性は無いんやろうね?」

「あるわけなかろうもん!だいたい紗和子からその辺の事は聞いとらんとね!!」

「そんなもん聞いとる訳ないが!なんや、紗和子と一つ違いなんかい!!」

「そうたい!今年の三月に卒業していま働いとらっしゃるわ!!」

「おいロリコン!その辺の詳しかこつはこっちに来てから聞いちゃるから、今度二人で実家に顔出しいや」

「勿論そのつもりやから、日にちが決まり次第連絡するきに」

「おうさ、待っとるけんの」

以上…

え〜ここまでの会話で解ると思うが…

太郎の母親は、どちらかというと華恋側の属性を持っているのが解ると思う(笑)


参考までに太郎の実家の家族構成は…

実姉:稲代(イヨ)38歳  

義兄:博己(ヒロミ)38歳

その娘:紗和子(サワコ)17歳  

父:一郎(イチロウ)68歳     

母:美代子(ミヨコ)63歳   

祖父:一夫(カズオ)88歳   

祖母:美美(ミミ)83歳 

それと農協職員である婿養子の博己と受験生の紗和子以外、全員農業従事者だったりする♪


【華恋side】


「あ、ママ今話せる?」

「あら華恋、折角太郎さんと一緒のお休みなのにどうしたの?」

「それがね…それが…その……昨夜タッくんに告られたし…」

「あら良かったじゃない♪それで華恋…勿論付き合うんでしょ?」

「…あのね…その…それが付き合うとかでなくて…」

「なによ…何だか歯切れが悪いわね…OKしなかったの?」

「そんなんちゃんとOKしたし!只…それってプロポーズの方で…」

「………え?」

「だから!タッくんから結婚しようって告られたんだし♡そしてOKしたし(恥)」

「………」

「ママ?」

「華恋…《喫茶・夜魅》は解るわよね、今から二人でそこに来なさい、詳しい話はそこで聞くわ」

「ウン…」

以上…

え〜ここまでの会話で解ると思うが…

冴子は通話を切った後、心の中で『マジか〜〜』と、ため息交じりに叫びながら天を仰いでいたのは手に取るように解ると思う(笑)

※ちなみに某ドラマの主人公風なイントネーションで叫んでます(笑)



こうして各々携帯で結婚の報告をした後、冴子が指定した喫茶店まで足を運んだ太郎と華恋…

そこは彼女が経営しているファッション・ショップ【WAKANA】の本社が入っているオフィスビルの近くにあった。

都会では珍しく何の植物か解らない蔓(つる)が二階建て煉瓦造りの店を覆い尽くす、結構ノスタルジックな雰囲気をかもし出した喫茶店だ。

あきらかに周辺の建物と一線を画しているからか、とても目立つ建物でもある。

華恋曰く、怖い位美人のマスターとオーナーが居るらしい。


「菜綱さ〜ん♪ママ来てる?」

「あら華恋ちゃんいらっしゃい♪冴子さんならさっきテーブル席の予約をしたいって電話があったばかりよ」

華恋が表のドアを開けると、耳ごこちの良い鈴の音と共に妖艶で濡れた様な声の主が二人を出迎えた。

太郎がその声の主に目を向けると、確かにそこには華恋の言う通り、アンティークドールの様な妖艶な美しさと、油断すると吸い込まれそうになる瞳を持つ女性が微笑みながら二人をみつめていた。

