第21話 戦いの始まり
「……ホワイトか」
「我が王、お見事です……深淵の山賊団は帝都にもその名を響かせる手配書のA級クラスの悪党……それを、こんな僅かな時間で」
「たまたま目が合ったのでな。目障りだったので消えて貰っただけだ」
「……恐ろしき我が王。貴方の前では如何なる悪も塵芥に過ぎませんね」
ホワイトはこの5年でずいぶん、美人になった。
すらっとしたスタイルに腰までの長い白髪。
冬の川底のような青暗い目はたまに怖いけど、すんごい美人だ。
さすがはネームドキャラ。
いずれ俺の裏切り黒幕悪役プレイの主役クラスの人物なだけはある。
「何か用か?」
「……転生勇者達、このホルガ村で生まれた預言の子達についてのご報告があります」
彼女達には俺が転生者だという事はまだ伝えていない。
聞かれもしなかったし、なんか隠しておいた方が悪役っぽいしな。
それはそれとして、転生勇者。預言の子。
俺のクラスメイト達も順調に成長してるらしい。
特に友達とかはいないからあまり気にしてなかったけど、この世界でも貴族として生まれたスノウさんだけはたまに家無しの視察という形で言葉を交わす時があった。
まあでも、何言ってるかよくかわかんないんだよな。
貴方は覚えている側ですか? とか、本当に忘れてしまったのですか? とか。
最初はスノウさんも、もしかしたら記憶があるのかもとか思ったりはしたけど、まあないない。
何故なら俺はスノウさんにとって友達でもなんでもないからだ。
彼女がもし前の世界の記憶を持っているなら、もっと、こう仲の良い人間達の事を気にするはずだ。
ふ、なんという論理的発想……探偵になれるかもしれない。
「報告? 良い、続けろ」
「……彼らは今年15歳を迎えました。転生勇者の慣わしとして、帝都にあるファルサ魔法学院に通う事になります。本格的に勇者としての力を育む為です。本日、彼らはマリス教会の聖堂に集められていたのですが……」
へえ。
魔法や魔力、そしてギフトのクラスでカーストの決まる異世界ファンタジーらしいや。
あれ、ホワイトが口を噤んでる。
どうしたんだろ。
「……本日、聖堂にて全員行方不明となりました。……何者かの、ギフトによるものでしょう」
「えっ」
「えっ?」
あ、やべ。カースとしての威厳が……!
よし、顔に力を入れて。
「……それが俺に何か関係あるのか?」
どうしよう。
もしかしたらホワイトは俺が転生者だと気づいたのか?
隠してたのバレたら怒られるかな。怖いな。
「我が王ーー」
ホワイトが何かを言おうとしている!
いかん! 話の流れをかえなければ!
「ーー時は来た」
「ッッ!! や、やはり、そうなのですね、我が王……ええ、我々、七騎士も同じ結論に至りました……始まったのです、我々の宿敵、
「えっ……あ、いや。ゴホン!! ……ふん、羽虫が目障りだ。ここが誰の庭だと思っているやら」
「
「必要ない。奴らは恐らくあの場所にいるはずだ、全ての始まりの場所に」
「全ての始まり、あの場所とは……まさか……! いえ、そういうことね、カース。なら、奴らのねらいは、儀式の再開! 死の女神の召喚……!」
「……ふ」
「カース、すぐにかの地へと向かいます、貴方は」
「……俺にはやるべき事がある。それを済ませて、そちらへ向かおう」
「……恐ろしき、そして強き我が王よ。貴方に救われたこの身命、今こそ使う時……貴方の手を煩わせるべきもない。我々で全て解決してみせます」
「期待している、褒美は好きに言え」
「ッッッッッッ!! 我が王、貴方のマヌア大海よりも広いお心に感謝を。それではーーこうしちゃいられない、褒美、褒美、褒美、カースの、私だけのーー」
ホワイトが音もなく消える。
あいつら退場の仕方めっちゃかっこいいな。
さて。
『ブモ!』
『チュー』
『モオ』
がつがつがつがつ。
干支達に山賊さん達の死体を食べさせて、と。
うーん、なんだかよくわからないけど。
とりあえず怒られなかったから、とにかくヨシ!
さて!
モーニングルーティンも終わった事だし、今日も1日の始まりだ。
消えたクラスメイト達の事も気にはなるけど、まずはやるべき事からやってしまおう!
「……畑行くか」
ステータスをコツコツ上げるぞー!
それにしても、さすがホワイト。
全てが始まった場所なんて適当なフリにあんなにいい反応を返すなんて。
……あれ、もしかしてこれやらかしたか?
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