踊る悪意編
ユニークオーパーツオンライン
紹介文変更しました。
♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢
「新しいオーガが来たぞ!」
「こっちに人手を寄越せ!」
「ふざけないで!こっちも手一杯よ!」
「ひぃぃ!だ、誰か助けてくれ!」
目の前では多くのプレイヤーがトロールやオーガ相手に戦闘を行なっている。
単純な数やまだ戦闘に慣れていないせいもあってか最初こそ順調だったが、徐々に魔物達に押され始めている。
「しかし、必要な事とは言ええげつない光景だな」
「仕方ないですよ、これが団長の方針ですし」
そう隣からメタルフレームの眼鏡を押し上げながら声をかけてきたのはウチの参謀でもあるロックだ。
「そうなんだがなぁ…あんまり気乗りしねぇというか、性に合わないというか…側から見たらイジメにみえねぇか?」
「……まあ、否定は出来ませんが…」
2人してなんとも言えない空気の中にいると後ろから少し不機嫌気味な声が聞こえてきた。
「2人して悠長に構えていますが、このままでは新しく入ってこられた方達もすぐにクランを辞めてしまう事態になってしまいますよ?」
「いやまあ、わかっちゃいるんだがな…」
俺はそう言われ改めて気まずくなりながらも声がする方へと振り向きながら言い訳を口にする。
声の主は、黒のインナーにその上から膝丈まである純白のオフショルダーのワンピース。腰には女性用にしては大きい黒のベルトを身につけている。その純白のワンピースには金色の刺繍が施されており、清楚の中にも華やかさが出ていて彼女にとても似合っていた。………蛇足だが、全てが全て最高ランクの装備である。
それを着こなしている本人は、銀色の髪を腰まで伸ばし、少し垂れ目がちでどこか引き込まれそうな不思議な魅力を持った蜂蜜色の瞳をしている。……が、今は本来では優しげなはずの瞳をジト目に変化させ、まるで(というか実際そうなのだろう)こちらを非難するかのように見ている。
いつもは笑顔を絶やさないような人物なのだが、今はどうやらご機嫌斜めらしい。
「……そもそも、もし事前に私に話した通りの新人のレベル上げが本当に目的だったなら、経験値の入りが少なくその割に対処が面倒臭い敵が多くいるこの場所は不向きだと思いますが?本当は一体何が目的なんです?」
一転笑顔を俺に向けてくる。
何故だろうか?笑顔なのはそれはそれで怖え…。
俺が彼女の答えに対して困窮していると、その様子を横目でチラリと見た後溜息を一つ吐きだした、それと同時に前方から悲鳴と怒号が響き渡った。
「……ハイトロールですか。まさかアレの素材が本来の目的じゃないですよね?確かにアレを出現させるには条件が特殊ではありますが…。
まあしかし、どちらにしても彼らではアレには勝てませんね。オウダイさん、当初の約束通り戦闘に介入させてもらいますね?」
「…あー、ホントはまだしてほしくねぇんだけど……っていっちまいやがった」
俺が全てを言い終わる前に彼女、フィリア・ホワイトローズはハイトロールが無双している前線へと歩いて行った。
「まあ、
先ほどの会話の為か、はたまた自分でも納得のいっていないこの状況のせいか、ついつい愚痴が溢れちまう。
「仕方ありませんよ。ウチはYOOの中でもトップクラスのクランです。当然妬まれることもあれば上級の魔物と相対する事だって少なくない。そんな中でウチでYOOを楽しんでもらうにはある程度の強さと精神的な強さが必要です。それらを身につけるという意味でもハイトロールは見た目の凶悪さ、強さ共に適任ですからね………いやしかし、見てください。やはり彼女は聖女と呼ぶに相応しい姿ですね」
そう言う俺達の
視線の先には前線に到着したフィリアが新人達を励ましながら回復魔法を行使している姿がある。
「…だな。しかしそんな聖女なアイツを、ついでだからとハイトロールの素材も欲しいな、とかほざいていた
アイツの性格を考えれば無理もない、そう考えれば自然と苦笑してしまう。
その
『聖典・1章.3節
アイツの詠唱破棄(フィリア曰く詠唱ではなく聖唱と呼ばれる聖典魔法オリジナルの詠唱らしいが……俺にしたらその違いはさっぱりわからん)からの魔法の行使によって銀色の鎧を着た騎士が出現し、ハイトロールに特攻をかけた。
と、ぼんやりとハイトロールが彼女の騎士によって蹂躙される様を見ていると隣から驚愕に満ちた声が聞こえてきた。
「これは…!まさか聖典魔法を詠唱破棄ですか…」
「だな。因みに聞いた話では6章まで今は
俺の一言でさらにコートは眼鏡をずらし、目を見開いて驚いている。……こいつ芸が細かいな。
「……聖典魔法は聖女固有魔法。ただ使用するだけでもハードルは高いと聞きました。それを行使するだけでなく詠唱破棄まで…流石はYOOの主軸のひとつでこの世界でただ一人しかなることができない八つのユニークジョブの中のひとつ、《聖女》になった方ですね」
「……だな」
前線では戦闘が終わり、少女がウチの団員の声援に応えるべく笑顔を振り撒いている。アイドルのイベントか何か?
その光景を呆れながら見ているとフィリアは団員への声援に応え終わり、俺達の前まで帰ってきた。
「……おう。帰ってきたか。………ん?お前魔力の減りが大きいな?確かに聖典魔法は魔力の消費は大きいらしいが、そこまで使ってたか?いや、総量が減ってんのか?」
俺のその疑問にコートが応える。
「…封霊の指輪ですね。一体どうしたのです?」
コートの指摘に俺はアイツの指を見ると、そこには葡萄色をした指輪が右手の中指につけられている。
あれは確か7段階の設定で自分の能力とレベルを下げられるアイテムだったな。確か最大まで下がるとそのジョブの初期レベルになるんだっか?
「ああ。これですか?この後友人と一緒に制限付きダンジョンに向かう約束をしていますので。ああいうダンジョンっていろいろなレベルと能力制限があるでしょう?ですから
そう言いながら右手を胸の辺りまで上げ、笑顔で指輪を見せてくる。…あざといな。本人は無自覚でやってんだろうが…。
「なるほどな。……てか直ぐって言ってたが時間は大丈夫なのか?」
いつ集まるかは知らんが当初予定していた終了時間からは幾分か過ぎている。直ぐと言っていたしかなり危ないんじゃ…心配になり、そう聞いてみたんだが…
「…え?今何時ですか?…………ええ!?もうこんな時間!!?すみませんがこれで失礼します!」
急いでいるであろうに律儀に俺達2人に礼をしてパタパタという擬音が似合いそうな姿で走り去って行ってしまった。
「…あの普段の姿と戦闘時での姿とのギャップは凄まじいですね」
走り去るアイツの後ろ姿を見ながらそう呟き、頬をだらしなく緩める我らが参謀様の姿に俺は
「……そうだな」
物理的にも精神的にも、少し引いてしまった。
異世界に連れてこられた聖女は吸血鬼少女の恋を応援したい! @naadesu
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。異世界に連れてこられた聖女は吸血鬼少女の恋を応援したい!の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます