19 ナイトメア(前編)

 先生と一緒にナイトメアに憑りつかれた王の手足を拘束して第二関門はクリアできた。

 ナイトメアは彼の体から離れられず中に居るようだ。そして、気を失っていて浅い呼吸が続いている。


 最後はわたしが夢に潜りナイトメアと対戦してくる。


 と言っても、ナイトメアに生気を流し込むだけだ。体力勝負になる。

 最終段階に向けて、私はポーションをのみ体力を回復していた。先生は王の手当てをしながら訪ねてくる。


「おい、さっきのあれは何だ?話と違ったじゃないか?」


 本来は2対1で連携して捕まえる筈が、わたしの気持ちが高まり暴走してしまった。


「すみませんでした・・・ナイトメアに相当な恨みがあって。・・・なので、この後本気で行きます。夢の中で私の魔力が枯渇しそうになっていたら。ポーションを口に流し込むか、先生が私の手を握ってドレインさせてください。」


 はははと笑い、誤魔化す。ただ言ったことは本当だ。きっと差し違える覚悟だ。


「変な事言うなよ。俺も夢に同行を・・・」

「先生は予定通りここで陛下の体を治さないと、それに私の体も置きっぱなしになるので・・・では、そろそろ潜ります。こちらの事、よろしくお願いします。」

「・・・ああ分かった、こちらこそよろしく頼む。」


 私は横になり目を瞑り。妖精体になった。この切り替え、だいぶ慣れたものである。


 私は眠る陛下の元に近づき彼に触れた。溶けるように夢に入る。


 ■■■


 そこは、禍々しい夢の中だった。


 黒く荒れた地面が続き、赤黒い空が囲む。この世の終わりみたいな風景だ。そんな中ぽつんと玉座が有った。


 近寄ると玉座には陛下が虚ろな目でもたれかかっていた。玉座の上には黒い犬のような影。ナイトメアが苦しそうに呻いていた。


 彼に近づき頬に触る。気づいて、眼球が動く。目の下に濃いクマが刻まれ、顔色は悪く頬がこけている。息が苦しそうだ。

 相当お辛かったろうに・・・・先生より少し年上だろうか・・・今回の疲労で年齢よりも老けて見えている。胸が締め付けられた。


「陛下、失礼します・・・」


 彼の手を取り、手の甲にそっと口づけをして生気を分けた。応急処置だが、呼吸はすこし楽になったように見えた。あのワンコを倒したら可能な限り分けねば。


 さて・・・。


「もう・・・いい加減出てきてもいいんじゃないですか?最終決戦です。とどめ、差したいんでしょう?」


 私は虚空に向かいゆっくり問いかけた。時折私を暴走させる張本人わたしに語りかける。

 初めてのナイトメア戦後にどうやら目覚めたらしい。ナイトメアが、とても、とても、とても憎くて、笑っちゃう位この機会を待ち望んでいたひと。


「眠り姫」

 

 仮にそう呼ばせてもらおう。

 目の前がちかちかと青く輝く。胸の鼓動が高鳴り、わたしは恍惚の笑みを浮かべた。

 

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