21 めざめた朝(前編)

■関係者からの証言■


 城の前線基地に、先日目を覚まされた王弟殿下から手紙が届いていた。


『夜が明けたら、国王陛下を迎えに行ってほしい。』


 王宮騎士団及び、王宮魔術師団が国王陛下が捕らわれている結界の傍まで行くと昨日までと様子が違っていた。

 

魔獣と瘴気が消えていた。


 王宮騎士団及び、王宮魔術師団が急ぎ突入し、城内の様子を確認する。


 城内は荒れていた。探索すると広間バルコニーに赤髪の賊が拘束された状態で発見された。生きていたので、そのまま牢に入れた。後日裁かれるだろう。


 捜索を続けると謁見の間に三人。

 国王陛下、王弟殿下、女が一人倒れていた。

 三人とも怪我をして衰弱していた。見つかったのが早かった為命に別状はなかった。女は賊ではないかとも話が上がったが、王弟殿下が守るように抱えていたので、治療させた。

 

 更に、『聖女様が起きて来ていない』との報告を受け急ぎ様子を見に行った。

 聖女様は塔の寝室にて倒れていた。疲労が激しいが幸い命に別状はない。

 

 膠着状態が続いていた王宮の占拠事件は一夜にして夢から覚めたように解決したのだった。


 ■それから2日後■


 私は体の痛みで目が覚めた。いいベッドに寝かされている。私が目覚めたことに気付いた人が数人集まる。どうやら私は王宮内の療養施設に入れられていた。夢ではないみたいだ。


 私が目覚めた知らせを聞き、先に回復したリーリが文字通り駆けつけて来て、再開を果たした。


「あああっ!マヤ!よかった!!目が覚めて良かった!!!」


 彼女は泣きながら抱きついてきた。おっとりした彼女がこんなに感情を露わにさせるのが新鮮だった。心配させてしまったみたいだ。私は彼女を落ち着かせようと背中を軽くたたく。

 私も彼女に再会できてよかった。リーリが無事で良かった。怪我もなさそうだった。


「リーリ・・・無事で良かった。みんなは大丈夫??」

「ええ、ニグルム陛下もエスタ殿下も昨日目覚めました。容態は安定しているので心配はありません。リクサも捕まって投獄されています。だだ、モロが・・・私に生気を限界まで分けてくれて・・・。」


 彼女の顔が陰る・・・え、モロ?そうだ。彼の姿が見えない。まさか消えた?

 彼女は静かに視線を自身の背後へ向けた。そこには1粒の砂金のような光が飛んでいた。金色の光から聞き覚えのある声が聞こえた。


「よう!生きてて良かったな。」


 あっけらかんとしたこの声はモロだ。元気そうである。

 声も動きも疲れを感じさせない。ただ、目を凝らさないと見えないほどに・・・


「小さい。モロどうしたの・・・?その姿。」

「小さい言うな。今、徐々に戻っている所なんだよ。」


 リーリに生気を渡すのにギリギリを攻めた限界の姿なのか・・・消えてなくて良かった。しかし彼女はひどく責任を感じていて、彼を見るたびに悲しい顔になる。


「ごめんね・・・モロ。私で良ければ栄養にしてくださいね。」


 そう言われて、小さな光は右往左往していた。本気で彼女が好きなんだろう。だから、リクサから使役されていた時も彼女からドレインするのを極限まで避けていた。

 私はそんなこと言われて焦っている彼を見てニヤニヤと愉しんでしまった。普段飄々ひょうひょうとしている彼とは大違いだ。


慌てちゃって。チャージしたってことは夢の中で・・・!あらまぁ!ごちそうさまです。良かったのう。


 そうだ。もう一人気になる人物がいた。彼女にも語りかけてみた。


「眠り姫?」


 私の意志に反してピクリと尻尾が反応した。良かった。彼女もまた無事なようだ。何はともあれ、皆無事に生還したのだ。ニグルム陛下もエスタ・・・?


 ・・・待って。私、何かすごいことを聞き流している。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る