01 わるい夢
私は
今日は待ちに待った金曜日!今週もよく頑張った。仕事で疲れていたけれど、家路をたどる足取りはとても軽い。
いつもは自炊をしているが、今日は自分へのご褒美として、ローストビーフ丼を途中で購入してアパートに帰った。
ささやかな晩餐を愉しみ、お風呂に入りスッキリした私は、お気に入りのモコモコの部屋着を着て、今夜の楽しみに手を伸ばした。
ゲームだ。ポータブルのゲーム機。最近買ったのだ。
私事ですが、半年前に彼氏と別れた。
『運命だ、永遠だ』などと語り合ったのに、『つまらない、刺激が無い』と言われ、振られてしまった。別れた当初はわんわん泣いたが、仕事に没頭し、一か月後には平常心を取り戻した。
恋愛はしばらくいいかな・・・と、心の穴を塞ぐのを諦めた。独りで強く生きてこう!そう思ったのに、私の心の
乙女ゲームだった。
ゲーム内で優しい言葉をかけられ、乾いた心に水が与えられた。心の水は増えて行き、やがて沼になり、
子供の頃は兄につき合わされ、大乱闘するアクションゲームや格闘ゲームでボコボコにされたり、したり。それ以外を知らなかった私には衝撃だった。
明日は休みだから・・・
◇◇◇
結構、章を進められたなぁ。充実している。
同じ体勢が続いたので、私は軽く伸びをして起き上がった。首を左右に傾けほぐしていると、
―――ミシッ!
驚いて身構え、音がした方向を、きょろきょろと見渡す。新しくはないアパートなので地震の時に多少の家鳴りがある。家鳴りの後に揺れが来ることが多い・・・だけど今回は家鳴りだけ。
揺れなくて良かった・・・でも原因が思い浮かばないだけに気味が悪い。この部屋は、二階の角部屋で現在隣は空室だ。
―――カリカリカリカリ・・・
その音は窓から聞こえた。ひゃっ!・・・なに?ネズミ?
窓ガラスを
「嫌だ・・・心霊現象?」
次の瞬間―バツン!!
照明が落ちた。心臓が口から出るんじゃないかと思うぐらい驚いた。
「ひえぇっ!!何! スマホ・・・スマホ!!」
何が起こったのだろう?様子がおかしい。ゲーム画面の光源だけでは
「ひゃっ!・・・いたっ・・・。」
床に向かってうずくまり、哀しい声で
もうヤダ。誰かに優しくされたい。
「大丈夫?」
私の願望が届いたのか、私を心配する声が聞こえた。優しい男性の声だ。
弱っていたところで優しくされて涙が出そうになる。しかし、
―――えっ・・・?声?なんで、助けてくれる人がいるの?家には私しかいないのに。不法侵入者?もしかしたら夢?―――
私は、恐る恐るゆっくりと頭を上げた。声の主を見る為に・・・。
次第に情報が飛び込んで来る。部屋が明るい・・・そして、目の前で男性が心配そうな
年は私より少し上・・・栗毛色の短髪、茶色味を帯びた優しい目、どこかで会った事が有るのか、懐かしい感じがした。柔和な雰囲気で敵意は感じない。
違和感があったのは服装だった。一見よく見るサラリーマンのようだけど、ジャケットの代わりに黒い・・・マント?いや、ローブを
「私の部屋じゃない?・・・ここ・・・どこ?」
思わず言葉が
「ここは・・・悪い夢の中だよ。」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます