第37話 無視で行こう

 でかい手が俺を離して、めちゃくちゃに熱いものを触ってしまったように震える。


「えっ」


「な、なにが、起きた?」


「ハルちゃん、大丈夫……?」


「うえ、最悪っ……なんか触れられてたよね、今……」


 神の腕から解放された4人組達。

 別に平気そうだな。

 OKOK。


 あとは……。


「え、いや、なに?」


「神罰を……中断させた……」


「いや、バカなそんな……」


 聖堂がざわつく。

 ん~もしかして、少しやりすぎたか?

 俺、今んとこ家無しって立場だしな……。

 いや、まだギリか?


『貴様……何をした……その魔力……それは……』


 うわ、なんか話しかけてきた……。

 う~ん、これ以上目立つとボロが出るよな。

 自分で正体をバラすのと、他人にばらされるのじゃカリスマ度が違う気がすんだよなァ。


 よし、ここはこうしよう。


「…………」


『定命の者よ、哀れな家無しよ。G級ギフト。我ら7大神の知らぬ出来損ないの恩寵を持つ者よ。答えよ。今、何をした?』


「…………」


『怖がる必要はない……ただ、答えれば良い』


「…………」


『……え、聞いてる? あの、え……まさか、貴様……』


「…………」


『無視してない?』


「…………」


『ええ……』


 ふっ、ようやく気付いたか。

 無視。もう何してもなんかよくない気がするからもう無視だ、無視。

 これでとりあえず乗り切ろう。


「おい……あの家無し……神の現象に対して……なんだ、あれ」

「あ、りえない。神の言葉を遮るどころか、無視を……?」

「渋いねえ……おたく」



 聖堂がさらにざわついていく。

 ああ、もうなんかめんどくさくなってきた。

 ――全員殺すか。


 もうほんとどうしたらいいんだ。


『……貴様は己の立場をわきまえてないようだな……もう良い』


「あっ」

「スノウ!!」

「やばっ、またあの腕が!」

「ぎゃああ! ハルちゃん、今度こそ無理だよ!」


 あ、やべ。またあの紫の腕がなんかこっちに来てる。

 う~ん、あの腕弾いたりしたらまた騒がれるよな? 

 干支を使っても、他の術式でもばれるだろうし……。


 あ、そうだ。

 ばれなきゃいいのか。



 ばちっ。


『熱っ』


 紫の腕がびくっと止まる。


 よし、良い感じ……


『熱い……ほんと熱……何マジで……嫌……』


 紫の腕が消えていく


「「「「「……」」」」」」


 重たい沈黙。

 あれ? なんか、思った反応と違うな……。


「お、おい、貴様、な、なにをした?」


 すげえ、血管切れそうな顔で偉そうなおっさんがこちらを見てくる。


「……………」


 無視で行こう。

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