エピローグ 成績発表

 田舎の魔法屋に戻り2週間後。

 私は魔法屋のカウンター内に座りながら1通の手紙を開封した。


 魔術学院での単位に関する通知だった。

 助手だけでなく、生徒としても講義を受けていた物が幾つかあったので、その結果だ。


 ―――どうか、単位認定されていますように!!


「おおー!」


 思わず歓喜した。

 やりました。受講していた分全て単位認定頂きました!


 私は初級と中級の基礎魔法の単位を取得した。この単位が有れば上級の単位認定に挑戦できるので、それはまた次の機会に挑もうと思う。ちなみに上級の単位認定が貰えれば魔術学院の通常コースの入学試験を受ける資格を得られる。魔術学院は入学しないが、上級の単位はギルド等で何かと便利なので取りたいところだ。

 妖精学と古典魔法も単位をもらえたので収穫は大きい。


 一か月の頑張りが認められホクホクしている所に、工房から疲れ顔の先生がやってきた。

 そして彼はカウンター席に座り、頭を突っ伏す。


 これは、何か面倒事に巻き込まれたのだろう。

 私は茶を淹れてそっと彼に差し出す。

 ちなみにあれから彼とは何も進展はない。本当に純粋な魔除けの指輪だったのかもしれない。


「ありがとう……。影武者から連絡が有って、兄貴の体調が良くなったと知らせが来た。もう魔術師に頼らなくても眠れるようになったらしい。」

「良かった!でも何で先生はぐったりしているんですか?」

「ああ、それは確かに良かったんだ。つまりだな、大臣や貴族連中が縁談に力を入れ始めて大変なことに成っている。俺もとうとう縁談を入れられた。全力で丁重に断ってくる。」

「それは大変ですね……。」


 彼はお茶を飲みながらジト目で私を見る。


「他人ごとだと思って……マヤもだぞ。名前は出さずとも一応伝説に登場する妖精の一人で、騎士・魔導士と同等の爵位を与えられる。それは、どの階級とも婚姻のチャンスが有るってことだから。マヤを狙ってくる奴は少なくないよ。」

「そうですね。立派な爵位を頂いてしまいました。……どの階級とも言う事は先生とも結婚できるって事ですか?」

「ああ勿論だ。マヤが良ければだがな。」


 そう言って彼は静かにお茶を啜った。

 むう、確かに王族の中には騎士との婚姻も有ったな。


 待って。私が良ければ?


 不意に彼が真剣な眼差しで私の手を取り手の甲にキスをした。そしてプレゼントされた指輪を触る。


「マヤもなかなか鈍いな。」



 …………。



 ―――!魔除けじゃなかった!!!



 あまりの衝撃に言葉が出ず。心拍数が一気に上がる。

 興奮しすぎたのか、頭から血の気が引いた感覚が……ノイズが掛かったように視界が黒く染まってゆく。


 どさっ。


「おい!大丈夫かマヤ!?おい!!!」


 私は貧血で椅子から転げ落ちてしまった。

 ちなみに、この日の話は今も笑い話として長く語られるのであった。

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