第29話 引き継ぎ
「アンタ……その力……ヒヒヒヒ、世界は広いね……アンタほどの強者がまだ在野に」
うお、コイツ、しぶといな。
俺の目の前で半分灰になったババアがぼやいてる。
本気で燃やしたのに、頑丈かよ。
「お前もな、存外、悪くはなかった」
でも頭に少し血が昇ったけど、なんか落ち着いてきたな。
ふっ、アンガーマネジメントって奴だな。
むかついた時は数秒……えっと、数秒待ってからキレると冷静にキレれるんだっけ?
「……あの3人を手懐けたのは、アンタだね……」
「手懐けた?」
「チッ、自覚もなく、か……ああ、もしかしてブルーミルクを終わらせたのもアンタ、か……ヒヒ、なるほど、5年前からすでに計画は始まってたって訳かい……」
「……」
3人……?
ホワイト達は手懐けたりしてないから違うとして……
何言ってんだ、コイツ。
まあ、ババアだし仕方ないか。
ん? 待てよ。これ、よく考えたらここの畑って基本はババアのものなんだよな?
……ババアが死んだらどうなるんだ?
いかん、もしも村とか貴族とかに没収されてみろ。
家無しのガキに自由に使っていいスペースなんて貰える訳ねえぞ。
「その面……強い姿隠しの魔法がかかってるね……高位種族の工芸品かい? けっ、エルフの魔法工、それもかなりの腕利きの作品だね……」
さ、さすがに畑のスペースで公権力を敵に回すのは……いや逆に悪役っぽいか?
いやいや、俺もこの5年でホワイト達にいろいろ付き合ってもらってるんだ。
上司の格は部下の働き甲斐に繋がるって言うし……安易な事は出来ねえ。
「ああ、悔しいね、こんな所で終わりなんて……クソガキ、全部アンタの掌の上だった訳だ……これでお終いかい……」
「グレロッド」
「なんだい……お婆さんって呼べっつってるだろ……ああ、なんて濃い魔力の攻撃……治りゃしない……何をされたかもわからないなんてね……魔法は本当に奥が深い……もっと、もっと勉強したかったねえ……いや、あの戦闘、さっきの戦闘こそ、まさに魔の法そのもの、ヒヒ……」
「グレロッド」
「……なんだい、敗者をなぶるのがお好みかい? ……とんだ蛇だったよ、アンタは。G級ギフトの家無しなんて、考えてみれまるで作ったような出来損ないじゃないか、もっと警戒しておくべきだった」
「お前は俺に負けた、そうだな?」
「……あん?」
ここからが本当の勝負だ。
ババアが死ぬ前に、なんとしてもこの畑を正式に貰う必要がある。
確かあれだ、この世界土地の権利書とかも魔法でかなり厳密に管理されてあるんだよな。
悪役の格を担保しつつ、良い感じに畑を手に入れる方法……。
ふむ、ここはあれだな。俺の108ある悪役ムーブの出番か。
「引継ぎだ、死の信奉者、古き魔女よ。貴様の一番大事な物を俺が継いでやる」
意思を引き継ぐ系悪役ムーブ、行くZE!!
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