第13話 G級ギフト・術式作成

 

 《G級ギフト・術式作成に組み合わせ可能な呪術式が複数あります》


 口が勝手に動く。


 この世界に来て1週間。自分の力はたくさん扱ってきた。


 出来る、そう思った。だから、出来る。


「術式作成・衝撃術式」


 村で、クソガキとの交流で得た衝撃を与える魔法の記憶。


「術式作成・支配術式」


 そして、ここで白髪美少女の扱っていた他者を支配する魔法の記憶。


 2つの魔の法を、呪いとして。

 人間が扱う業として練り上げる。


 ーーそれで良い。


「おい、それは……な、んだ?」

「ああ、我が王、私の力を……受け取りました、貴方からのメッセージ……!」

「……ふん、ワタシの力のほうが強いのに」

「……僕の力、使いにくいのかな……」


 これが俺のギフト。


 魔法を呪いへと転じ。


 術式を作り、成す。


 魔を溜め込み、呪いと為し、それを統べる。


「衝撃術式+支配術式ーー」


 黒い渦巻く2つの光。

 それが、俺の手の中で溶け合って。



「術式作成ーー"平安宣皆呪言令"」


 《効果、解析。その効果ーー》


「騎士よ、4人を連れて帰れ。この場で見た事を忘れよ」


「"ああ、わかった"」


 《対象への言葉を介しての命令の強要》


「えっ、えっ、き、教官……? わっ、早っ!!」


 わ、速え。


 一瞬でクラスメイト達を全員抱えて消えた。

 凄腕じゃん……。


 あとは……。


「我が王……お見事です……」


 この3人だ。


 うーん、さっきの様子といいアレだな。

 コイツらやっぱ普通に怖え。

 すぐ殺そうとするんだもん。


 よし、ここは……。


 ーー呪言を使えばこの大いなる呪い達を完全に操る事が出来ーー


 俺が帰ろう!!

 うん!

 コイツら人の話聞かなさそうだし!


「じゃあな、お前達、好きに生きろ」


「「「えっ」」」


「術式、展開」


 来い! 干支のネズミ達!



『『『『チューチュー! チューチューチューチューチュー!!』』』』



「待って、カース、我が王! 私達はまだあなたに何も返せていない!! 私は――」


「いずれ……我らの宿業が道を重ね合わすだろう、時を待て。騎士よ、滅びの時にまた会おう」


「それは……そう、わかった……そういう事なのね」


 そういう事なの、お別れなの。


 俺の悪役プレイに、お前達みたいな本物のやばい奴らがいるとね、キャラが飲まれるんだよ。


「……我が王よ。我らに生きる目的を与えてくださった我が強き恐ろしき王よ」


「マイロード。ワタシはワタシの全性能を以て、貴方の道に追いつこう」


「マスター、ふへへ。ボクが終われば、終わりを与えてくれるボクのマスター……貴方のご期待を裏切る方はありません」


「好きにしろ」


 翁面の識別不能の特性! そしてこの大量のネズミ煙幕!


 男の行方は誰も知らない――って感じで終わりだろ。 ヨシ!


「王……私の魔法……使……匂わ……戦争?

「マイロード、魔力の特徴……追跡……飢餓?」

「マスター……血の紋、僕……愛……試して」


 なんかブツブツ言ってるけど……まあヨシ!


 ばいばい!


 帰宅! おやすみ!


 溢れたネズミに押し出されるように、俺は洞窟を出た。


 今夜の冒険、まあ、なんだかんだ総評すると。


「悪役っぽいな! ヨシ!」




 ——————————


 名 前:粕谷焚人または、カース


 レベル:####


 ちから:11UP! →15

 

 かしこさ:3


 せいしんりょく:10UP!→15


 たいりょく:12UP!→15


 属性:混沌・善


 技能:"耕作"、"ステータス画面"、”ゲーム脳”、"呪力操作・強化系"、"カス"、"彷徨いし自我"


 職業:呪術師


 ギフト: Gゴミ【術式作成】


 保有術式:【干支百景調伏呪法】【決戦術式・天の岩戸】【平安宣皆呪言令へいあんせんじじゅごんれい


 保管庫:【翁面・黒(破損)】他多数……何かがカタカタ揺れている


 生まれ:呪われた人生(二回目)


 進行中のイベント:黙示録の娘


 ライフ・フィールド同調特典:保管庫


 次回特典:スキルツリー


 ——————————




 ◇◇◇◇



 湯煙、山景。


 雲海見下ろす秘境の場。


 豊かな湯が溢れるその場に人影、2つありて。


『主が目を覚ましましたね』


『主人、強い。俺の主人によい。……今日もまた沢山の肉、嬉しい』


『亥、それなら子も同様。別に貴女が特別主様のお気に入りという訳でないですので』


『ははははは! 笑止、主人はよく俺使う! 子、お前よりも!』


『それを言うなら主人様が今世で最も早く呼び出したのは子、ですので』


『うが。それ言われる厳しい……でも、良い。主人、俺達全員の主人』


『ええ、そうですので。楽しみですね、また12将が揃う日が』


『時、すぐ来たりて。主人、いつも通り、呪を手繰り、呪を喰らい、呪を束ねん』


『ふふ、ええ、その通りですので。ーー本当に楽しみ』


 湯が溢れる音が、全てを攫う。


 湯煙は濃く、ただ、鈴を鳴らす仙女のような笑い声だけがいつまでもーー



 ◇◇◇◇



 ぴちゅ、ちゅちゅ。


 鳥の声で俺は目を覚ました。


 何か、夢を見ていたような気がする。

 完全に内容は忘れたけど。


「いて」


 身体のあちこちが痛い。筋肉痛だ。


 昨日の山賊狩りと隠しボス3人組との戦いが原因か。


「……修行、しないと」


 世界にはあんなのがいる。

 このギフトと呪力をさらに成長させる必要がある。


 悪役のフリじゃない。本物の悪役になる為に。


 もう二度と、モブで終わるのは、嫌だ。


 俺は特別になりた――。


 ふにゅ。


 ……なんだ?

 妙に暖かい、そして柔らか……。


「……んっ、あ。お目覚めですか? 我が王」

「あっ……ふふ、マイロード、風邪は引いてないかい?」

「ふ、へ。マスターの首……血管、うっすら、浮いて、ふへ」


 は?


 挟まれている。


 左右、そして上から甘い匂いと、蕩けた声。


 照らす朝日が俺の視界を現実から逃すことを許さない。



「おはようございます」


「良い朝だね」


「ふへ……この家……狭くて暗くて、心地いい」


 白い髪、青い瞳、絶世の容姿。


 赤いポニテ、尖った耳、宝石の容姿。


 黒い長髪、口元から覗く鋭い牙、妖精の容姿。


 3人の、とんでもなく顔の良い美少女達が――。



「我が王」

「マイロード」

「マスター」


「「「カース」」」


 白い肌、全裸のまま添い寝してーー。

 いや、もう黒髪ちゃんにいたってはのしかかってるし。


 これは、分かる。

 どんな状況か。

 美少女達の紅潮した頬、赤みのかかった耳。熱い吐息。


 これはーー。


 ……敵襲!!!!!!!!

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る