3-19 恩返し
私は先ほどの防御で消耗してしまった。彼の小脇に抱えられたまま大人しく攫われるのも癪なので、ノクトからわずかでもドレインしようと彼の二の腕に尻尾を巻きつける。
「あはっ! 甘えてるの? 嬉しいな。」
彼の戯言でいちいち怒る気力が無い。ドレインすることに集中した。
もうそろそろ日の出だ。私達は太陽から逃げるように西に向かって飛ぶ、エルフの森から続く針葉樹林の上を飛んでいたら私達の下、森の上すれすれを猛スピードで何かが追ってくるように飛んできた。
ノクトはそれを気にする様子もなく西を目指す。
猛スピードのそれはとうとう私達を追い越し、一本の木にぶつかるように止まり、鳥が一斉に飛び立つ。その木を通り過ぎる寸前声が聞こえた。
「小娘!! これを使え!!」
小娘? 聞き覚えのあるその声は助けたエルフの少女ニクスだった。彼女は私に向かって何か棒のようなものを投げた。
それは朝日を受けてキラキラと輝きながら、私の手に吸い込まれるように収まる。―――これは
彼女が投げたのはロッドだった。黒い大きな杖でロッドの先に私が持ってきた青いスライムの核や骨があしらわれている。そして私の自作の杖が括り付けられていた。それらは私の魔力に反応してキラキラと強く輝いてる。魔力の残量が少ないのに、こんなに反応するのは……増幅されてる?
「綺麗……。ありがとう!!」
彼女は私が受っとったのを確認すると手を上げて答えた。彼女の後姿が遠のいて行く。
これなら少ない魔力でも戦える一撃でいい。
彼はとうとう領地の西の端、結界前に到着した。結界を破る気だろう。私の杖を見てもどこ吹く風だ。それだけ力が満ちていると言う事だろう。
「嫁入り道具かい?」
私は杖の先に光の刃を展開する。さながら死神の鎌のようなフォルムだ。それを思いっきり振り回した。
「ちがうっつうの! いいかげんはなしてっ!」
「あぶな!」
思いの外、強力な魔法が展開され彼は攻撃をよける為思わず私を手放した。
私を回収しようとするが東から太陽が上がってくる。日の光を受け彼の皮膚がジワリと赤くなる。苦虫をつぶしたような顔で彼は舌打ちする。
「タイミング悪。でも、僕は諦めないよ、また夜に攫いに行くよ。君の味は忘れられない。」
とうとう彼から解放された。私は静かに地面へと落ちてゆく、浮遊魔法を展開しなきゃと思いつつもどうやら本当に魔力が枯渇したようでうまく魔法が展開できない。
ぼんやりする頭でまずいなと考えていたら、右手の指輪が光った。
エスタから貰った指輪の石が反応していた。
私の考えを汲み取ったかのように使いたかった浮遊魔法が展開され落ちるスピードが和らいだ。ゆっくりと地面が近づいてくる。同時に指輪から魔力が供給された。
私が空を見上げるとノクトは結界を破ろうと結界に手を突っ込み穴を広げようとしていた。一瞬結界が白く光るがその刹那結界から光の矢が彼を囲むように展開され射る
結界からの迎撃は続きノクトはとうとう結界から手を離し私を追い越すように地に落ちた。無事に着地した私はノクトの元へ近寄る
不老不死のお陰か彼にはまだ息が有った。ただし……じわじわと太陽に焼かれ始めている。
「笑いに来たのかい……」
「なんだ、ダメだったじゃない。……仕方ない。」
私は地面に杖を突いて地面を隆起させ簡易的な日陰を作った。
エルフの杖すごい……それにエスタも指輪にこんな細工をしていたなんて……
「捕まえろって言う指示が出てるからね。もう大人しく捕まって。……あぁ疲れた。」
「君のお願いじゃ仕方がないな……捕まるだけ捕まるよ。」
私も地面に倒れ込むと遠くから声が聞こえた。エスタ達だ。
「マヤ! 大丈夫か?」
「うん。今度こそ……でも疲れちゃった……」
私はエスタの顔を見て安心して眠ってしまった。気を失ったと言った方が正確かもしれない。私の長い夜が終った。
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