第30話 説得開始
「引継ぎ……? あんた、何を……」
「ふっ」
ここで安易に畑を寄越せなどと言わないのがコツ。
本当に欲しいものってのは隠すべきだ。
「お前の最も大事なものだ。ここまで時間をかけたそれをお前の死で終わらせるのは勿体ないとは思わんか?」
「アンタ……待て、何を、言って……」
「わかっている筈だ、それを俺以外に引き継げる奴はいない。お前が一番この俺の力を知っているだろう?」
「ま、さか……アンタ……最初からそれが目的で? あたしの一番大事なものって……」
畑の事っぽいな。
「ふっ」
「……5年前、あたし達の儀式を邪魔したのはこの為か。ヒヒヒ、転生勇者を生贄にしようとした事すらそもそもアンタに誘導されての事だった訳だ。なるほど、確かにこの権利は譲渡が可能さね……」
転生勇者を生贄に……?
うわっ、このババアまじか?
畑の為とは言え、人間を肥料にするつもりだったのかよ。
俺でもモンスターの皮とか骨とかしか肥料にはしてないのに。
だが、いいぞ。
畑の権利は譲渡が可能らしい。
「俺は知っている、お前がこれに情熱をもっていた事を。やり方はいくつか問題あるが、それでも長い時間をかけ、守っていた事をな」
「……そりゃそうさ。これはあたし達の悲願、神に見放され、裏切られた者達の願い。……あたしの全てだった」
「だがそれもお前が死ねば全て無意味だ。村か、国か、いずれも価値も分からない衆愚のものになるだろう」
「国……? アンタそこまで知ってんのかい。だが、1番喜ぶのはマリス教会だろうよ。神罰だなんだと奴らの宣伝がまた大袈裟になるだろうね」
「マリス教会……そうか、奴らも……」
あー、教会も畑を欲しがるのか。
なるほど、わかるよ……畑とは良いものだからな……。
「……アンタ、本気で理解してるのかい? コレを引き継ぐ意味、その重さが。国に追われることになるんだよ」
「……」
「蟲の教団は恐らく近いうちに本気になった教会に滅ぼされるだろう。あたしのコレも奴らに吸収される。神の専制は続くのさ……偽りの平穏、家畜の安寧、7大神と主神の遊戯盤を覆すチャンスは消えるだろうね……」
「うん?」
「あん?」
あ、やべ。
なんかババアまでホワイト達みたいな事言い出すからびっくりしちゃった。
こいつ、畑にそこまで期待してたのか?
いや、待て。
一粒の米にも神様がいると昔、聞いた事がある。
田んぼも畑も似たようなモンと考えれば……ふ、そういう事か。
ここは話を合わせておくか。
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