22 ねがいの対価(後編)
対価の回収は私たちに委ねられている。
しかし、展開が速い。命が懸かっているのに、こうもポンポンと進められると気持ちが追い付かない。
「【対価は国王救出時に先払いにて回収した。よって、これにて確認は終わり契約の終了を宣言する】・・・先生?わたしはこの条件で終了したいのだがよろしいか?異議が無ければ先生も宣言せよ。」
真夜の君は妖しく見つめる。みんな話についていけずキョトンとしている。
先払い済みって・・・もう命払ったって事だよね。先生、生きているけど?
「先払いって・・・何のことだ?」
「む?」
状況がつかめない先生が思わず尋ねる。真夜の君は完全に私の体を支配して動き出した。ちょっと。どうする気?
彼女は私の体で先生の耳元に近づき、小声で妖しく囁く。
「わたし達が王の夢で生気切れ起こした時に、実体に
は?
先生は目が合うと一瞬赤くなり、すぐに目を逸らした。
「そ、それは・・・忘れていない。わかったそれで君が納得するなら了承する。【異議なし。契約の終了を宣言する。】」
先生の言葉と共に私の左角の装飾がカタンと音を立てて落ち、霧散していった。先生の指輪も同じように消えて行った。絆が消えこの契約は無事に終わった。先生は生きている。
「ああ・・・これで名前が呼べる。エスタありがとう。
「ああ、こちらこそ世話になった。感謝している。真夜の君。ありがとう。」
(・・・真夜の君、詳しく解説を求む。どうゆうこと?)
私は思考で説明を求めた。
「え?どちらについてかのう?
先生もぎょっとして、こちらを見る。
何を言い出す。対価です対価。やめてよ!恥ずかしい。
「対価の回収は私たちに一任されておる。命を、いつ・どれだけ・どのように・・・解釈もな。私たちはそれを提出する訳でもなく、自分で貰っていい。ただ、お互い命を懸けた自覚が無いと成立しない。
命を懸けた自覚・・・生涯の伴侶・・・そんなの聞いてない。時間が無くてすぐ転移したから。
そうか、物騒な感じじゃなくて良かったけど。とんでもないことを言ってくる。
私の分の契約は終了していない。陛下が困ったように尋ねる。
「私の分の対価の回収はどうする?一応覚悟はしているのだが・・・?」
うっ・・・私の覚悟が決まっていない。
王が命を張って私に何かしてくれたか記憶を辿る。・・・ナイトメアに憑りつかれた王から殺されかけた記憶しか出てこない。真夜の君から体の主導権を返してもらう。
「対価の回収は先送りでもいいでしょうか?まだ決められません。」
「ああ、それは構わないが・・・私と契約したままになるが構わないか?」
先生が、王の言葉に反応して彼をじろっと睨む。
「はい、それは構いません・・・。」
「これから住むところはどうする?」
確かに・・・先生と契約が切れてしまった以上お世話になるのも忍びない・・・かと言って王と住むのも・・・思考を遮るように先生が話す。
「マヤは俺の助手だ。このまま面倒見る。兄貴も俺なら連絡取りやすいだろ?今まで城と店の距離で離れて居たが、逃亡とは扱われなかった。大丈夫だろう。」
先生からの思わぬ提案に驚いた。あのお店に置いてくれる・・・もちろん嬉しい。
王は私を見て背中を押してくれた。
「マヤさえ良ければ私も構わないよ。時間はある。対価は決まったらまた話そう。」
「マヤどうするんだ?」
答えは決まっていた。異世界でひょんなことから縁が出来た居場所だ。学びたいことも沢山ある。
「これからもよろしくお願いします。エスタ先生。」
「ああよろしくな。」
今度こそ・・・平穏な異世界での生活が始まる。
真夜の君が嬉しそうに発声してきた。
「居場所ができて良かったのう。」
「うん!凄く嬉しい!!・・・真夜の君はこれからどうするの?」
「どうもしない、融合したからのう。魂分離の方法が分からないから、そのままじゃ。
去り際にすごい大切な事言っていくなぁ。そうか・・・ありがとう真夜の君。
そして、真夜の君は再び眠りに就いた。
お休みなさい。どうか良い夢を・・・
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