第18話 闇に潜む宿敵(かしこさ3、創作)
「ふっ……」
「「「やはり、そういう事なのですね」」」
どういう事なの~?
何を言えば納得するんだ、こいつら。
「我らの敵をお教えください、カース」
「……ふっ」
やばい、やばいやばい。
敵はもう神だけでいいじゃん、ややこしいじゃん。
どうする? もうネタないぞ。
いや、待て、こんな時こそThisコミュニケーション!
「お前達はどう思う?」
勉強しろ俺の高コミュ力を。
こういう時は相手に話をさせればいいんだ!
「……マイロード。私見だが、いいかな?」
「構わん」
《スカーレットが賢さロールを開始します、歴史知識技能により判定に補正を得ました》
「……察するに、今までの歴史において神の名の下に起きた大きな戦い。これには必ず、転生者が絡んでいた。そもそも転生者は主神マリスが人類に危機が訪れた時に呼ぶものだ。……我々を含む7つの終焉の預言、つまり、人類にとっての危機自体がそもそも神の仕組んだものだとしたら……」
「……そうか! そういう事ね、スカーレット、それなら、つじつまが合うわ」
「ふへ……スカーレットちゃん、賢い、す、すごい」
「ふ……説明は不要のようだな」
なんなの~? 何がそういう事なの~?
だが、コミュ力によりなんかいい感じに話が進み始めたぞ。
《プレイヤー、あなたはまさか……そんな、でも……》
ナビの声が聞こえる。
……そういえばこいつもかなり怪しい奴だよな。
結局何者かもわからんし。
……あれ、もしかしてこの設定、使えるのでは?
怖い、自分の才能が……!
ギルドメンバーきっての中二病、世紀末災厄王†nana†さんを思い出す。
懐かしいな。
プライベートチャットで自作の小説を読まされてたっけ。
話の内容はよくわかんなかったけど、今こそあの経験を生かす時だ!!
「そう、つまり。神の意志を体現する、ワタシ達の敵、神の手先たる始末するべき敵は――」
スカーレットの言葉に、ホワイトとクロが頷いて。
「「「転生勇者……」」」
彼女達がとんでもない論理飛躍をかまし始めた。
「「「カース、我らの敵は、転生――」」」
「惜しいな。だがそこまでだと貴様らは結局、神の掌の上で転がされる玩具にすぎん」
「えっ……」
「神はそこまで予想している、歴史を振り返ってみろ。転生勇者を虐殺したような事件があったのではないか?」
頼む、そんな事件あってくれ。
こんな治安の悪いクソ物騒異世界なんだ、事件、あってくれ。
なんとかなれーっ!
「――ジャレームの血の夜……!! 聖マリス教会が、転生勇者達を討った事件が確か、10年前に……!」
「そういう事だ、転生勇者もまた神の策略に踊らされる哀れな人形にすぎん。我らが討つべきは別にある」
なった!
「マリス教会、最も神の恩恵を受ける者達が転生勇者と敵対したということは……その時の転生勇者達が何か、教会にとって不都合なら存在になったということね……!」
「ああ……! 我が恐ろしきマイロード、呪いと蛇の知恵を併せ持つワタシの君主……」
「す、ごい……スカーレットはエルフ族の中でも知識を司る領域、ワイズ氏族の血に連なる者なのに」
「ふへ、マスターの知恵はそれを上回る……」
「神の企図すら、我が王の魔眼を誤魔化すこと、能わず、そういうことね」
お? もしかして俺の賢さを褒められてる?
こいつら、良い奴らじゃん……。
よし、それじゃ発表するか。
俺の賢さで生み出された存在しない敵のストーリーを。
いやある意味存在する。
こいつらはその存在には決してたどり着けない。
なぜなら――。
「
「
《えっ》
プレイヤーは俺だ。
だってナビが俺の事をそう呼んでいるからな。
後々の裏切りの黒幕プレイの布石をここから打っていく。
彼女達が追う闇に潜む敵、それは彼女達に道を説いた男だった……。
か、完璧すぎるぞ。
ありがとう、†nana†さん。くりふはんがーって奴だよな。
「転生勇者、いや奴らに限らんか。この世界には奇妙な声を聴く者がいる。それは冒険の手助けを嘯き、神のたくらみに誘導する罠だ」
《えっ》
「そんな……」
「……なぜ今まで気づかなかったんだ。まさか宣託や、預言は……」
「ふっ。神の声を聴き、神の企みを為す。奴らは狡猾に闇に、歴史に潜み、この世界を陰から支配してきた。奴らの神の意志のままにな」
「私達、7つの終わりの預言は、世界を滅ぼす私達のこの力はまさか……」
「おおかた、神の新しい戯れだろう、いや……」
ここでゆっくり、朝日の方に移動する。
彼女達から見て、俺が逆光になるように、と。
「暇を持て余した神々の遊び、といった所か」
「「「――」」」
決まった。
あれ、なんか角度間違えた、眩しっ、3人の表情が見えない。
「……カース、あなたはあの時、全てを知って……」
「……カース、君は、君を拒絶したワタシ達を……」
「僕達、カースを殺そうとしたんだ……カースはあの時、僕達を護ってくれていたんだ、神の企みから」
なんかまたぶつぶつ言い出した。
よしよし、良いだろう。良いだろう。
全て思い通りーー。
べきっ! みしみしみし!
俺の小屋の壁に亀裂が走る。
ホワイトだ。
彼女から噴き出した魔力のせいだ。
「カース、私、私、あなたになんて言えばいいの……あなたは名前を、服を……生きる意味をくれた……なのに、私達はあの時……!! あなたに何をしようとした!?」
「ワッ」
ご、ごごごごごごごごごご。
地鳴り。
白く輝くオーロラのような波長が彼女から噴きあがる。
強……。
……俺は確かに悪役として死にたい。
だが、まだだ、今はまだ早すぎる。
ここで死ぬ訳にはいかない。
もっと強くならないと……死ぬべき時に、死ねないのは嫌だな。
「私はやはり、死ぬべきだった……!? 私のこの思いも、願いも、決意も全部、神の――」
「ホワイト……」
「ホワちゃん……」
「私は、生まれてくるべきではなかっ――」
「見事だ、ホワイト……ノース・セイン」
「カー、ス?」
ホワイトが髪を振り乱したまま固まる。
「貴様は、いや、貴様達は唯一、神の専横に抗った生贄なのかもしれんな」
「マイロード……君は」
「あの時の言葉を1つ訂正しよう、生きてようが、死んでようがどうでもいい、そう言ったな。が、今は違う」
「マスター……」
「誇れ、死を以て神の専横に抗ったその気高さを」
実際、コイツらは気合い入ってる。
他人を傷つけるのではなく、自らを滅ぼす事を選んだ。
ーー下らん、強者が弱者を鑑みるなど。
俺にはできない判断をしたんだ。
「お前達が生きてて良かった」
「「「」」」
彼女達が、一瞬真顔になって。
あれ? 嘘、もしかして会話をミスっ――。
ぽろり。
真珠のような大粒の雫が、彼女達の頬を伝う。
ぐすっ。
ホワイトか、スカーレットか、クロか。
もしかしたら全員の鼻をすするような音がして。
「あ……ああ、う、うあ……あああああああ……」
「ふ、あ、うう、ぐすっ、ああああああ、ああああああ」
「わ、わ、わ。わあああああああああああああああん、わああああああああああああああ」
泣いちゃった……!!
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