18 決行(⁠4/4)

 私はリクサを拘束した後、先生の元へと戻った。

 広間の階段を駆け上り、先生たちが戦っている謁見の間に辿り着いた。


 カンカンカンカン・・・


 金属が石の床に転げ落ちる音が響いた。

 先生の剣が払われたと同時に飛ばされてしまった。先生は床に尻餅をついている。しかし、王の手にはまだ剣が有り、先生を狙っている。

 私は王の剣を持つ手に狙いを定め、光の矢を放つ。


 お願い!間に合え!!


 願いが届き、王の剣に矢が命中した。衝撃を受けた王の剣は矢と共に吹き飛ぶ。


 ――――カン!!


 急いで先生の元に駆け寄る。大きな怪我はない様だ。良かった。


「マヤ!」

「さっきはありがとうございました!あいつは捕まえて転がしてあります。後はナイトメアを!!」


 私は荷物の中のポーションを先生に渡し、ナイトメアに向き合う。

 先生がポーションを飲む時間を確保する。


 ナイトメアは飛ばされた剣を見て拾いに行くのを諦めたのか、私が瘴気に弱い事を思い出したのか、魔法での攻撃に切り替えるようだった。手に瘴気を纏っている。


 ナイトメアと対峙すると、この怖い戦いの最中にも関わらず、わたしは気分が高揚していた。目の前が青くちかちかと煌めく。楽しい。


「ふふっ・・・あはははははははは!」


 わたしの口から笑いが零れた。この時をどれだけ待ち焦がれていたか!!

 ナイトメアがわたしに向かい手をかざす。

 笑うわたしを心配に思ったのだろう。先生が不安そうに声をかける。


「マヤ?どうした」

「・・・問題ない。行く。」


 先生を不安にさせないよう笑いかけて、わたしは王に殴り掛かった。

 鍛えていない体の拳なんて、小さなダメージである事も分かっている。

 飛びかかり体を捻って体重を拳に乗せた。回転に任せて翼も打ち込んだ。


「おい、何やっているんだ?マヤ」


 手も羽も両方痛い。しかし、ナイトメアは驚いてくれたようだ・・・そんな顔してくれてうれしい。


 思いっきり奴の腹を蹴り飛ばす。

 先生との戦いで、体にダメージが来ているのか。うまく入って後ろへと尻餅をついた。わたしはすかさず馬乗りになり、顔を殴ろうと拳を上げ、振り下ろ・・・


 違う。これでは王まで死んでしまう。


 私は手を開き王の顔の隣に勢いよく手を置いた。視界から青い光が消えた。痛みを負う覚悟を決め、王に思いっきりチャージする。

 私の生気が苦しいのか目を見開き抵抗するが、力はかなり弱い。ぷはぁっと起き上がり、先生に向かて叫ぶ。


「先生!拘束をお願いします。」

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