17 決行(⁠2/4)


 無事、瘴気の供給源を破壊した。


 二人で顔を見合わせて大きく息を吐く。そして、廊下に出て謁見の間に向かい走り出した。

 謁見の間には明かりが点いているのか、近づくにつれて段々と明るくなってくる。

   

 部屋の前に赤髪の男がひとり、憎らしそうにこちらを睨みながら、ゆっくりと近づいてくる。リクサだ。先ほどの浄化でダメージを受けたのか皮膚が所々爛れている。それを自己修復しているのか、ゆっくりと煙を上げながら皮膚が再生していく。


「お前ら・・・よくも!」


 言葉が終る前に、先生は圧縮した空気の球をリクサに向かって打ち込んだ。

 リクサは謁見の間へと吹き飛んで行った。


 次はリクサとナイトメアを拘束する。

 リクサは生け捕りを目標とする、ただし自分たちの命が危機に晒される場合、生死は問わない。

 2対1の構図で一人ずつ制圧していく。王道ではないが、そんなこと言っていられない。


 私たちはリクサを標的にした。


 謁見の間に入ると中央でリクサが伸びている。

 そして玉座の前に崩れるように王―――ナイトメアが倒れていた。ナイトメアの方が、ダメージが大きかったようだ。まだ意識を取り戻していない。


 今のうちにリクサを捉えようと二人で近づく、

 瞬間、天井から黒い塊が降ってきた。塊は前を歩いていた先生に直撃する。


 魔獣だった。まだ残っていた。魔獣は先生を押し倒し、牙を剥く。先生は押さえつけられて、直ぐには手が出せない。

 私は光の矢を魔獣に向かい放った。それの背中に矢が命中して苦しそうに咆哮を放つ。

 光の槍を縮めて光のナイフをイメージする。それを握り体重を込めて魔獣に突き立でとどめを刺した。


 私が上体を起こしたその瞬間、世界がゆっくりと動いた。

 足を強い力で引っ張られて、バランスを崩して背中から倒れる。倒れながら映像がゆっくと流れる。さっきまで私の頭が有った空間めがけて剣が迷いなく薙いできた。首を狙いに来てる。背筋が凍った。倒れる瞬間受け身を取り頭を打つことは免れた。


 剣の持ち主に向かい先生が圧縮空気の球を叩き込む。それは直撃して後方へ吹き飛ぶ。

 私の足を掴んで倒したのは先生だった。


「大丈夫か?」

「は・・・はい」


 命をガチで取に掛かられて、動揺して脈が速い。震える手で先生の差し出された手を取り起き上がる。震え青くなる私を心配して先生が・・・抱きしめた。もちろん彼の視線は私を見ず背中越しに周囲を警戒している。


「怖い思いをさせて申し訳ない・・・大丈夫だ、深呼吸をしろ。マヤは生きている。無理はするな。危ないと判断したら退け。お前を失う方が怖い。」


私は言われた通り深呼吸をする。酸素が体内を巡りだす。

彼の温もりと鼓動で、私の震えは次第落ち着いてきた。


「先生、ありがとうございます。落ち着きました。・・・大丈夫まだやれます。」


彼からそっと離れて、戦意がまだ有る事を伝える。


「ナイトメアァ!!その男を殺せ!!女は俺がやる!!」


リクサの怒号が飛んだ。ナイトメアと呼ばれた者・・・先ほど剣を私に振るってきた王はむくりと起き上がり、再び剣を構え向かってきた。

2対1の構図が崩れ私たちは次の行動をとるために動くのであった。

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