「あ、だったら先に待たせてもらうね♡」

「じゃ〜そこの奥の席で良いかしら」

華恋から菜綱と呼ばれた彼女は、ゆっくりと奥のテーブルへと二人を促すと、おしぼりとお冷を持って近づいてきた。

「うん♡タッくんあっちだって♪」

「あら、そちらの方…もしかして華恋さんの《良い人》かしら?」

すると菜綱は太郎に目線を送るとそんな事を華恋に尋ねた。

「あ、始めまして山田太郎と言います」

「菜綱さん菜綱さん、良い人じゃなくてもうすぐダーリンになる人なの♡」

「まぁ〜〜♡そうなのね♪♪」

それを聞いた途端、彼女は少女のそれの様に驚くと、改めて太郎へ目線を向け直した。

「あの…よろしくお願いします(照)」

「ハイ、こちらこそ♪」

そうやって挨拶を交わすと、菜綱は足早にカウンターに向い誰かにメールを打ち始めた。

『ねぇねぇ凄い美人さんっしょ♡』

『確かに怖い位綺麗な人だね…』

二人はテーブル席に並んで座ると、そんなヒソヒソ話をした。


それから約十数分後…

神妙な面持ちをした冴子が喫茶店を訪れると、黙って二人の向い側の席に座った。


怒っているとも喜んでいるともつかない冴子のその表情の…

一瞬流れる沈黙の中、先に口を開いたのは意外にも冴子だった。

「それで〜アナタ達…特に太郎さん、どういう経緯でそんな一足飛びな結論に至ったのかしら?もしかして肉体関係を持ったから?」

その口調はいたって冷静である。

表面上は…


「違います!」

「違うしー!」

「え、まさかまだシテ無いの?私はてっきりそれでだと思ってたわ(驚)」

それは冴子にとって予想外の返答だったのだろう。

驚き方が尋常ではない。

「誤解するなし!確かに見た事あるけど、まだシテないし!ていうか、どんなに迫ってもタッくんノッてこないもん(涙)」

…見た事あるんだ…

彼女の涙よりも何処で見たのかの方が凄く気になる太郎(笑)

何故なら彼は、入浴中も華恋が実力行使に出ないように細心の注意を払っていたからだ。


「あらあら可哀想に…」

「…(大泣き)…」

「太郎さん!貴方うちの娘に何か不満でもあるの!」「いや、そうじゃなくてですね…」

段々と…

それでいて確実に話しの方向が違う所に向かっているのが解る太郎は、どう軌道修正をしようかと冷や汗を流し始めた。

「それじゃどうしてこんな展開になったのか説明してもらおうかしら!!」

それはおそらく太郎が一番聞きたい事だと思う(汗)

大体ここに来たのは冴子の指示だったし、実際結婚の意志を冴子に伝える為に来た筈である。


「とにかく落ち着いて下さい冴子さん!ノルノラナイはこの際置いといて、結婚については今から順を追って話しますから!」

そう冴子をなだめながら、太郎は一人冷静に事の経緯と、間に自分の想いを挟みながら順を追って話し始めた。

時間をかけて出来る限り詳しくだ…

冴子は瞼を閉じ…

それを黙って聞き…

華恋は…

そんな太郎の真剣な想いを赤面しながら聞いていた。


そして…

「…解ったわ…華恋、最後に尋ねるけど、覚悟は…してるわね」

太郎の話しが終わっても暫く腕を組んで静かに思いにふけっていた冴子は、ふと華恋の方を向くとゆっくりとそう彼女に尋ねた。

「ハイ!」

対して何時にもまして真剣にそう答える華恋…


しかし…

「華恋…今までアカの他人だった二人が一緒になるって、綺麗事だけじゃ済まされない事が山のように待ち受けているのよ…それに太郎さんには失礼だけど、彼が貴女よりも先に死ぬ確率は凄く高いわ…仕事も…子供が出来たら両立は大変よ…結婚生活だって長くなればなる程、色んな事で不満やストレスが貯まってくるし、時には相手を憎む事だって出てくる…それが原因で擦れ違って…段々夫婦の溝が大きくなって…挙句の果てに離婚なんて事にもならないとは限らないわ…」

「………」

「私や涼が見る限り…まぉ〜年齢的な部分もあるでしょうけど、その辺の事は太郎さん自体充分解った上で申し込んでるみたいだけど…問題は貴女よ…華恋…今までの様な《ごっこ》じゃ済まされないのよ…だからもう一度聞くけど…覚悟はしてるわね?」

おそらく華恋に対して始めて見せる…

人として…

女として…

母として…

これ以上ない真剣な顔…

瞬きもせず華恋を見つめるその表情は、太郎を含め誰も寄せ付けようとしない冴子自身の覚悟の現れ…


そしてその問いと表情を正面から受ける様に凝視する華恋…

彼女のその表情もまた、冴子でさえ後にも先にも見た事のない程真剣な面持ちだ。

「…上手く言えないけど…今からそんなんでビビってたら一生後悔するし…だから何かあっても逃げないし!精一杯努力だってするってママにもタッくんにも約束するし!」

「華恋さん…」

「…まぁ〜取り敢えず答えとしては及第点かしらね〜♪華恋…貴女がここで安易に《ハイ》なんて一言で済ませてたらぶっ飛ばしてたわよ(笑)」

破顔一笑とはこの事だろう…

華恋のその真剣な面持ちと真っ直ぐなセリフに、冴子は本気で安堵感をおぼえたのか、笑みをこぼしながらそう話した。

太郎も何も言わず優しく微笑みながら、華恋を見つめていた。

すると冴子は…

「太郎さん…うちの娘をどうぞよろしくお願いします♪それと華恋…結婚おめでとう♡」

改めて姿勢を正すと、深々と二人に頭を下げた。

「ウゥ…ママ〜ありが……あれ?」

その姿と言葉に大粒の涙を浮かべる華恋…


…何だけど…


「え〜〜話やねぇ〜〜(大泣き)」

「ほら、朔夜サクヤさんが泣いてどうするんですか?」

え〜と…

説明するとしようかな…


カウンター席の奥で菜綱に支えられながら渡されたティッシュ箱の中身を、それはそれは大量に引っこ抜きながら鼻をかみ大泣きするこの女性…

華恋と同じ銀髪で長身、スタイルや容姿はモデル並なのだが、ちょっぴり2つの胸の膨らみだけか慎ましやかなその女性…

彼女の名は朔夜…

知る人ぞ知るこの店の二階に住むオーナーである(汗)


実は彼女…

菜綱から送られてきた《店内で緊急イベント発生♡》のメールを見て…

慌てて〜

でもこっそりと二階から降りてきて〜

菜綱と一緒にこの月9の様な展開を〜

何故か他には誰もいないこの店内で〜

かぶり付きで眺めていたのだった(笑)

それに気付き、あっけに取られる太郎と華恋&冴子の三人…


かくして一つ目のハードルを何とかクリアした太郎と華恋♪

そしてその日の夜…

夕食と入浴を終えた自宅では…

「華恋さん…」

「タッくん…」

「さぁ〜何処で、どうやって見たのか白状してもらいましょうか!!」

「は、話すし!その前にママから貰ったお酒とジュースで乾杯しようよ〜ねぇ〜タッくん♡」

彼の執拗な尋問を逸らそうと画策する華恋と、それもそうだと取り敢えず彼女の提案を受け入れる太郎♪


そして次の日の朝…

「え?えーーー!!」

「スヤスヤ〜スヤスヤ〜♡」

何故かリビングで二人仲良く大きめのタオルケット一枚で寝ていた太郎と華恋♪


そう…

二人仲良くだ…

しかも華恋が太郎の上で折り重なる様にである(汗)

勿論どちらも一糸まとわぬ姿で…

当然合体解除はされぬままでだ(笑)

つまりそういう事である♡

「何…何なん、このお約束の展開は!!」

太郎よ…

憶えていないんだろうから…

何となく言いたい事は解るよ(笑)

「俺は無実だーー!!」

「スヤスヤ〜スヤスヤ〜♡」


まぁ〜

見ての通り華恋にハメられた太郎なのであった(汗)

 


…続く…














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