15 青い煌めき(前編)
夢を見た。この世界に来てからは初めてだと思う。
夢の中の私は体が鉛のように重く、動きそうにもない。
「やっと見つけた。」
声が聞こえる。瞼を開け眼球を動かし周囲を観察する。視界がぼやけて焦点が合わない。
「これで目的が果たせる。どれだけ待ったか・・・」
目の前に誰かいた。私だった。鏡に向かい合わせたように。対峙する。
暗い中、目の前の私の目だけは、青く仄かに光っていた。
目の前の私は笑みを浮かべ言葉を発した。
「来客だ。またのう。」
遠くで男の声が聞こえた。この声は誰だっけ?
―――誰?
私は浮上するように上へと引っ張られた。
浮上して水面から顔が出た。水面にぷかぷかと浮いている。
周囲は白いが、ノイズがかかったように風景が揺らぐ。現実じゃない・・・まだ夢の中だ。
「やっと見つけた。」
ぼんやりとしていた所に、誰かが上から顔を覗きこんできた。
思考が停止していたのもあるが、その顔を思い出すまでに時間がかかった。
金髪に白い角と羽、尻尾を携えた青年。疲労困憊でツッコむ気力すらない。
「リーリのところに居た・・・インキュバス・・・」
「お久しぶり。確かマヤって言ったっけ?あんた、あれだけ瘴気を受けたり生気を流し込んだりでよく無事だったな。しかも絆がめっちゃ絡まってる。ホント何者なんだよ・・・」
呆れた顔で見てくる。あれは私も辛かった。
「何でここに居るの?」
「あんたが引き戻される後をついて行った。速かったから、大変だったよ。」
こいつもナイトメア戦見ていたのか・・・
無言でいると、次々に話しかけてきた。
「まあ、これだけ弱っていれば、あんたの夢の主導権握れるな。」
彼が指を鳴らすと周囲の風景が変わった。
天井は高いのか果てが見えずに暗い周囲が暗くなるが私の周りだけぼんやりと明るい。
水の上ではなくて、布団の上のような、柔らかい感覚に変わった。
「悪く思うな。マスターから指令が出た。アンタの生気を吸い続けろと。今はリーリの体力をまた魔獣で削って、結界を破って攫う算段らしい。マスターの魔力は無尽蔵だ。長期戦になればなるほど有利だ。リーリを捕まえた後アンタを攫うってよ。」
彼は、よいしょと私の上に座って来た。重い。しかし、どちらにしても私の体は相変わらず鉛のように重くて動けない。しかし、よくしゃべる奴だなぁ・・・こいつのマスターとやらは赤髪のリクサか。だから、リーリの睡眠を邪魔していたのか・・・。
―――ひゃっ!
尻尾にぞわぞわとした感覚が走る。驚いて視線を落とすと、奴は私の尻尾をくるくると手で弄んでいた。そして、強気な笑みを浮かべて言い放った。
「ということで、しばらくアンタは俺と一緒に夢の中だ。体力が回復する都度ドレインさせてもらう。」
抵抗する力もないし、相手がすぐにどうこうする訳でも無さそうなので、体力の消費を最小限に抑えて回復に努めることにした。
たぶん抵抗すると吸われる。経口でとか御免だ。
「そう、わかった。」
「ずいぶん素直だな。まあ、その方が手荒な事しなくて済む。」
ニヤニヤしながら私の尻尾を弄ぶ。そして脇腹をぺちんと叩かれた。
お前、後で見てろよ。
ただ本気で疲れた。私は目を瞑って休むことにした。
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