異世界に連れてこられた聖女は吸血鬼少女の恋を応援したい!

@naadesu

プロローグ


———そこには誰が見ても絶望と呼ぶべき空間が広がっていた。



山と見間違えるような巨大さを全く感じさせない動きを見せている漆黒の龍。


そしてその前にはまだ少年少女といっても過言ではない——実際にその通りではあるのだが——数人の人間が膝をついている。

その表情はみな絶望に顔を沈めていた。



「……なんなんですの、、なんなんですの!!こんなの、聞いてないですわ!」



魔導士の装いをした燃えさかるような赤髪をツインテールにした少女はいつもは勝ち気であろう瞳に涙を浮かべながら自分が本来想像していたモノ勝利とは違う状況に癇癪を起こし、



「…っ!今は、そんな事を言っている場合ではないだろう!」



騎士の鎧を纏った水色の髪の少女はこの戦いで折れたであろう剣で己を支えながら赤髪の少女に絶望を飲み込まれないように——それ以上に同じように感じていた自分に——叱責をし、



「あわ、あわわわわ!?」



桃色髪の少女はただただパニックを起こしている。



「皆!大丈夫だ!!必ず……必ず勝機はある!だから……」



黒髪の…当代の勇者と呼ばれる少年は共に戦場にいる少女達を励ましている………が、その少年の顔にも絶望は色濃く表れている。



「しかしレクトよ、この状況の打破はいくら私がいたとしても困難よ」



黄金色の髪を腰まで携えた少女は希望を見出そうとしている少年へと冷静に声をかける。



「…だとしても……」



少年は少女に対し反論をしようと口を開くも、少女の発言の正しさを理解しているのか直ぐに口を閉ざしてしまう。


再び訪れる絶望の沈黙の中、一体の龍が動きを見せる。






………






……………否。





一体の龍と、銀髪を揺らしながら少年達のパーティーにいる最後の1人少女が動きを見せる。



















———大丈夫。

やつ漆黒龍の動きはユニオパMMORPGの行動と一緒だ。

確認に大分時間を使ったが、確信を得られた今ならもう怖がることもない。


—大丈夫。俺ならやれる。例え大人数討伐前提のレイドボスだろうが……いや、うん。大丈夫。フリオパで最強の名を手にしていた俺なら……いや、私なら倒せる!!




少女は一歩、また一歩と漆黒龍へと歩を進める。



「なっ!?何をしているの!?下がりなさい!貴女では無理よ!」


金色髪の少女が慌てた様子で少女へと叫ぶ。



「……大丈夫ですよ、リリア。貴女が私をここリルクラスに連れてきた事、間違えではなかったと、私が今ここで証明してみせます!」


慌てた少女へと銀色の少女は絶望と化したこの場に相応しくないほど穏やかに笑ってみせる。

その言葉と共に少女の目の前に1メートル程の、少女の髪とまるで同じ輝く銀色の表紙をした大きな辞典のような本が出現した。



そして…



「嫋やかな聖人よ。絶望の化身よ。数多の可能性宿りし小さな種達よ。その姿、形、思想、総てを包み総てを主へと届けよう『聖典・零章……




——少女を両手を合わせ祈る。遍く総てに。——




……聖天使の祈り』



その聖句と呼ぶべき詠唱を唱えた瞬間、辺りは眩いばかりの銀色の世界へと姿を変えた———。





















———これは、地球の日本に平凡な男子高校生として生きてた主人公が吸血鬼の少女に異世界へと拉致され、その恋を応援するとってもハートフルな物語である。

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