第15話 水の神オケアノスの愛 4

 洞窟住居の通路いっぱいの海老人達が、尖った爪で僕を引き裂こうと向かってくる。

 僕はオケアノスの力を解放して応戦することを決意する。


「オケアノス――水流を操る力を貸して!」


 力を込めた瞬間、前方で水が渦をまき始めた。

 高速で回転しながら進む水流で、通路から出てきた海老人達を押し戻していく。

 海老特有の何本あるのかわからない細い足をしゃかしゃかさせて海老人達は抵抗するが、水流の威力に負けて次々と通路から押し出されていった。


「よし、とりあえずこれでこの部屋からは出られる。こんな洞窟さっさと出よう! ……っと、これは忘れずに」


 アダマンタイトを手に取り、僕は来た道を引き返していく。


 そしてアダマンタイトの間へと繋がる通路を抜けたが、しかしというか、やはりというか、そこには海老人達が多数いた。


 洞窟内の大きな空間が町の広場のような感じであり、そこから伸びるいくつもの横穴の先にそれぞれの海老人の家や、アダマンタイトの間や、洞窟の入り口方面などに枝分かれしているという構造なのだが、その広場に押し流した海老人達や他の場所から来た海老人が待ち構えていたのだ。


(オケアノスの力……)

(許さん……)


 理由はわからないけれど、オケアノスを憎んでいる海老人にオケアノスの力で流したから、余計キレまくりのようだ。

 しかし力を使わなきゃこの局面は打開できない。


 たしか来た道は、右斜め上の穴からだったな。

 そこだけ道を空ければいい。

 これだけ大量にいるのに、いちいち全部の海老人の相手なんかしてたらきりが無い。

 

 海老人が今度は広間の四方八方から僕の方へと向かってくる。

 そうなると一方向への水流では対応できないから……こうかな!


 水を一点に圧縮して、一気に爆発させる。

 水の中で風船を破裂させるイメージだ。

 そうすると、水中を波が全方位に向かって広がっていき、衝撃で海老人達を弱い者はノックアウトされ、強い者もバネではじかれたように吹き飛ばされる。


 もちろん、僕の方にも水の衝撃波はやってくる。

 が、その衝撃波をオケアノスの力で逆向きの波で打ち消してノーダメージに抑える。


「そして今がチャンス! 道が開けた隙に一気に出口へと向かう!」


 水の中をすいっと進んでいき、洞窟の入り口へと通じる横穴に入った。

 そこを進んでいくが、しかし後ろからは海老人達が追いかけてくる。


 ずっと追われ続けるのも嫌だし……完全にここで止める。


「地神アトラス!」


 洞窟の天井に向かって、地神アトラスの力を解放する。

 ごごごご……とうなるような音が響いたと思うと、落盤が発生した!

 洞窟の天井が崩れ、岩が落ち積もり通路が塞がっていく。


 海老人達は急いで抜けようとするがもう遅い。

 すぐに落盤は完全に洞窟の通路を塞いでしまい、通り抜けはできなくなった。


「よし。これで当分出てくることはできないな」


 水流で吹き飛ばしただけだと、海老だけにすぐに泳いで来てしまうけれど、岩で封じ込めればどかすまでは相当かかるはず。

 これで無事脱出だ。


「はぁ……しかしびっくりした。海老人なんて人がいることも、いきなり襲われたことも。大量に詰まってるとぞわっとしたよ、ほんと」


 でも、結果的には――。


 僕はそのまま洞窟を出て、湖を出た。

 太陽の光がまぶしい。


 そして手のひらには、太陽の光を受けて輝くアダマンタイト鉱石が。


「これが手に入ったから、行って正解だったね」


 さてこの鉱石、何に使おうか。

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